思い出の品とさようなら
数年前に遡る。まだ、母が生きていた頃のことである。母は、一人暮らしだったが、年をとると共に一人での生活ができなくなりつつあった。そんな折、自宅で転んで立つことができなくなり、入院することになってしまった。そうしているうちに入院も長くなり、住んでいた市営住宅を引き払うことを母は決断した。ある時、私を呼び出して部屋を引き払う処理をしてほしいと頼まれた。その時は、「もう、戻ることは叶わないから、全て処分していいよ」と母は全てを悟ったかのように私に言ったことを今でも覚えている。それ