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【season2-3学期】 「 まちを耕す学 」 開講レポート

こんにちは!暮らしの大学 事務室です。
あっという間に2月も中旬。近日中に次回の教室(まちを耕す学 第二弾!)のお知らせをお届けできる予定ですが、その前に本日は1月末に開講した教室「 まちを耕す学 」のレポートをお届けします。

残念ながら受講が叶わなかった皆さんにも、本教室の雰囲気を感じていただければ幸いです。

▼教室の内容

教室名:「 まちを耕す学 」
「土、人、コミュニティ…
 まちのあらゆる要素を耕し、持続可能な暮らしの実践について考える」

今学期のテーマは「未来」。
未来をつくっていくのは、今の私たち。
では今、わたしたちがするべきこととは?

本教室では暮らしの大学が大切にしてきた「暮らしの目線でまちをつくる」ということを前提に、「未来のまちをつくること」について「まちのあらゆる要素を耕す」ことから考えていきます。
それは時に、土であり、人であり、コミュニティかもしれない。

culture(文化)の語源は、ラテン語の cultura 。cultura の語幹は colere で、「守る、手入れをする、耕す」という意味。

まちを耕すことで、どんな文化が生まれるのか。
そして文化がどんなまちをつくっていくのか。

具体的な行動レベルで探っていくのが、「まちを耕す学」です。

▼教室について詳しくご覧になりたい方は、以下の記事もチェックしてみてくださいね。


▼教室の様子

「 まちを耕す学 」第一弾の今回は、今学期を通して取り上げる「SDGs」の11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」、そして12番目の目標である「つくる責任 つかう責任」の2つについて、今回は「食」と「コミュニティ」の観点を中心に考えていきました。

まずは、映画の鑑賞をすることから思考の旅をスタート。
鑑賞したのは、「都市を耕す エディブル・シティ」。


経済格差の広がる社会状況を背景に、新鮮で安全な食を入手するのが困難な都市で、市民自らが健康で栄養価の高い食べ物を手に入れるシステムを取り戻そうとさまざまな活動が生まれて行く。一人一人の活動がコミュニティを動かす力となり、社会に変化をもたらす卓越した草の根運動のプロセスを実感できるドキュメンタリーです。

映画の鑑賞後にはテーマにまつわるゲストとして、ローカルフードサイクリング 代表取締役社長でありNPO法人循環生活研究所 理事の たいら 由以子さんをお迎えしました。
はじめに日頃のご活動に関するご説明をいただいた後、たいらさんにも映画のご感想をいただきました。

司会:映画をご覧になっていかがでしたか?

たいらさん:すごく希望が見える映画だと思いました。また、フロリダなんかも加工品を食べなくてはいけない高齢者の人も増えていて、これから都市部に住む人が増えていく中で、新鮮で安全な食べ物にアプローチすることがどんどん難しくなっていくんだな、というのが象徴されていたと思う。
私もこの10年以内にサンフランシスコに行ったんですが、やっぱり30年前とは全然違っていることに驚きました。どうして廃棄をたくさんするアメリカで、あの西海岸だけが進んでいるのかが疑問で4年連続で行ってきたりしたんですが、まず焼却場がないんですよね。土が病んでいて、スプリンクラーで水を撒くと罰金取られるくらい水問題にも差し掛かっていて、食糧問題とか食糧危機っていうものが身近にあることがひとつあるかと思いました。
本作品は本当に心地良い市民運動というか、これから日本もこうなって欲しいなと思いました。

日本での「市民運動」というところでは、暮らしの大学が拠点としている箱崎でも今後「循環」に関する動きが始まろうとしているところ。そのお話については、学長代行の斉藤よりお話を。

斉藤:エディブルシティは2014年制作の映画ですし、たいらさんに至っては20年くらい後活動をされていて、やっと時代が追いついてきたのかなと思います。コロナの時代においては(たいらさんがご活動で掲げている)「半径2km以内の循環」という考え方が現実味を帯びてきているとも思います。
また、私は箱崎ローカルで活動していて、商店街のみなさんとも活動をご一緒していますが、これからたいらさんのサポートを受けながらコンポストの事業をはじめようとしています。先程たいらさんの紹介画像にもでてきていましたが、モーリスグループさんが福岡市内で運営しているパブのひとつが箱崎にある「筥崎鳩太郎商店」ですが、そちらと隣のいくつかの店舗を皮切りに、飲食店を中心に商店街全体で廃棄を減らしながら、循環型の社会をつくっていく取り組みをまさにこれからスタートさせていこうとしています。
その中で、九大跡地の開発までつながっていくようなローカルな取り組みが、これからのできる新しいまちの礎、基準になっていくような、そういうまちの文化をつくっていけたらいいなと思っています。

ここからは、どんどん参加者のみなさんにもお話に加わっていただきトークが続いていきました。

斉藤:箱崎はそもそも農業のまちで、九大があった土地も九大がくる前は畑だったんですよね。日本三大蔬菜地(そさいち)と言われる青物野菜の生産地で。そういう意味では土地の使い方として、農業みたいなものも相性はいいのかもしれないと思ったりもします。この辺、箱崎在住の方にお話を聞いてみたいですが、いかがですか?

