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「わたしにも関係がある!」~女性差別撤廃条約を学ぼう~

2024年7月21日(日)上田市市民プラザゆう にて、女性差別撤廃条約実現アクション上田ともし火主催、暮らすroom’s共催「わたしにも関係がある!」~女性差別撤廃条約を学ぼう~が開かれました。 

信濃毎日新聞の告知記事を見て来てくれた方なども含め、日曜日の午後の時間にも関わらず、会場は満杯のおよそ20名。
「女性差別撤廃条約の実現」というテーマでしたが、 成人女性だけではなく、男性や小学生の姿も見られ、市民の関心が高いことを感じました。 


ジェンダー問題は身近なところにある

まず始めにジェンダーに関するクイズを、会場のみんなで考えました。 
1問目「女の子の好きな色はピンク。 男の子の好きな色はブルーと決まっている」
はい・いいえで答えてください。 と伝えたところ、会場の答えは、 全員が「いいえ」に。
なぜ「いいえ」に手をあげたか理由を会場へ尋ねてみると、
「例えばランドセルの売り場で、現在は色々なカラーが並んでいる。昔は女の子だから赤だったり、男の子だったら黒を選ばなきゃいけなかった。でも今はそんなことは減ってきている」
との答えが。

続いてのクイズは、「女性も総理大臣になれる?」
これもはい・いいえで挙手をしてもらいました。 会場の意見は「はい、なれる」の回答が多く見られました。
 理由を尋ねたところ、「日本はまだ女性総理がいないけれど、諸外国ではなれている例もある。ただ総理大臣になるまでの道のりは厳しい。 女性の総理大臣がなんで今まで誕生していないか考える必要がある」
などの意見が出ました。 

その後4〜6人ほどのグループに分かれ、「 女性(女の子)だからこれをしなさい。男性(男の子)だからこうしなさい、と言われて変だな・ モヤモヤするなと感じたこと」について、体験や聞いたことがある話をシェアしました。 
3分間で各自の体験を振り返りながら付箋に書きだし、それを元にグループ内で10分間ディスカッションを行いました。
初対面同士の参加者が多い中、各自が今までに感じたモヤモヤや体験をシェアする中で、どのテーブルも大変盛り上がり、参加者同士の活発な意見交流がありました。 
ディスカッションの中で、「それは私も体験したことがある」と付箋に追加意見を書いたり、ディスカッションの後も「そういえばこんなこともあった」と他の参加者がお話するのを聞いて思い出したのか、体験を書く手が止まらない方も見受けられました。

グループ内ディスカッションの後、どんな体験がグループで出たか、会場全体で共有しました。会場前方に貼られた「モヤモヤの木」の版画に皆さんが書いた付箋を木の葉っぱに見立てて貼り付けていったところ、幹だけの状態から付箋の葉っぱがたくさん貼られた、「満開のモヤモヤの木」 が誕生しました。
それだけ皆さんの日常生活で、ジェンダーに関してモヤモヤすることや変だなと思ったことが多いことが可視化され、そのような体験が誰にでもあることが見て取れるようになりました。 

満開のモヤモヤの木


染みついている役割意識

会場意見の中で特に印象的だったものを、いくつか紹介します。
「地域のお祭りで、男性は力仕事・ 女性は台所仕事に自然と分かれていくのが見られた。男性が台所に入りづらい・女性が力仕事を手伝いづらいといった雰囲気を感じた。時代はジェンダー平等となっていても、なかなか染みついた男女の役割意識のようなものは残っていることが分かった。」
昔に比べて、「男女の役割意識」が薄れたといわれている現在でも、まだまだ身近な所でも残っている事を気づかせてくれる体験だと思います。

また、「女性だから重いものを運ばなくていいよ。女性は子供を産むから体を大切にして、重いものを運ばなくていい。 」
という言葉を聞いてモヤモヤを感じたことのある方もいました。
ここでは、女性は子供を生むものだと想定されており、「女性自身の意思を無視して、可能性を奪っている構図がある」というコメントがありました。善意に聞こえる言葉も女性自身の意思を無視されたと感じる体験は、ひょっとしたらピンと来る方も多いのではないでしょうか。

 経済活動の面では、 事業を起こす時に金融機関の窓口で、
「旦那さんはどうなんですか?」
と聞かれた経験がある人もいました。事業主が女性であることを、あまり想定していない言葉だったということです。
世界経済フォーラムが発表するジェンターギャップ指数で、日本は経済分野で146ケ国中120位(2024年)と世界に比較して改善の余地がまだまだあることと繋がることだと思います。


