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法制審議会家族法制部会第33回会議議事録読む5~棚村委員・原田委員・柿本委員・武田委員

共同親権は揺らがないけど、日本のリテラシーに危機意識

もう現場は変わり始めているけど

 

議事録を読んでいく

 ほかにはいかがでしょうか。

続きから

○棚村委員

 早稲田大学の棚村です。第4の1のところについても基本的には御提案について賛成です。これは前にも申し上げましたけれども、別居中というのですか、婚姻が継続している御夫婦についての親子交流の問題というのもたくさん紛争として出ていますので、何らかのきちんとした規律が必要だと思っています。
 それから、2番目のところは試行的な親子交流の実施ということなのですが、これも今の家庭裁判所でも試行的な親子交流が事実上行われていて、親子関係の質というか、これまでの親子関係の内容とか、そういうようなものをできるだけ早い形で確認をしながら、親子交流が可能かどうか、あるいはどんな内容の交流がこどもの利益の観点から必要かどうかというのを見立てたり、今後につなげるような意味でも、是非規定が必要ではないかと思います。
 試行的実施の要件で、戒能委員は調査官の立会いが必要だとか、実施する場合の、心身の状況に照らして相当でないという事情がある場合とか、調査のため必要があるとか、そういう形で要件ぶりの表現についてはいろいろあろうかと思いますので、それについては適切な表現なり要件というものを検討するということは意味があると思います。
 ただ、基本的には早期にこういう試行的な親子交流というものを実施することで、ある意味では共同親権とか共同監護という話もそうなのですけれども、そういうことに行けるような親子としての関係性とか、親子としてのつながりみたいなものを本当に持っているか、あるいは持てるだろうかというようなことの試金石にもなるので、是非この試行的な親子交流に関する規律はとても重要であると考えます。また、家裁の調停委員を私がやっているという長年の経験からみても、試行的面会交流の実施によってかなり親子関係のこれまでの中身や関わり方、それから今後の親子関係の発展あるいは可能性みたいなものをかなり垣間見ることができるもので、とても有用です。しかも、戒能委員もおっしゃっていましたけれども、DVや虐待、暴力があると主張される場合に、加害者側と被害を受けているほうとの認識のギャップ、感じ方、受け止め方の隔たりというのがすごく大きかったりします。さらに、こどもがどういうふうに父母の対立や葛藤に巻き込まれているかということも、この試行的な親子交流の実施を通して、かなり冷静に調停委員とか、あるいは調査官とか、弁護士さんや父母それぞれにとっても見つめなおしたり、客観的に冷静に把握できたり、そういうような場面を重ねることによって、今後どうしたらよいかがはっきりと見えてくる場合があるのです。つまり、親の方には見えていない親子の交流や関係性みたいなものが見えてきて、なにが障害になって阻害しているのかを確認する機会にもなります。ですから、親子交流についても是非規定を置いて、早い段階で家庭裁判所が間に入って、こういうような親子交流の可能性とか、今後を占うような意味での関わり方、関与を是非認めていただきたいと思います。
 それから、3番目の親以外の第三者との交流の問題です。これは監護者指定とかそういうことも関わってくるわけですけれども、基本的に監護者指定というのは、一時的というよりは、かなりお子さんと継続的日常的にまとまった生活を共にして、かなり重要な働きとか責任を負っていくということになります。ただ、親子交流は少しだけ会うとか一定期間会うということで軽いのだということですと、誤解を招くと思いますので、そうではなくて、この交流も親に代わるぐらいの大切な役割をいろいろ果たしたり、あるいは親との交流にプラスアルファをするようなこどもとの充実した楽しい、あるいはこどもにとって有意義な時間を過ごさせるという意味では、この第三者との交流についての規律も一定程度設けるということには賛成です。
 ただ、(注)でもいわれているように、親が子育てをしたりこどもに対して責任を負っているのだけれども、どういう要件とかどういう事情があれば、それに代わる、あるいはそれをサポートするための第三者、第三者とはいっても、これについては親族に余り限定をしないで、もちろん親族が一番多いと思うのですが、里親さんとして関わるとか、いろいろな形で事実上の養親のような形で関わるとか、いろいろな立場の方がいらっしゃいますので、引き続きこの範囲の問題とか、それから、一定の要件の中で補充性とか特別の利益、特別の必要性、こどもとの実質的な関係とか、その辺りのところは是非検討を続けていただきたいと思います。
 いずれにしても、1についても2についても3についても、第4の親子交流に関する規律の提案については基本的に賛成ということです。ただ、戒能委員からもいろいろ出ていましたけれども、表現ぶりとか要件を、要するに、そういう規律なり可能性を認めるということについては賛成をするものの、ただ、細かい要件とか、どういう事情の下でということについての表現については更に検討するということで、賛成したいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、第4の基本的な方向には賛成であると、ただ、細部の要件については検討が必要だろうという御意見を頂戴しました。その際に戒能委員の先ほどの御指摘の点についての言及もありました。最後の3の親以外の第三者との交流については、要件について検討が必要だという御意見でしたが、(注1)は一定の範囲の親族に限るという考え方でどうかという形で出していますけれども、親族に限らない方がよいのではないかといった御意見を頂戴したかというふうに受け止めます。
 ほかにまだありますか。では、原田委員の御意見を伺ってから休憩したいと思います。

