女性の働き方・健康・暮らし「みんなで一緒に考える3DAYS」②-5/25(土)「長野県の女性の働き方と健康」
こんにちは!暮らすroom’sです。
「女性の働き方・健康・暮らし」をテーマにしたイベント「みんなで一緒に考える3DAYS」(5月24日(金)〜26日(日))
「DAOマルシェ」で開催されたセミナーの中から、今回は5月25日(土)に行われた「長野県の女性の働き方と健康」を、レポート②としてご紹介します!
暮らすroom’sの構成団体である、株式会社エルズグランドケアアカデミーの成澤由美子から「長野県女性1,000人アンケート」をもとにお話しました。
1,000人アンケート結果はこちら。
なお、このイベントは、DAO型(※1)の考えを取り入れ、公正な意思決定を行うための投票制度、紹介制度、店番制度、公平な報酬分配など、透明性の高い運営を行うなど、新しい取り組みにもチャレンジしています。
暮らすroom’sとは?
暮らすroom’sは「自立=頼れる人を増やすこと」を目指し活動している、一般社団法人South-Heart(飯田市)、パブハブ(伊那市)、株式会社エルズ グランド ケア アカデミー(長野市)、ゆめサポママ@ながの(長野市)の4団体がコンソーシアムを組んでいます。
活動内容
暮らすroom'sは、大きく3つの活動をしています。
暮らしを考える多様な入口(暮らす room's)
学びの場の提供
コミュニティづくりのサイクル運営
これにより、女性のライフステージに応じた支援を行い、自立し主体的に生きる女性が増える社会を構築することを目指しています。
暮らすroom’sプロジェクトが目指す「女性活躍」とは、「女性の経済的自立」だけでなく、女性の幸せづくりを進めるため、「頼れる人を作ること」、「助けが必要だ」と声をあげやすい環境づくり、「自分の意思で生き方を選択できる」リスタートができる社会の実現を目指しています。
活動の具体例
様々なテーマのお話し会(room's)
学びの場の提供
コミュニティーづくり
これらの活動を通じて、女性が情報交換しながら学び、自立して主体的に生きる社会の構築をサポートしています。
学びについては、昨年度から延べ10回以上講座を開催しました。
お話し会は、昨年だけで60回開催。
最初は長野、伊那、飯田で行われていましたが、今年は千曲市、中野市、上田市、木曽、東御市などでも活動しました。
そこから、各room'sと呼ばれるお話会のテーマから生まれたコミュニティは多種多様で、長野県内の広範囲にわたる人たち同士がつながることができ、情報交換をしています。
長野県の女性の健康と働き方意識アンケートの特徴
暮らすroom'sの活動を始めて1年目に、長野県に暮らすおよそ1,000人の女性にアンケートを行いました。
長野県の女性が「健康」「働く環境」「キャリアップ」について、どのように考え、どんな困難に直面しているかを聞いています。
その結果をもって、飯田を皮切りに県内各地、様々なところで発表をさせていただいています。
アンケートは30代から60代を対象に、サロンのお客様や美容室、イベントに来てくれた方に依頼し、10分程かけて丁寧にヒアリングし、お答えいただきました。
また、SNSやLINEも活用し、女性がより答えやすい形で調査しました。
私たちのアンケートは、今まで行政のアンケートに答えていなかった方の意見も反映されているのが特徴です。
女性の働く環境についてのアンケート結果
さて、結果を見ていきましょう。
まずは、女性の働く環境についてみていきたいと思います。
「満足している」8.8%、
「どちらかと言えば満足している」23.4%、
「非常に満足している」23.4%
と「満足している」のは55.6%。
「体調が悪い時に配慮してもらえる」「家庭や子供の都合に合わせて休みをもらえる」など、ポジティブな意見が多かったです。
この調査を監修してくださった青山学院大学のエリック匡史先生によると、同じ質問を東京でしたら「満足」と回答するのは20%程になると思うとのことでした。
このことから、「長野県の女性は働く環境におおむね満足している」といえるのではないか。とご意見をいただきました。
働く環境に求めること
上位4つは、
人間関係が良好である
働く場所に融通が利きやすく、働き方が多様である
働く時間に融通がつきやすい
いじめやハラスメントがない