ご参加者:私の実家は佐賀にありますが親が元々コンポストをしていて、家の敷地の中で小さな畑をやっていたりもしていました。そういう暮らしが当たり前なところから福岡という大都市に来て、暮らしの中と物を生産する場が別々にあるという経済サイクルの中に身をおく中で、どうしても失うというか。そんな中で映画を観て「食」はただエネルギーを得るための「もの」ではないというのがすごく印象に残っていて、そこには人が集うコミュニティの力だったり、もしくは学びがあったり。
SDGsの高い構想、高いところを見ると、自分たちの暮らしと遠いところに感じてしまうこともあるとは思うんですが、自分たちの生活圏を自分たちでつくり直していくっていうことはすごく近いことだと思いました。

また、コンポストを実践している参加者さんもいらっしゃいました。

ご参加者:私自身、段ボールコンポストをしていて、わりと馴染みのある題材だと思って見ていました。アメリカのイメージがどうしてもついているところがあったのですが、見方が変わったなぁとも…。
また、人って元々「つくりたい欲求」があると思うのですが、現代はそれが奪われているというか。買うことでそれを満たしているけれど、やっぱり基本的な欲求として「つくりたい!」という欲求が強くあって、だから(映画の中の市民運動では)こうやってみなさん集まっているんだよね、と思いました。なので、斉藤さんも箱崎でこういうことを企てているんだよね、という風にも

市民運動のモチベーションとして、人間の「つくりたい」という欲求のお話が飛び出すとはおもしろいですよね。
また、他の参加者さんからは「つくる」を日常的に実践しているお話も飛び出しました。

ご参加者:私は農家で米づくりや畑をやっていて、自分でつくったり、人参取ってくる、大根取ってくる、ということは食の中でやっていたのですが、今日のお話を聞いて、表面しかわかっていなかったと感じました。もう一歩踏み込んで「食」を考え直していくと、コンポストという言葉は知ってはいましたが行動には至っていなかった、といったことがあって。一方で、ちょうど今地域でコミュニティカフェを計画しているのですが、そこで人が集うことを考えている中で「食のサイクル」という視点で地域の方とつながっていくというのもあると思ったり、すごく気付きがありました。

それぞれがそれぞれの形で「食」に関わったり、考えたりしている。それはやはり「食」が人間にとってなくてはならない存在ゆえ。だからこそ、「食」を通しての人のつながりは強固と言えるのかもしれません。

ご参加者:映画の感想としては、様々な社会課題がアメリカにはあって、それを「食」という言葉につなげながら大きなうねりをつくって、大きな流れの中で解決していこうというような雰囲気を感じました。
また、たいらさんのお話を聞いていて「コンポスト」というところを起点に課題解決をしていて、でも苦しいことばかりではなく、楽しいお話につながっているのが素晴らしいと感じた。(食は)避けてはいけないテーマだし、正面から向き合わないといけないテーマだし、それを通して新しくできるまちが今あるものと連携して、よりよい関係性や新しい価値が生まれていくようなことができればと思いましたし、そのひとつの構造のあり方として、すでに箱崎での動きがあるというのはすごく参考になりました。

「都市は消費する場所で、地方はつくる場所」というスタイルではない、循環がひとつのまちで生まれる。そんなことが箱崎でできれば…いえ、目指していこう、実現できる、そんな気持ちになってきます。

最後に、たいらさんよりメッセージをいただきました。

たいらさん:ぜひ楽しい循環生活を箱崎で広げて、最終的にはパブリックヘルス=住民の病気を予防したりとか、健康寿命を伸ばすみたいなことにつながっていくように、楽しい毎日を過ごせて、おいしいものを食べて過ごす、そんな箱崎を作りたいですね。

おいしいものをつくって食べて循環して、健康的に暮らし続けられるまち。そして、そのまちが持続可能な環境となっていくように、暮らしの大学もみなさんとの対話を通じて行動のきっかけを作っていければと思います。


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