親子を試すなんてね
こういうところが政策的共同親権にすぎないのではないかという不安

○原田委員

 委員の原田です。親子交流のところです。今、棚村委員の方からおっしゃった早期に実現するという趣旨は、制度としてやりやすくするから、結果として早期になるかもしれないけれども、当初の提案であった早期にというところは消えて、早期にするということを主要な目的にするということではないと理解をしているのです。その範囲で、現状でも試行的な面会交流は行われているので、現在との違いで考えると、調査官の立会いなしとか、第三者が立ち会ったり、立ち会ったりしなかったりとか、(2)のところが現状と異なってくるというところではないかと私は理解しているのですが。
 そうすると問題は、事実の調査のために必要があると認めるときという条件があったときに、先ほど棚村委員が言われた、親には見えていないような親子関係が分かることがあるとかいうようなことであると、やはり調査官が見ないと、そこに立ち会った親や、この第三者をどの程度の方に見るのかという問題はありますが、その報告だけで分かるのだろうかという疑問があります。ですから、この趣旨をどう考えるかということにもよりますが、私も家庭裁判所の調査官は立ち会った方がいいのではないかという意見です。
 それから、(注2)のところに細矢委員の発言が引用されていますが、やはりこどもさんの意見、意思というものを確認するような規定を手続法上は入れた方がいいのではないかと思います。
 それから、第三者の交流についてですけれども、認めた方がいい場合が一切ないとは言わないのですけれども、監護教育に何ら責任を負わない第三者に対して、養育している親の反対を押し切ってまで認める必要があるのかという点は若干疑問で、消極的に考えています。これは濫用のおそれというのをこの中にも丁寧に書いていただいていますが、それも懸念します。当事者同士で決めるということには何も問題もないのですけれども、それを裁判所まで持って行くことができるようにするかという点については、慎重に考えてもいいのではないかと思います。
 また、これはもう一つ、少し弁護士会の中で議論したときに出たものですが、どちらの親の下でも養育されている場合、要するに2人の親から養育されているのだけれども、例えば小さいときにおじいちゃん、おばあちゃんに預けたことがあるとか、あるいは離婚したりしている場合の共同親権の場合で、別居している親ではなくて、また別の第三者の場合は、共同親権の両方の親を相手にしないといけないのかというような、手続が非常に複雑になるのではないかという懸念もあって、積極的に考える必要はないのではないかというような意見も出たことは紹介したいと思います。私としては消極的な意見です。もし認めるとすれば、かなり限定的な制限を付けるべきだと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、先ほど戒能委員もおっしゃった、調査官立会いの方がよいのではないかという御指摘と、それから、こどもの意思については、これは手続の中で対応する必要があるという御意見だったかと思います。3については慎重論、あるいは消極論の側からの御指摘というのを頂いたと理解を致しました。
 まだ第4について、御発言はあろうかと思いますけれども、少し休憩をして、引き続き伺いたいと思います。15時11分ですので、約10分休憩して、15時20分に再開したいと思います。休憩いたします。
 
          (休     憩)
 
○大村部会長 それでは、再開したいと思います。
 休憩の前、第4の親子交流に関する規律について御意見を頂いておりましたけれども、引き続きこの点につきまして、御意見があれば頂戴したいと思います。