長野県の女性が求める理想の職場は、人間関係の良好さ、気兼ねなく休める環境が大事なのがわかります。
アンケートの回答者が正社員よりもパートで働いている人の方が多い。ということからも、満足度は高かったと予想できます。
一方で、このことはキャリアアップを「望んでいない」「知らない」という人が多いことも表すのではないでしょうか。つまり、それ以上のロールモデルを知らない人が多い可能性もあると言えます。
女性のキャリアアップ
「管理職になりたい(役職をあげたい)と思っていますか。」に対して、「興味がない」「わからない」無回答が51.3%と半分以上。「はい」がたったの5.7%。それは、「管理職になりたくない」「管理職になって生き生きとしているロールモデルが身近にいない」という風にもとれます。
役職や管理職はなりたくないけど給料は上げたい
今現在の管理職に憧れない
長野県の女性の管理職の割合は他の県と比べても最下位に近く、まだまだ長野県は男社会であり、女性管理職が身近にいないことがお分かりいただけると思います。
あなたにとって「キャリアアップ」とはどのような意味を持っていますか。
上から順に、
収入を上げること(631)
自己実現・自己探求をしていくこと(414)
組織・会社内での自分の評価を上げること(395)
資格取得などスキルをアップすること(357)
長野県の女性を公平・公正に評価する制度が整っていない所からこのような声があげられたのだと思います。
これまでの就労経験について
「自分の希望通りに就労を続けてきている(53%)」がいちばん多い一方で、「働きたくても家族や家庭を理由に働くことを諦めたことがある(19.2%)」「就労したくても機会がない/希望に合う職種がない(11.3%)」「自分が女性であるために就労が困難であると感じたことがある(7.8%)」の回答も40%近く占めています。
家庭を含む女性が置かれている環境は「少し働きづらい」「なりたい仕事がない」と言う部分が、少し見えてきた結果でした。
女性の健康と働く環境
このアンケートの特徴は「女性の働く環境」と「健康」を紐づけたところ。「女性特有の健康問題によって生活しづらさや働きにくさを感じたことはありますか?」の質問に対して「とても感じている・感じたことがある」が52%と半数以上。「長野県の女性が働く環境に求めること」のアンケート結果では「体調が悪い時には無理させないように配慮してもらえたり、家庭や子供の都合に合わせて休みをもらえたりする楽しい職場です。」といった声がある一方で、半数以上が「働きづらさを感じている」と言うことは、「言っていない」「言えていない」女性の状況が見えます。
「環境」の問題だけでなく、女性の体にまつわる精神的な不安や揺らぎ、そういったことで「職場に言いにくい」「仕事を続けにくい」など、健康問題への配慮が足りない現状も見えます。
2024年5月20日の日本経済新聞では「生理・更年期症状、企業が対策 厚労省検討」の記事がありました。政府が企業に「生理休暇」「更年期障害休暇」「不妊治療休暇」など申請しにくい休みの名称変更を念頭に休暇が取りやすい環境を求めるといった内容でした。
やっと政府も動き出してくれたのですが、症状そのもののつらさよりも「伝えられない」「理解してもらえない」といった部分の改善が女性の働きやすさにおける突破口になってくるのが見えます。
企業は女性特有の健康問題を理解し解決する取り組みを行っていますか
「ある程度取り組んでいる」は34.2%と3割ほど取り組んでくれていますが、「あまり取り組んでいない」は37.1%と4割ほど。ある程度取り組んでくれている会社もあるが、取り組んでいない会社も同じくらいある。思春期から始まり、それ以降も何十年とホルモンバランスが揺れ動く。これは意思とは関係のないものなので、理解してほしいところですが「女性のキャリアアップのアンケート」でもあったように、長野県はまだまだ男社会。
そこに女性が生きにくさを感じる要因のひとつだととれます。
一方、男性からも「育児の関係で休暇を取るのは女性」と言う固定概念から、休暇を申請しにくいと言う声も聞かれます。
他には、「家族がPMSでつらそうだった」などの声でわかるように症状には個人差があるので、男性上司より女性上司の方が「自分は大丈夫だったけど…。」と理解してもらえず、伝えにくい場合もあるようです。
企業には女性特有の健康問題を解決するための取り組みを行ってほしいと思いますか?
