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【文学朗読劇『こゝろ』についてのノート⑤】

前回に続き、『こゝろ』の出演者を紹介します。後編の今回は、「姉」役の岩坪成美さんと「妹」役の木谷美絢さんです。

岩坪成美さんのこと

 実は今回の出演者四人のうち、岩坪さんだけが僕の教え子ではありません。前回書いたように内藤さんと林さんは桜美林大学、そして木谷さんは洗足学園音楽大学で僕と出会っています。岩坪さんとは遡ってみたら、2012年の夏にメールでやり取りしたのが最初でした。11年前ですね。きっかけはこのツイートです。

 そして、その年の11月の群読劇『星の王子さま』『走れメロス』、12月の文京区千石図書館での『銀河鉄道の夜』に出演してもらいました。以降、多くの創作を共にしています。『放課後 女子学生1920』(2013)、よみしばい『ゆめくい小人』(2015) 、よみしばい『走れ!メロス!』(2017)、よみしばい『かぐや姫~竹取ものがたり~』(2017)、『西遊記』(2017)、よもしばい『あらしのよるに』(2021)、『ピノッキオの冒険』(2021)など。他にワークショップの助手やイベントへの出演、『わが友ヒットラー』の演出助手も。劇団員以外で僕と最も一緒に仕事をしている俳優は、岩坪さんです。身体表現も、声での表現も、創作に取り組む姿勢も信頼しています。
 岩坪さんとの創作は、その出会いの経緯から、主に子どもたち向けや一般市民向けの協働が多かったのですが、彼女をよく知るに連れ、また彼女の成長に連れ、全然違った作風のものも一緒にやってみたいと思っていました。今回の「姉」役は物腰の穏やかさ、他者への親切さの奥に、般若の顔を持っています。彼女の演じる抑制された般若を見てみたいと思い、今回、スケジュールの無理を言ってオファーしました。どんな面を見せてくれるのか、楽しみにしています。

木谷美絢さんのこと

 木谷さんは、前述した通り、洗足学園音楽大学での教え子ですが、卒業後も何度か、出演してもらっていました。劇ツク2『しんしゃく源氏物語』(2013)、ケンゲキ『光速 銀河鉄道の夜』(2014)、よみしばい『陰翳礼賛』(2015)、『2100年のファーレ』(2019)、よみしばい『銀河鉄道の夜〜宮沢賢治の夜空〜』(2019)、そして一昨年度の吉祥寺ファミリーシアター『銀河鉄道の夜』(2021 吉祥寺シアター)でもジョバンニ役を務めてもらいました。木谷さん、銀河3回もやってるのかあ。というか、気づいたんですが、木谷さんも、岩坪さんも、林さんも皆、それぞれバージョンは違いますが、僕の演出する『銀河鉄道の夜』に出演していたんですね。いったいOrtでいくつのバージョンを作ったことか、皆、違う世界線の銀河鉄道で旅をしていたなんて、Ort版マルチバースな感じでしょうか(たぶん違う)。
 木谷さんは、品がよく、誠実で、ちゃめっけもある、とても素敵な俳優です。そういうところは良い意味で学生時代から変わりません。木谷さんも岩坪さんも、フリーの俳優として多くの現場へ継続的に参加しており、二人とも多くの演劇人から愛されているのだと思います。同時に、二人の芯の強さ、内に秘めた激しさが無ければ続けられていなかっただろうとも推測します。今回の「妹」役は原作での「お嬢さん」にあたり、周囲から無垢さを求められます。しかし、人間は無垢ではいられません。無垢を期待される人間の中に生まれる影を、木谷さんがどう演じるか、こちらも楽しみにしています。

二人からのコメント

 イメージ写真撮影時の二人からのコメント動画を紹介します。

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