弁護士の意見、冷たすぎ

○柿本委員

 柿本でございます。よろしくお願いいたします。2の試行的実施のところでございます。子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がない場合の判断にばらつきが生じないことが非常に重要だと考えます。私のところにいろいろ頂いている意見などでは、評価能力の限界ですとか、ばらつきがあるという意見を多方面から頂いています。
 (2)でございますが、家庭裁判所の調査官の立会いは必要と考えます。
○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは2について2点、御意見を頂きました。(1)の要件の部分について、判断がばらつかないような配慮をしていただきたいという御要望と、(2)の調査官の立会いについて、やはり必要なのではないかという御意見を頂戴いたしました。
 オンラインで武田委員、フロアで赤石委員ということで、武田委員、赤石委員の御意見を頂戴いたします。

簡単だな~理由はよくわからない

○武田委員

 親子ネット、武田でございます。親子交流に関して意見を申し述べさせていただければと思います。第4の1、第4の2、たたき台(1)から(3)は、基本的には第4の2に第三者交流、ここが追加されたものと理解しております。第4の2(4)の(注)の夫婦関係調整調停も含めるということに関して、ここは個人的には賛同する部分ですので、第4の1、2、ともにゴシック表記に関しては賛同するものでございます。
 次に、たたき台に追加された第4の3、第三者と子との交流に関してでございます。ゴシック本文に関しては、同様に賛同する方向です。ゴシックの(注1)に範囲に関して言及がありますけれども、この部分をもう少し広げた方がよいのか、もっと絞った方がよいのかというところは、現時点では決め切れておりません。もう少し他国の事情なんかも確認しまして、判断したいと思っています。
 第三者の交流に関して、今回、第三者だけを切り出してという形ではなく、基本的な申立権者は父母なのですよということを明示すること、ここに私は意義があるなということを改めて感じました。弊会の会員さんから寄せられる第三者関連の交流で最も多い声は、祖父若しくは祖母が亡くなる前に一度だけ会わせたい、もういよいよ亡くなるタイミングが来たので、お見舞いだけ何とか行かせたいという声が実は一番多いものでございます。これは私の感覚論で申し訳ないのですが、親子の交流が一定できているケースでも、おじいちゃん、おばあちゃんに会わせたいという申出は恐らく9割以上拒絶されていると思います。おじいちゃん、おばあちゃんはその後、亡くなります。その後、こどもたちがおじいちゃん、おばあちゃんの葬儀に参列することも叶いません。主観で申し訳ないですけれども、身近な近親の死を看取ることというのは、私はこどもにとっては極めて大切な経験ではないかと思っております。
 私事で恐縮なのですけれども、実は先月、私の父が末期癌と診断されまして、緩和治療に入りました。うちのこどもたちはもう2人とも成人しましたけれども、この話をしたところ、何とか会話できる、話せる間に会いに行くと言ってくれています。父はもう余命数か月です。そんな中でも父は、あの子が来るまで頑張ろうかと母に話しているそうです。こどもたちの成長のため、頻度も違うと思いますし、御指摘のように濫用があってはいけないとも思うのですけれども、是非この法制審で実現していただきたい、実現する方向で議論を進めていただきたい、このように考えております。
 先ほどと同様、親子交流に関して最後1点だけ、部会資料32に記載されていないことに関して意見を述べさせていただければと思います。実は第31回会議でも少し、きちんと話そうと思ったのですが、時間の関係で説明できなかった部分でございます。
 先ほど、この要綱案が発表されてから会内で意見交換の場をずっと持ってきましたというお話を差し上げましたけれども、意見がやはり多いのが、養育費には先取特権や法定養育費、具体的な実効性のある案が出てきている一方、親子交流に関しては実質的には試行的交流のみで、不公平だという意見がやはり多く上がってきております。私が当事者の皆さんに申し上げているのは、不公平だから養育費に対する取組に反対するというのではなく、我々は約9割が養育費を払っていますので、そこはそことして、きちんと親子交流の実効性が確保されるような意見を求めましょうということを会員さんに話しております。
 その中で最も重視すべきだと思いますのは、せめてということでございます、中間試案でありました試案第5の3(2)、成立した調停又は審判の実現に関する手続でございます。三巡目の議論では議題に上がりませんでした。現時点で要綱案からも消えております。こういった類いの事案、調停が成立、又は審判が出ているわけですから、家庭裁判所の手続を通じて当該親子の交流は子の利益に資するものと判断されている事案が、実行されないことに対して何らか手を打てないかということでございます。