「取り組んでほしい」が65.7%と、企業に健康法面の取り組みを行ってほしいと言う意見が半数以上。
だからと言って男性が強く推し進めても「セクハラ」と捉えられてしまう可能性もあり、進めるのが難しい状況です。
「妊娠や出産が若いからと批判された」などの声もあり、「理解してもらえないつらさ」がここでも見えます。
「長野県の女性が働く環境に求めること」の調査では「職場で円滑な人間関係を求める。」ことがわかっています。
「円滑な人間関係」と言うことは、妊娠にしても、生理休暇にしても周りに迷惑をかけるのではないかと気を遣い「休みます」とは言い出しにくい現状があるのではないでしょうか。
「理解し合う」などの意識改善は、生きやすくなる、働きやすくする女性を増やすことにつながると考えます。
具体的に企業に求めるサポートはどれですか?
いちばん多かったのはフレックス制などの「柔軟な働き方(勤務体系やテレワークなど)(389人)」。その次は「休暇制度の充実(373人)」。この2つをみると「自分の身体に合わせて柔軟な働き方ができる体制を整えてほしい」と言うのが、大きな要望のひとつであると言えるでしょう。
「福利厚生の充実」「専門家相談できるところが欲しい」「休憩室が欲しい」などの具体的な要望が出るのを予想して解答欄を作っておいたのですが、それよりも多かったのが「子育て、育児、キャリアなどに悩む女性のことを理解してほしい。理解までいかなくても、こういう女性がいるんだなと思って欲しい、考えてほしい。」などの「理解してほしい」でした。
「お互いを理解できるセミナー」の実施や「会社以外で相談できる場所」を作るのも企業に求めたいサポートのひとつです。
女性のライフステージにおける月経関連症状・疾患
下の図は、女性のライフステージにおける月経関連症状や疾患で悩まれている方の人数です。
「月経痛」「子宮内膜症」などは耳にしたことがある方も多いと思います。
問題は2025年を迎えると女性の総人口の半分が50歳以上になる点です。
更年期以降の「更年期障害」「膣炎」「骨盤底筋群の老化」「尿失禁」「臓器脱・子宮脱」などのことは意外と知られていません。
特に「GSM(閉経後尿路性器症候群)」は聞き慣れない人の方が多いと思います。閉経したからと言って、女性特有の健康課題が減るわけではありません。
50歳の女性も働く時代を迎えるにあたって、更年期以降の女性の健康課題を理解していただき、企業にはサポートをしていただきたいところです。
女性の健康問題を専門家に相談するのはわずか173人
長野県の女性が健康に問題を感じても専門家に相談するのは1,000人中わずか173人。信州大学医学部保健学科中込さと子先生は「危機的状況」だと警鐘を鳴らします。
問題かもしれないと思っても、相談相手は友人や家族など専門知識のない人。それではなんとなくで終わってしまう。助産院や婦人科はハードルが高くても、ちょっとした専門家に相談できる場所を作っていきたいと考えています。また企業にも相談窓口を設けて欲しいと考えています。
女性が働きやすい環境とは?
まずはしっかりと組織のトップダウンで女性の心や体、社会状況などを理解をしていただけたらと思います。
そして、女性の身体に合わせて働ける環境を整えて、相談窓口を設けてもらえると長野県の女性が働きやすくなるはずです。
この機会に、女性にはFeminityarch Work Loungeや暮らすroom’sなど、困った時には寄り添える場所があることを知っていただきたいです。
聞いてくださった皆さん、ありがとうございました。
※1、DAO…「分散型自立組織」と訳され、株式会社などの従来型組織とは異なり、組織の代表者が存在せず、インターネットを介して誰でも自由に参加、平等な立場で運営される。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティングより)
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