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共同親権の話

共同親権をめぐる話を。

法改定により、今の単独親権から共同親権に変えようという動きと、これに反対の声があります。このことについて考察してみます。

夫婦がいて、両者が離婚する。子供は一方の親と暮らす。この際、親権は子供と暮らしている同居親の側にあります。これが単独親権です。これを共同親権に変えようという動きが年来ありました。

共同親権に。つまり、子供の転居や保育園への転園などにも、これまで必要がなかった別居親のハンコがいる、ということです。その理由としては両親が離婚しても、子供の育児には両親が関わったほうがいい、という趣旨なんですが。

一見、もっともらしく思われるのですが、誰がこの共同親権を求めているのはか、といえば、「DVをしてきた男達」なんです。夫からDVに耐え兼ねて、妻が子供を連れて、避難別居、離婚する。それを元夫の側は「実子連れ去り、誘拐だ」と騒ぐ。そして、共同親権を導入しようと、唱えているわけです。

誘拐。妻が子を連れて家を出たら、誘拐と唱える。この時点でこうした夫婦は関係がすでに破綻しているわけです。何を共同するというのか。

この動きを提唱、先導してきたのは保守系の議員、論客の人々です。その後ろには統一教会の姿が見えてきます。離婚を否定している教義を持つ。

共同親権、ありようは「DV推進法案」「離婚禁止法案」「親権強制法案」でしょう。

この共同親権の導入がいかに危ういか。いくつかの事例を挙げてみます。

共同親権運動の旗頭だった元プロ棋士の男がいました。その男からのDVで離婚していた元妻に対して、その男が執拗な誹謗を繰り返したとして、地裁から男を有罪とする判決が出るのですが、それからほどなく、その男は鍬を持って、元妻宅に行き、窓から侵入し、元妻とその父親に危害を加え、逮捕された事件がありました。

大阪、北新地の心療内科の放火事件。その男はDVから離婚、別居していた妻子のもとへ刃物を持って、会いに行き、殺人未遂で懲役4年を受けていました。出所後、男は通院していた心療内科へ放火し、多くの人を巻き添えに自らも火傷を負い、数日後に命を落とします。拡大自殺ですね。

あるいは妻の側の弁護士が夫から暴行を受ける、刺される、そうした事件もあります。多くの弁護士からすれば、受けたくない案件でしょう。

DVから妻子に逃げられた男達が起こす事件。妻の側の弁護士を刺す、元妻を刺す、子供と心中する、元妻の親族にも危害を加える、さらには関係のない人まで巻き添えにした拡大自殺…。

こうした背景を踏まえれば、共同親権の導入など、到底、ありえないことがわかるはずです。そもそも、夫婦の関係が破綻している、支配欲と攻撃性を向けてくる相手と子供のことを話し合うなどできるわけがないのでして。

共同親権を通そうとする動きに対し、最近になって、超党派の議連が結成され、これをけん制しようとしています。

共同親権派の人々は「今になって。これまで何年も議論を進めてきたのに」と、態度を頑なにしていますが、これまで真摯な議論や丁寧な説明がどれだけあったのでしょうか。

夫が妻にDVに及ぶのは、不登校の児童やヒキコモリの子供が親に暴力をふるうのと相似しています。人間、苦しむと自傷か他傷に及ぶわけですが、この場合は他傷、苦しみが攻撃性となって依存する誰かに向かうのです。

苦しみを誰かに向ける。例えば、男がDVで一度、別れた元妻と再婚する、しかし、DVが再発。さらには、娘には虐待をはじめ、その娘が児童相談所を介して、親族のもとに保護されると、娘を連れ戻し、自宅に軟禁し、虐待し、死に至らしめた事件もありました。

ある男が小学生の児童の列に切りかかり、自刃する。男が小学校に車で侵入し、児童らを次々にはねていく。男が交番に行き、警官を刺し、けん銃を奪い、地域を徘徊する。男が交番に行き、警官を刺し、奪ったけん銃を持って、最寄の小学校に行き、校内で発砲する。そして、男が元妻に刃物を持って、会いに行き、殺人未遂で逮捕される。

これらはいずれも、精神障害事案でもあります。こうした男達は何かに苦しんできた。おそらく、幼少からの親子の関係でしょう。愛されてこなかった、虐げられてきた。そして、その苦しみは誰かに暴力となって向かう。

共同親権を推進する側、保守系の論客の人々の解説によると、悪徳弁護士が妻たる女性に離婚をそそのかし、子連れで離婚させ、元夫から養育費の一部を子供が成人するまで、女性から領収していく、そうしたスキームがある、すなわち、家庭を壊すことも顧みず、利権を獲得しているのだと。

しかし、その理解はおよそ実態からかけ離れています。現行では元夫から養育費の不払いもありますし、元夫に支払いを強制する仕組みもありませんし、どころか妻の側の弁護士が夫から暴行を受けることもあるのに。また、そもそも離婚事件で妻側の弁護士が夫側から養育費の一部を受け取り続ける、そうした仕組み自体、ないでしょう。

「ある日、子供が連れ去られた」「弁護士が妻に離婚をそそのかした」そうした悪意と曲解のもと、多くの混乱と危険を増やしかねない法案が通ろうとしています。

現行では家庭裁判所も人手が足らないのに、こうした法案が通れば、さらに家裁の負担が増えるばかりです。そうなれば、結局、主張の強い側の意見が通りやすくなり、結果、女性や子供の安全をいよいよ脅かすばかりです。

共同親権法案を国会で可決させてはなりません。

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