 これは過去、資料も出しましたけれども、合意した調停や審判があるにもかかわらず親子交流が全くできていないとの回答が日弁連調査で44%、これは第5回で出した資料でございます。昨年7月、弊会で母数500名程度のアンケートを実施しました。全く実施されないが54%、取決め以下の実施が23%、両者を合算すると77%の回答者が、取決めどおりに履行されていない、これは第18回会議で出したアンケートのとおりでございます。
 現行制度で履行勧告、間接強制があることは承知しております。しかしながら、決定した半数が履行がなされないという事実に鑑みますと、他の対策が必要なことは、明らかだと思います。余りこういう言い方はしたくないのですけれども、結果的に見ると、こどもから親を奪うことを司法が黙認していると言わざるを得ないのではないか、これはそもそも児童の権利条約第9条に明確に違反しているのではないか、国内のこどもと離れて暮らす親に限らず昨今外国人の別居親からも強い批判を受けています。共同親権を入れることで一定の前進にはなると思いますが、結果的には共同親権になっても、その上で親子交流、監護の分掌でもいいです、それが認められても、それでも会えない、こういうことになる事案がまだまだ残るのではないかと懸念しております。
 今年6月、両親の離婚を経験したお子さんの立場の方々を数名呼びまして、そこでもお話を聞きました。やはりお子さんの立場の当事者からは、こどもは親の所有物ではない、こどもから親を奪わないでくださいという強いメッセージを頂きました。同様の、民事事件で判決が確定しても損害賠償金の回収ができない、これは往々にしてある話かと思いますし、実際に私も回収できたことはありません。しかしながら、子の利益に資すると判断された親子交流の司法判断、この種の係争とは異なると思います。子の利益のために実効性が求められるものではないかと思います。
 今回のたたき台において、養育費も情報開示において一定の過料の制裁をすることもあり得るという案も出ておりますけれども、同様に親子交流の不履行に関して一定の過料などの罰則を設ける方法はあり得ると思いますし、これも今、検討の土俵から消えております家庭裁判所が定める考慮要素、こういったものの中で、調停や審判で決定した親子交流に関して正当な理由なく実施を拒むこと、例えば、こういった要件を親権者の考慮要素に入れるなどすることによって一定の抑止が図れるのではないかと、このように思っております。
 是非この、一旦現時点でテーブルに上がっていない、成立した調停及び審判の実現に関する手続、ここに関して議論のテーブルに載せていただきたいということを最後に述べさせていただいて、親子交流に関する意見を終わりにさせていただきます。以上です。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございました。武田委員からは、第4の2と3について御意見を頂き、そして、ゴシックの記載の外の問題についての御意見も頂戴いたしました。2と3については、ゴシック本文部分については基本的には賛成だという御意見だと承りましたが、(注1)の範囲の問題については更に考えたいといったことをおっしゃっていたかと思います。それとの関係で、亡くなる前の祖父母に是非会わせたいとおっしゃったのですけれども、これは規定、ゴシックの部分を何か書き換えたいという話になるのでしょうか。
○武田委員 ゴシックを変更してくれという意味ではありません。
○大村部会長 そういう要望があると、そういうような場面というのを念頭に置いてほしいというふうな御要望だと承ればよろしいでしょうか。
○武田委員 はい、そのような場面を念頭に置いて、この第三者との交流、ここを規律化する方向で検討を進めていただきたいという一つの理由でございます。
○大村部会長 分かりました。それから、ゴシックの外の問題として、調停審判の実現について、何かそれを促すようなことを考えてほしいということで、制裁の問題ですとか、あるいは親権者変更の申立ての要件に反映させるといったことをお挙げになりましたけれども、これもここのゴシックとは別に、今のような場面で考えてほしいという御要望として承るということでよろしいですか。
○武田委員 いや、最後に申し述べた、調停審判で定められた親子交流に関しては、議論に上げていただいた上でゴシック載せていただけないかという要望になります。
○大村部会長 分かりましたけれども、ここの場面ではなくて、武田委員が挙げられたような幾つかの制度との関係で位置づけて議論してほしいという要望だったということでいいですね。
○武田委員 はい、御認識のとおりで結構です。
○大村部会長 分かりました。ありがとうございます。

さすが!「面会交流」にはこだわらないと!!

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