「こういうデータ分析チームもありかもしれない」と思えた話
こんにちは。クラシコムデータ分析チームの高尾です。
先日、Kurashicom Tech Talkにてデータ分析に関するお話をしました。
当日は100名以上もの方にご参加いただき、とてもいい時間になりました。
今日はそのイベントでお話した内容の一部についてご紹介します。
「イベントでお話したい!」と広報や人事に僕から相談して、開催が決定したのですが、お話したい、と思えたのは、僕自身が、ようやく「こういうデータ分析チームのありかたもいいかもしれない」と思えたから、だったのでした。
そこで、イベントでは、参加してくださった方にも、そう感じていただければいいな、と考えてお話をしました。
データ分析を、「健康」にたとえて考えてみる
僕らのデータ分析チームは、いうなれば、「かかりつけの小児科医」のような存在だな、と感じています。クラシコムのデータ分析は、ビジネスの健やかな成長を支えている、と考えていて、そういう意味でも、健康をメタファーにしながら考えるのがよさそうです。
データ分析チームが発足したころ、データチームとして3つの役割を果たしたい、と考えていました。
健康診断、意思決定支援、予測です。
健康診断:事業の状態を常にウォッチできる環境を作る。
健康にたとえると、体重をはかれるように体重計を用意する役割です。
意思決定支援:意思決定のための情報、観点を提供する。
週に一回ランニングするといいのでは?とアドバイスして運動を促す役割。
予測:見込みの情報を提供する。
このままいくと、3ヶ月後はこういう健康状態になっていると考えられます、と伝える役割。
健康をメタファーにするのがしっくりくるのは、クラシコムのKPIへの向き合い方とも関係がありそうです。
KPIを目安と必達目標にわける、という考え方については、過去にこちらのブログにまとめたので、お読みいただけると嬉しいです。
簡単にまとめると、会社がコントロールレバーを握っているのかどうかでKPIの扱い方を変えて、コントロールレバーを握っている場合は、「目安」としてトレンドをウォッチし、コントロールレバーを握れる場合、重要な指標であれば「必達目標」として管理する、という考え方です。
データチームの成り立ちについて
現在のデータ分析チームは、図のような4つの役割をもつメンバーで構成されています。
この体制に至るまでの3年間の取り組みを紹介します。
有志で勉強する時期
2019年、僕がクラシコムに入社した頃、社内の有志(経理担当者、バイヤー、僕)でSQLの勉強をして、分析を行っている時期がありました。
ああでもない、こうでもないと議論しながら、SQLを書いたり書けなかったりと、すべてを手探りで行っていました。
わいわい議論する環境は、楽しさはあったものの、分析できる内容に行き詰まりを感じていたこともあって、業務委託の募集をしました。
先生を得た
当時は自分たちの進むべき方向も明確にできたいなかったため、「分析の先生か、一緒にもがいてくれる人にきてほしい」と募集し、いろいろな方にお会いした結果、先生として、データアナリシスの専門家を迎えることとなりました。
同時期に、カヤックさんとの業務提携もはじまり、このタイミングでデータアナリストとデータエンジニアの専門家を擁するチームができました。
データ分析基盤の原型を作り始めた時期
しかしながら、当時はデータ分析基盤が整備されていなかったこともあり、データをスプレッドシートに集約する運用を行っており、度々発生するデータ転送の抜け漏れの対応に工数がかかる状況となっていました。
そこでデータアナリスト、データエンジニアの協力を得て、BigQuery、Lookerの導入を行いました。2020年の夏は、lookMLを学ぶ夏となりました。
この2つのツールによって、一定データ基盤が安定したこともあり、複数データソースを使いたい、という気持ちが強くなり、データ転送ツールのtroccoを導入しました。
新たな仲間を迎える時期
データ分析チームの今後の方向性には、ずっと悩んでいたのですが、2021年の暮れごろに、風音屋さん(データ分析の本を書いているゆずたそさんの会社)がデータ分析の支援をされている、というプレスリリースを出されていて、「これは僕らに必要なものを提供してくれそうだ!」と感じたので、風音屋さんのコーポレートサイトからお問い合わせしました。そして、縁あって、そこからクラシコムのアドバイザリーをしてもらっています。
そうこうするうちに、こちらのnoteでも紹介したとおり、lookMLの運用が複雑化してきたので、primeNumberさんとの共同プロジェクトを行いながら、troccoのdbt連携機能活用を進めているところです。
データ分析チームの貢献とは・・・?
さて、このように変遷をとげてきたデータ分析チームですが、僕の頭のなかにはずっと「クラシコムにどう貢献できているのだろうか」というもやもやした気持ちがありました。
「はかる」「わかる」「かわる」
データ分析をする上で、僕が心にとめているフレーズに「はかる」「わかる」「かわる」というものがあります。
これは、健康経営の文脈などでよくいわれているものです。
「かわる」ために「わかる」必要があり、「わかる」ためには「はかる」必要がある。逆に「かわる」ことができるのであれば「わかる」必要はないし、「わかる」ことができるのであれば「はかる」必要もありません。
クラシコムの「わかりかた」
クラシコムは、従業員の8割が元顧客、という構成なので、お客様のことは、自分たちの胸に手を当てて考えると、一定の水準で「わかる」、という特徴があります。
また、社内slackには、#salesというチャンネルがあり、毎15分、売上情報が自動的に反映される仕組みが構築されています。社内のスタッフや経営陣は、長い人であれば10年くらいのスパンでこれを見続けており、どういう施策をすると、売上がどう変わるかを、肌感覚として身につけてもいました。10年を超える肌感覚の蓄積にまさる「わかる」を提供するのも、相当に難易度の高い取り組みです。
ようやく見えてきた3つの貢献
しかし、改めてデータ分析チームが取り組んできたことを振り返ってみると、以下の3つの貢献があるのではないか、ということが見えてきました。
・わかるを広げる。
最初は、「経営者や、社内のスタッフ」の「わかる」を(10年の肌感覚の積み上げもなく、元顧客、というわけでもない)僕が、「わかる」ために始めた取り組みでした。
この「わかる」を、更に、上場準備や上場を通じて、投資家さんをはじめとした、社内外の多様なステークホルダーにも広げることができつつあります。
・わかるの種類を増やす
また、売上のトレンドからは見えにくい、顧客軸での蓄積などは、SQLを書かないとなかなか視覚化することができなかったこともあり、こういったデータを提供できたことで「わかる」の種類を増やすことができています。
・はかるの効率化
日々、現場で数字をウォッチしながらみんなが業務を行っている中で、たとえば、メルマガ経由の売上はどれくらいだったのだろうか、という指標が、データ基盤の構築によって効率的に取得できるようになりました。こうして、みんなの「はかる」が効率的になっています。
こうして考えてみると、ドラマチックな「かわる」をもたらしてはいないものの、いうなれば、かかりつけの小児科医のような安心感が提供できていそうだな、ということをじんわりと感じられたのでした。
カヤック池田さんから技術面のお話しをしてもらった
さて、今回ご紹介したのは、ビジネスサイド、チーム運営側の視点でしたが、当日のイベントでは、業務委託でお世話になっている、カヤックの池田さんにも登壇いただき、技術面についてもお話いただきました。
こちらの資料にまとまっていますので、ぜひ、御覧ください。
最後に・・・
次回のKurashicom Tech Talk は、「北欧、暮らしの道具店」のインフラを支えるSREチームが登壇します。ぜひこちらもご覧ください。