「性別で役割や生き方を決めつけられない、とは?」考えてみることから始めよう

次に、大いに盛り上がったシェアで出た体験や経験が、国連・女性差別撤廃条約に関係することをセダウミニブックを使いながらみんなで確認しました。
セダウミニブックとは、『子どもたちが自分らしさを活かして、イキイキと生きることを応援するミニブック。みんなの権利を守る女性差別撤廃条約について、クイズなどでわかりやすく伝えています。』企画・制作・発行の NPO法人Nプロジェクトひと・みち・まちHPより抜粋しました。
例えば、お祭りのような地域の活動の中で女性と男性の役割が決められてしまうのが、条約の第5条 性別役割分担の否定や、第7条 政治的・公的活動における平等、第14条 農村漁村女子の差別撤廃、などに関係するのではないかというような具合です。 
女性差別と聞くと「今の時代に女性差別⁉」と感じる方もひょっとしたら、いるかもしれません。
今回のイベントでは、女性差別撤廃条約が目指すものが「女の子(女性)も、男の子(男性)も、いきいきと自分らしく力を発揮できるよう、性別で役割や生き方を決めつけられない実質的な平等社会をつくるもの」ということを確認できたのではないでしょうか。


「女性差別撤廃条約」「選択議定書」に取り組み始めたきっかけ

間に設けた質問コーナーでは、「どういったきっかけで普通の市民であるともし火のメンバーが、国連の女性差別撤廃条約・選択議定書に取り組み始めたのでしょうか?」という質問が出ました。
女性差別撤廃条約実現アクション上田ともし火の呼びかけ人である礒野さんから、
「就職してから、ジェンダー課題は自分事だと気づきました。ニュースやSNSで、ジェンダーに関する情報に触れる度、モヤモヤが募っていきましたが、具体的なアクションには繋がりませんでした。そんな中、幅広いジェンダー課題にアプローチできるのが、条約と選択議定書ということを知り、また当時長野県で選択議定書のアクションをしている動きが見えなかったので、市民運動の経験は無かったのですが、取り組み始めました」
とお答えいただきました。


「女性差別撤廃条約」「選択議定書」の実効性を高めるためには

その後「女性差別撤廃条約」「選択議定書」について、その必要性を確認しました。 
条約と選択議定書は車輪の両輪のようなもので、 条約そのものが自転車の前輪だとすると、選択議定書は自転車の後輪ということになります。
しかし、日本は条約には批准(国内で法的拘束力を持つようになること )していますが、選択議定書を批准していないため、自転車の前輪しか無い状態で、条約の実効性が低く、スムーズにジェンダー平等へと向かっていけない現状なのだそうです。

条約と選択議定書は両輪(OP-CEDAWアクションリーフレットより抜粋)

では選択議定書に批准するとどうなるのか。
選択議定書に批准すると、「個人通報制度」と「調査制度」がつかえるようになります。
個人通報制度は、最高裁まで争った権利侵害案件について、国連・女性差別撤廃委員会に通報できる制度です。(国連からの勧告には法的拘束力はありません、あくまで条約に参加している国の努力が問われます)
この制度によって、裁判所が女性差別撤廃条約を裁判に適応する可能性が生まれ、ジェンダー平等と女性の権利が国際基準になると言われています。
例えば、男女賃金裁判や選択的夫婦別姓、婚外子を差別する戸籍記載といった件は個人通報制度が使えますし、原告がぜひ使いたいと発言しています。

ところが選択議定書については、1999年に国連で採択された時から、なかなか日本は批准に向けて踏み出していません。 
これについて、会場から
「なぜ日本政府は20年以上も批准しないのか?国内司法とバッティングしたりといった可能性はあるのか? 」
という質問がありました。
特に法的なハードルが無いながらも、恐らく国会に女性議員が少なく批准が進まない事や、国会に提出された請願の引用から、司法はハードルにならない事といったハイレベルな議論が繰り広げられました。

私たちのイベントに参加してくださった地方議員の方から、2024年6月の長野県議会で「女子差別撤廃条約選択議定書の批准に向けた速やかな検討を求める意見書」が採択されていた事が共有され、長野県内でも選択議定書の批准に向けた動きがあることを学びました。
ちなみに今年6月議会では県内21の市町村議会と県議会で、選択議定書の批准についての意見書が採択されています。


女性差別撤廃条約 選択議定書批准に向けて

締めくくりに、主催のともし火メンバーが上田で取り組んできたことを発表しました。
昨年の初夏から地道に市民の間で勉強会を重ね、今回ともし火主催の勉強会は8回目になることや、今年3月の国際女性デーで多くのみなさんと性別による役割分担へのモヤモヤがまだ残っていることが確認されたことなど、今までのともし火の活動の報告がされました。
加えて、発足から一緒に活動してきた齊藤加代美上田市議会議員からも自身の体験と、個人として条約と選択議定書に取り組むことの意義などをお話いただきました。
今回、会場には教材のセダウミニブック編集に関わった方も来場され、草の根の繋がりを感じられた会となり、さらには、この勉強会を弾みに、女性差別撤廃条約選択議定書批准の取り組みが大きな輪になっていくことを期待しています。

◆引用
・セダウミニブック(企画・制作・発行 NPO法人「Nプロジェクトひと・みち・まち」)
https://note.com/npro/n/n8efcc68ae3bd?magazine_key=m3feb91980cf3

・”批准”しないとはじまらない‼ リーフレット(女性差別撤廃条約実現アクション)
第165回国会 参議院女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准に関する請願

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