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正しい人の道は、夜明けの光のようだ

あまりにも苦しく、何度も本を閉じながら、それでも決してその物語を手放すまいとすがりつくようにして読んだ西加奈子さんの『夜が明ける』。

高校生の「俺」は身長191センチのアキと出会う。普通の家 庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、共有できる ことなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。

大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、彼らは少しずつ、心も身体 も、壊していく。

思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描いた作品。

「苦しいときは助けを求めろ」それができない、させてくれない日本という国は、何と無慈悲なのだろう。

世の中には、努力だけではどうしようもないことがたくさんある。
家庭環境であったり、性別であったり、外見であったり、ちょっとしたきっかけで転落してしまう。

貧困や虐待、過重労働、多くのハラスメントは、顕在化しづらいが、どこにでも存在する。

わたしたちは何ために生き、何のために存在するのか。
一体誰と、何と闘っているのか。

現代社会を生きる若者の苦悩を世の中に見事に突きつけた傑作小説だった。

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