見出し画像

韓国の「아・아(ア・ア)」なコーヒーシーン、覗いてみませんか? - World of Coffee Busan Report

世界各地で愛されるコーヒー。いろいろな国や地域で、魅力的なコーヒーシーンが展開されています。今回はその中から、韓国・釜山(プサン)のコーヒーシーンをご紹介。Kurasuメンバーが実際に訪れたスポットの感想をピックアップしてお届けします。一緒に釜山の街を巡るような気持ちで、韓国のローカルなコーヒーシーンをお楽しみください!


ノスタルジーが残る港街、釜山

韓国第二の都市である釜山は、約330万人が暮らす港町として知られています。韓国全体が急速な成長を遂げている中で、釜山にはどこか懐かしい「韓国らしさ」が色濃く残っています。海雲台やBEXCOのある高層ビルエリアから離れると、レトロな市場や住宅街が広がるこの街には、韓国の数ある都市の中でも独特の雰囲気が漂っています。

ビルの並ぶ海雲台ビーチエリアのビュー
旧市街地は漁港として今も栄えている

実は、釜山は日本に一番近い外国の港町。大阪からわずか2時間のフライトで行ける距離にあり、週末旅行にもぴったりの場所です。また、釜山には歴史的な経緯で日本語の面影が残っていて、街を歩いていると漢字を見かけることもあります。ぜひ、釜山を訪れた際には、街を散策しながら気になるコーヒーショップに立ち寄ってみてください。

釜山を一変させたアジア初開催「World of Coffee」

そんな釜山が2024年、アジア初の「World of Coffee」開催地として選ばれたのは、国際的な港町である釜山が、アジアのコーヒーシーンを牽引する可能性を秘めていることの見せてくれたのではないでしょうか。Kurasuの代表YozoとプロダクトマネージャーNaruoも、この特別なイベントを現地で体験し、その様子をVlogやレポートで紹介しています。

釜山に到着した瞬間から、イベントの注目度や街全体の熱気が伝わってきます。ホテル、駅、コーヒーショップには「World of Coffee」の旗や広告があふれ、Uberのドライバーとの会話でもこのイベントの話題が出るほどでした。

ローカルなデパート(左)や地下鉄のモニター(右)でも、WOCの広告が放映されている

もし、京都の街中や地下鉄で「World of Coffee Kyoto」の広告が流れたら……と思うと、かなりすごいことです。私たちKurasuも、京都のコーヒースタートアップとしてもっと頑張りたくなりますね。

釜山の街並みに溶け込み、世界へ

釜山では、市議会議員や市長までもが各メディアとともに「World of Coffee」に参加し、釜山をコーヒー産業の主要プレーヤーとして宣伝しようという、国を挙げた取り組みが強く感じられました。街としてもこの取り組みを支援している理由はいくつか考えられます。

WOCで開催されたWorld Barista Championshipの様子

韓国では、ソウルへの一極集中が社会課題として議論されています。ソウルと釜山の格差は大きく、特に釜山は高齢化や過疎化が進んでいるエリアとも言われています。そんな中、コーヒーという幅広い世代に愛されるカルチャーを発信することで、こうした社会課題に取り組もうとする視点が見えてきます。

この取り組みにおいて重要な役割を果たしているのが「Momos Coffee」。Momos Coffeeは2019年のワールドバリスタチャンピオンである Jeon Joo Yoenさんが共同所有するブランドであり、今回のWorld of Coffeeの主要スポンサーの一つでもあります。彼らの影響力は、釜山がアジア初の開催地として選ばれた大きな理由の一つです。

中国、タイ、ベトナムなどでよく見かける荷物の積み方がまだ残っていて、懐かしい光景

現在、釜山の人口は329万人で、そのうち65歳以上の人口が23%を超えており、広域市の中で唯一「超高齢化社会」に突入しました。それだけでなく、20〜39歳の若年女性人口が11.3%にとどまり、「消滅危険指数値」0.490を記録し、結局「消滅危険地域」に分類されました。さらに、毎年10万人以上が仕事などを理由に釜山を離れており、釜山の未来はあまり明るくないということです。
今週は残念なニュースが相次ぎ、心が重くなりました。こういう時こそ、ますます「釜山」を守らなければならないという気持ちが強くなりました。
Momosには、「コーヒー」のためだけに釜山を訪れる若者たちがいます。私たちは、彼らのためにも「釜山」のための努力を止めず、引き続き続けていくつもりです。

