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ある芸能帝国の瓦解

YOUやっちゃいなよ
多くの男性アイドルを擁立し、テレビ番組からCMに至るまで、数々のメディアを席捲してきた大手芸能事務所「ジャニーズ事務所」。今年、3月に英国BBCによるジャニーズ事務所における性加害の報道がなされ、以来、次々と醜聞が明らかにされています。

最近、読んだ、元メンバーのあるインタビュー記事によると、その男性は12,13歳の時に創業者ジャニー氏から性被害を10回以上受けたと。その時の性被害の傷により、後になってからの後遺症、例えば、医療機関での診察の際、男性医師の前でフラッシュバックから気絶したこともあると語っていました。

その男性は事務所を辞めた後になって、何年か経ってから、性被害のことを事務所に申し入れるのですが、社員からは「頭がおかしいんじゃないの」などと相手にされなかったとか。

これまで、メディアから幾度となく、性被害を報じられながら、「帝国」と呼ばれた芸能事務所は、巨大な既得権益に守られ、創業者はほぼ社会的追及もないまま天寿を全うされました。

過去にもジャニーズについての不祥事は取りざたされてきました。例えば、1999年に文春がジャニーズの件を14回に渡り、連載し、後に訴訟に発展したこともありましたが、時間の経過とともに湖面の波紋が消えていくように、世間から忘却されていきました。

しかし、BBCの番組を発端とした今般の一連の報道はやむ気配はなく、これまで創業者たる叔父とその姉で2代目社長たる母や古参の幹部達に守られてきたジュリー社長(現在は辞任)はスポンサーたる企業が離れていく動きもあり、ついに会見に臨みました。

創業者もその姉メリー氏も(いずれも故人)メディアへの出演はずっと避けてきたのですが、ジュリー氏は創業一族として初めて、公の場で自らの言葉で語ることになりました。

ジュリー氏と共に9月の会見の場に臨んだのはベテランのメンバー2人と弁護士。ジュリー氏は性被害については「噂程度には知っていた」とはぐらかし回答。そして、ジュリー氏は耐え難かったのか会見を途中退席します。10月に行われた2回目の会見にはジュリー氏は出席せずじまいでした。

YOUは何しに
3月にBBCの報道によって始まった一連の追及はいわば外圧です。これに新たな外圧が現れます。7月、国連人権委員会の「ビジネスと人権作業部会」が日本を訪れ、被害者への聞き取り調査を実施、8月に日本記者クラブで会見開き「深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と表明しています。

こうした社会的圧力もあり、社長だったジュリー氏は最初の会見の直前、社長を辞任しています。同社の株式を100%所有しているのでオーナーであることに変わりはないのですが。

実態を最もよく知っているはずの古参幹部達が表に出ず、同事務所の所属タレントだった東山紀之氏を社長に就任させ、会見の前面に出すあたり事務所側の対応がいかにも不誠実であるとの見方もありますが、一方で、被害を告発した元メンバー達でつくる被害者の会の人々にも熱心なファンからの誹謗が相次いでいるそうです。

被害者が声をあげれば、必ず、こうした反応は生起します。被害者が実名で顔を出して、被害を訴えることの難しさといえるでしょう。

ジャニーズでの被害の報道は今も各メディアで続いており、これからも元メンバーによる告発記事が現れるでしょう。ジャニーズのブランドは失墜し、企業も離れていく、すると、その間隙を埋めるべく、他の芸能事務所が果敢に営業をテレビ局にかけ、権益の獲得に動いているとかなんとか。

他の事務所のタレントを起用しないよう圧力をかけてきたとされるジャニーズですが、男性アイドルという市場を開拓してきた一面があります。その会員数は1300万人以上とされ、今後、その巨大市場を他の事務所が切り取りにかかるのでしょう。

YOUはSHOCK
ジャニーズの件は性被害を訴えることの難しさを思わずにはいられません。学校での教員から生徒への性被害も多くの場合、被害生徒やその家族は沈黙を強いられるものです。

仮に後年、元生徒が声を挙げても、教育委員会や加害教員は被害者を敵視するかのような不誠実な態度をとりがちです。まして、相手が大企業であれば警察や弁護士、メディアを介しても解決は困難だったでしょう。

今般の一連の報道で見えてきたことの1つとして、被害者の少なくない人々が10代前半の時の被害を「親にもずっと言えなかった」ということで、これはイジメや性暴力の被害者でも共通した傾向でしょう。

ジャニーズの事案について、問題を整理すると、被害者は未成年(とくに10代前半)であったこと、男から男への性被害であること(被害に遭った少年達のほとんどは異性愛者だったでしょう)また、組織内での権力の勾配があったという点、すなわち、大人から子供、社長からタレントへの被害であると、また、性被害を受けた人々でも一部の順応した、かつ幸運な人はメディアへの出演、金銭的な多額の見返りがあった、ということです。

心に傷を負った人々のほとんどは長年、沈黙し、親にも言えず、仮に声を挙げても、大企業相手ですから、司法もメディアも大手の芸能事務所に忖度し、対応や批判を控えてしまうため、あらゆる対抗手段が封じられていたわけです。

それが創業者とその姉が亡くなってから、ようやく、海外メディアや国際機関の外圧もあって、被害者の声が公になってきました。(その反動として、ファンから声をあげた被害者への数万件とされる誹謗もあるのですが)

ジュリー氏は2度目の会見のなかで、自身の過去に触れています。意訳すると、「母に意見しようものなら、怒り、叩き潰すような人で(中略)母のヒスのせいで、私は20代から過呼吸で時々、倒れるようになり(中略)母や叔父とは接点を極力、薄くし、半ば独自に活動をしてきました(だから性被害のことはよくわからなかった)」

ただ、ジャニーズをめぐる記事を検索していくと、往時を知る人によれば、ジュリー氏は叔父や母の権勢をかさに着て、少女漫画の悪役令嬢さながらのワガママ姫ぶりであったといい、今の彼女の被害者しぐさを白々しくみているようです。

ジュリー氏の半生の栄華はひとえに、多くの青少年の性被害と、熱心なファンの女性達からの収奪(ファンとして推し活のため、風俗で働く)から成り立っていたわけです。

帝国を興した叔父と母の亡き今、傾国の姫は帝国の存亡の時にあって、さぞかし、ご心痛あそばされておられるのでしょう。

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