ゴミ箱をあさる社長のいる会社

私が入社した出版社は小さなだった。

細々と、人脈だけで本を売っていたいわゆる零細企業。社長はワンマンで、パワハラは日常茶飯事だった。

そんなことを露知らず、いわゆるリクルートスーツで入社した初日、社長からこんなことを言われた。

「スカートは履いてくるな、足が見えるといろいろ面倒だから」

何が面倒なのかは全くわからず、もくもくと仕事をする先輩に、気軽に話しかけたとたん、ワンマンジジイは怒鳴った。

「お前ら何話してんだ!?、お前こっちに来い!!!」

今思えば、完全なる理不尽なパワハラだが、若かった私はおどおどしながら社長から怒鳴られた。「あいつは頭がおかしいところがあるから近づくな、足を見せて近づくな、話もするな、仕事もそれ以外も話すな。他の同僚とも同じだ、俺のいないところで会食等もするな、連絡先も交換するな」、と言ってきた。

ただの頭のおかしいジジイだが、本人は本気で怒っている。さすがの私もあっけに取られてしまった。世の中にはこういう疑心の塊で、人を支配しないと気が済まない、たちの悪い人がいるのだ、と恐ろしささえ感じた。

社内のゆがんだ人間関係、信頼関係のない上司と部下、パワハラジジイの執拗で細かな指示、挙句の果てには、24時間ビデオで取られて、同僚同士の会社の愚痴も全て聴かれて、怒鳴られる始末。

ジジイは定期的にごみ箱をあさり、社員が書き残したメモを読んで、自分の悪口は書かれていないかチェックしていた。運悪く見つかった社員はつるしあげられ、やめていく。

上記の話を嘘だと思う方もいろだろう。そこはご想像にお任せするとしよう、一部はフィクションとしておこう。

私はこれらの経験を踏まえて、一つの結論に辿り着いた。

仕事さえできれば、人間関係などどうでもいい。人間関係を気にしだすと、こんな哀れなジジイになっていってしまうからそれだけは避けよう、と。

この記事の内容が、どうか本物のフィクションとなる世の中になるよう、私は切に願っている。




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