Momos Coffee Instagramより引用

イベント期間中も、Momos Coffeeはカッピングや生産者とのミートアップを次々と主催し、イベントに合わせて新店舗をオープンさせるなど、その貢献度の高さを至る所で感じさせてくれました。

海雲台ビーチ近くにある1つ目の店舗では「World of Runners」というイベントが開催され、100名以上の参加者が集まりました。コーヒーコミュニティの関心の高さと、店舗の魅力が伺えます。オープンして間もないにも関わらず、スタッフのプロ意識とコーヒーの品質の高さは特に印象的でした。

そして2つ目の店舗は、既存の店舗をリニューアルしてのオープンとのこと。開店時間の10時ちょうどに到着しましたが、すでに長蛇の列ができていました。興味深かったのが、観光客だけでなく地元の人々もこのリニューアルにワクワクしていたこと。Momosがローカルコミュニティに深く根付いた存在であることが感じられました。

ランニングイベントについては、以前投稿したこちらの記事でもご紹介しましたね。

海外では、実はコーヒーショップを中心にクラブ活動が生まれることが多いとか。今年、釜山で開催されたWOC(World of Coffee)でも、ランニングイベントが行われたようです。コーヒーとランニング、意外な組み合わせかもしれませんが、どちらもコミュニティのつながりを深めるアンカーになっています。

バリスタと走る休日。ランニングクラブを始めました - Kurasu Small Talk #4

また、Momos Coffeeの焙煎所は、私がこれまで見た中でも最も印象的なものでした。生豆の保管から焙煎、梱包に至るまで、洗練されたワークフローで効率的かつ透明性の高い運営がされており、一般公開されることでブランドへの信頼感と愛着が一層強まりました。

コーヒー共和国、アイスアメリカーノというメインストリーム

韓国は「コーヒー共和国」とも称されるほど、コーヒー文化が根付いた国です。例えばスターバックスは1999年の韓国初進出以来、現在では約1900店舗を展開しており、人口当たりのスターバックス店舗数では韓国が世界第4位となっています。

このコーヒートレンドは、ビッグサイズの「アイスアメリカーノ」を主力商品とするさまざまなフランチャイズを生み出しました。略して「아・아(ア・ア)」で通じるアイスアメリカ―ノ。特に冬でもアイスアメリカーノを頼むカルチャーは、韓国ならではのものです。

なんと《アメリカーノ》という曲で大ヒットし、メジャーデビューしたバンドがあるほどのアメリカーノ愛。釜山でも、このカルチャーが街の活気を支え、夜遅くまで多くのカフェが営業しています。

一方で、釜山のスペシャルティコーヒーシーンも着実に存在感を出しています。西面エリアには、オリジナルのコンセプトを持つカフェが集まり、地元の文化と見事に調和しています。その象徴的な存在がMomos Coffeeであり、地域コミュニティにスペシャルティコーヒーの風を吹き込む役割を担っています。

ビックサイズ・アメリカ―ノを提供するチェーン「MEGA COFFEE」。韓国語で「MEGA SIZE アメリカ―ノ 1500ウォン」と書かれている
チャガルチ市場近くのスペシャルティコーヒーショップ「COFFEE NERUDA」。中の人が店内でドリップを飲んでいたとき、ホットコーヒーを頼んだおばあさんが「氷を2個入れてくれ~」と注文をカスタマイズしたのを、今でも鮮明に覚えています。「ハンドドリップの氷後入れコーヒー」になるのかな? 面白いですね。

アジアが魅せたいコーヒーシーンの未来

今回の「World of Coffee Busan」は、アジア初開催として大きな意義を持つイベントでした。釜山のコーヒー文化の力強さと未来への可能性を示すと同時に、アジア全体のコーヒーシーンが進化していることを感じさせるものでした。

See you in Jakarta!

来年ジャカルタで開催される次回のイベントにも、東南アジア諸国から多くの参加者が集まることが予想され、さらなる成長が期待されます。今回の釜山訪問は、イベントそのものよりも、釜山のコミュニティやコーヒー文化の深さに強く魅了される結果となりました。Kurasuを知ってくださる多くの方々との出会いも、ありがたい経験でした。

最後に、今回の韓国での出会いから、今後Kurasuとして取引を検討し、ご紹介する商品も出てくるかと思います。随時、YouTube等でお知らせしますので、ぜひご覧ください!