あん迷宮をぐるぐると

「あんは炊く人によって味がちがうんです」

初めて和菓子を作りに製菓学校の体験教室に申し込んだとき、先生に言われました。
「今日のあんは〇〇先生が炊いたのだからすごくおいしいです。〇〇先生の炊いたあんが一番好きなんです」
たしかにおいしかったです。

『和菓子迷宮をぐるぐると』太田忠司さんの本を読みました。

大学で物理工学を学んでいた涼太くんが、和菓子の美しさに魅せられ製菓学校に通う話です。

和菓子つくりの体験に3回行きました。
素人が和菓子をキレイに作れないんですが、作るのは楽しかったです。

過去に行こうとするときの話を書きました。

あんって人によって作り方がちがいます。
涼太くんはあんの迷宮に入ってしまいます。

先生に自分の餡を食べてもらいにいったとき、言われます。

『「僕は自分が作る餡を90点くらいだと思ってる。低いと思うかな?」
「そう、ですね。意外です」
「プロならもっと上を目指せって?」
「そういうものだと思ってました」
「わかるよ。僕も若い頃、そんなふうに思ってた。でも叔母さんに考えを変えられた」
「おばさん?」
「プロの作曲家なんだ。ペンネームをいったら知ってるかもしれない。作曲した楽曲がいくつもヒットチャートに入ったひとでね。その叔母さんは僕が和菓子職人になると告げたとき、言ったんだ。『君は何点の和菓子職人になるつもりなの?』って。僕は100点なんて言わなかったんだ。『98点を目指します』って言った。そう、君と同じだよ。それから何年か経って、僕は自分の店を持った。その店で満足できるレベルの和菓子を提供しようと思った。毎日頑張って研究を重ねたよ。98点を目指したんだ。でもどうしても、そのレベルに達しなかった。もっとよくなる。もっと工夫できる。そう思いながら、でも結果に満足できなかった。追いつめられて、もう店を閉めてしまおうかと考えるまでになった。そのとき、作曲家の叔母さん言われたんだ。『君、まだ98点を目指しているの? じゃあ今の君がつくる菓子は何点だと思う?』ってね。僕は考えて『まだ90点くらいです』と答えたら『それで充分じゃないの。私だって自分の書いている曲を90点ぐらいだと思ってるよ』って言った。それから教えてくれたんだ。『これから歯を食いしばって頑張って90点くらいのものを93点くらいにまで上げられたとしましょう。君は『これで98点に3点近付けた』と思うかもしれない。だけど他の人間から見れば、苦労に苦労を重ねてたった3点しか上げられなかっただけなの。その3点を上げるために費やした苦労を評価するのは自分だけ。客は3点なんて気にしない。その労力で90点の菓子をより多く作ることのほうが客のためになるんだよ』ってね。この考え、どう思う?」
胡桃沢に問われ、涼太は考え込む。
「どう、かなあ……」
「素直には納得できない、かな? わかるよ。僕もそうだったからね。最初は叔母さんの言うことに納得しなかった。職人ならよりレベルの高いものを目指すべきなんじゃないかねってね。だからすぐには受け入れられなかった。河合君も納得できなければ、受け入れなくていいよ。それも人生の選択だからね」』


私は納得しました。
御覧の通り、私は文章が下手です。
90点のものなんて書けないです。
上手くなったら書けばいい、そう思っていたらいつまでも書けません。

昔は感想文も作文も書くのが嫌いでした。
でも本を読むのは好きでした。
そんな人が本を2冊書いて、感想文をかいています。

なんでも沼ですね。
#〇〇沼
餡も文章も、みんな。

涼太くんは理屈っぽいです。
でも論理破綻してる私からするとそれがうらやましいです。

「アウトプットの練習をしているのはなにか言われてムッとしたとき、電光石火で秀逸なイヤミを言えるようになりたいからです!」

とドヤ顔で言った私からすると、これだけの理屈を言えるのはすばらしいです。

言ったあと、ディするのではなく、褒められるようになりなさい。
褒めるのはむつかしいから、といわれました。

心の狭さがばれてしまいました。
恥ずかしいです。

恥ずかしいので、いい話をします。
出来立ての和菓子はみずみずしいです。
お店のは乾燥してることがわかりました。
出来立てをたべるとわかります。
生地に水分があって、ぜんぜん違います。

ぜひ、和菓子つくりを体験して出来立てを食べてみていただきたいです。

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