見出し画像

【空き家さんぽ 番外編】

Episode3 鉈屋町の細長いお家①

津志田の大きなお家と時期を同じくして、私たちはもう一つのお家の相談を受けた。

それは、最初の「空き家さんぽ」のコースにも入っていた盛岡の旧くからの町家が並ぶ通りにある旧衣料品店だったお家。

画像1

↑1回目の空き家さんぽの時の様子。

この通りは、ほど近い西エリアに北上川が流れその昔は舟運に従事する人々が住む地域にも隣接して賑やかだったそうだ。良質な湧水が豊富で、昔は酒や味噌の醸造所も多く並んだ通りで、今も通り沿いにある大慈清水や青龍水は地元の方に愛される湧水としても有名だ。

画像2

↑町家が並ぶ通り

画像3

↑今も親しまれている大慈清水

町家に多く見られるように、通りに面した店舗の奥や2階は住居スペースとなっていて、裏通りまで細く長く続く家々が肩を寄せあうように隙間なく並んでいる。昔ながらの街並みを地域の方々が大切に守っている地域でもあり、最近では長いことお店を営んでる方と、新たに工房やスタジオや宿の拠点として若い方が移り住んできたりと新旧交錯する面白いエリアでもある。

そんな町で、もともとの所有者さんが亡くなられた後売りに出されていたこの細長く古いお家に(今回もやはりもれなく古いのだ)、建物を壊すことなく活用する方に住んでほしい、魅力的なお店や工房が今も並ぶこの通りに新たな仲間が増えるようにと、わざわざ購入してまで建物や街並みを守ろうという新たなオーナーが現れたのだ。その後、なかなか新たな借り手が見つからないまま数ヶ月が経ち、悩んだ新しいオーナーは私たちに声をかけてくれた。なんとも光栄なお話。これはがんばらねばと気合が入る。(いつも気合は入ってるよ)

画像4

↑今回のお家(中央)

築68年の木造2階建て。その昔は呉服店から始まり、数年前までは地元の学校の体操着や制服を取扱う衣料品店として形態を変えながらも歴史とともに地域の暮らしを支える地元に愛されてきたお店。
本当ならば3回目の「空き家さんぽ」で、この通りをおさんぽしながらこの細く長い町家をみんなでわいわい言いながら歩いて回りたかった。だってこの細長いお家も本当に魅力的だったから。

婦人服や学校の指定靴やジャージが所狭しと置かれていた店舗は、もうすでに何もなくなってがらんどうで寂しい感じがしたものの、何もないのになぜか凛としてかっこいい雰囲気が漂っている。土間に残る染みや燻んだ天井…なんだろう、ワイルドで無口なおじさまのようだ。。。小上がりの奥には和室が続き住居部分が更に奥に続いている。普通の家では体験できないその奥行きがまたなんとも言えない。そして、裏通りの2階の和室の窓を開けて私たちは絶句した。窓の向こうには通りの向かいにある旧料亭の日本庭園が広がっていて、薄桃色に咲く満開の桜が私たちを迎えてくれていたから。なんという借景。なんという美しさ。ナニコレ。。。悶絶。え、このおじさま色気まであるじゃないですか。。。
これは、もう、活かしてもらう方に繋げるしかないのである。

さてどうやって???
今回も立ちはだかるコロナ問題。。。いろんな方とこの魅力的なお家を見てまわりいろんな話で盛り上がりたいところだがそれもできない。さんぽは個別に切り替えよう。。。
まずはいろんな方にこのお家の魅力を伝えたい。その前にまずは存在を知ってもらわねば。

ということで、今回は不動産屋さんが物件を紹介するポータルサイトに物件を登録することにした。
不動産屋さんらしくなってきた(笑)
アパートや店舗など物件をこうした検索サイトで探したことのある方はなんとなくご存知かと思うけど、サイト内にたくさん並ぶ物件のアイコンというか画像は、ほとんどが建物の外観、もしくは間取り。
これでは、お家の魅力は瞬間に伝えられない。いや、そもそも瞬間で伝えるのは難しいんだけど、それでもだ。何かこの画像の羅列の中で「おっ!?」とスクロールする指が止まる魅力がきっとこのお家にはあるのだ。それを伝えればいいだけなのだ。

外観や間取りといった物件情報として「わかりやすい」ことよりも、お家のチャームポイントが一番伝わる画像をトップにしようと掲載方法を変えてみた。
ということで私たちがトップに選んだ画像がこれ。

画像5

↑お店に入ってまず目に入ってくる空間

お家に入って一番最初に目にして、一目惚れした一枚だ。
サイトに登録し、画像一枚一枚にちょっと愛情強めなコメントを添える。結構たくさんの写真が登録できる上に、その写真ごとにコメントを入れられるしとても便利である!(え?今更?)

画像6

↑お店の奥から入口を望む

画像7

陽がさす午後も素敵

画像8

↑奥の和室の窓を開けるとお向かいの庭園が。。。

ようやく、サイトに登録完了。

今回は空き家さんぽと言いながらも、方法はいたって普通の募集方法。
でも少しだけ伝え方を変えてみた。

ちゃんと彼に問い合わせは来るだろうか?築年数もひときわ古い、かなり改修など手のかかる建物だ。
でも、とっても魅力的。

今回もどうか運命の人の目にとまりますように。
私たちは願った。
そして、彼の物語はつづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?