見出し画像

2本の蔓植物(2人のチャレンジャー)のその後

過日、2本の蔓植物が、絡み合いながら上に向かって、ブロック塀を登ろうとしていたのを目撃しました。

IMG_0017のコピー

それを擬人化し、協力し、助け合いながら崖を登る2人の人物(チェレンジャー)になぞらえました。

私たちが、問題解決・意思決定に関わる思考をするとき、頭の中で二人が対話する(自問自答する)という形で経験されます。ですから、「2本の蔓植物になぞらえた2人のチャレンジャー」とは、問題解決・意思決定の思考をするときの、私たちの心の表れ方を喩えたものです。


追記1

現実の蔓植物のその後です。

IMG_2925のコピー

平滑なブロック塀に蔓植物が絡まって掴まる場所はまったく無く、進路は下方へ180°方向転換となりました。今は、人が行き来する通路に、たまたま置かれた台車の上を、目(芽)の前にある状況を手探りしながら、前に進んで伸びて行っています。未来は、往来で踏み潰されるか、塀の管理者に取り除かれるかで、どうみても活路は開かれないように思われます。ですが、この蔓植物は、そんな全体の状況を知る術もなく、懸命に生きています。

路地裏で出会った蔓植物を題材にして、思い通りにならない私たちの生き方について考えてみました。

私たちが日常で遭遇する問題解決・意思決定には、蔓植物が根付いた場所のように、私たち自身によって動かせない枠組みが外から与えられていることが多くあります。逆らえぬ要因は要因として受け止めながら、どうにもならない運命に抵抗するよりは、未知の未来に従い、心の安らぎを求めるのも、問題解決・意思決定の役目を担う心の重要な働きのひとつです1)。

このあと蔓植物がどうなるか、身につまされることとして関心をもって、フォローします。

1)安西祐一郎:問題解決の心理学 人間の時代への発想. 中公新書757. 中央公論社. 1998, P17-28


追記2

さて、その後の蔓植物です。

画像3

下方へ蔓を伸ばすのをやめて、第3の芽を上方に伸ばしはじめました。

これは未知の状況に直面した小動物が見せる「変則転向」の一種ではないでしょうか?変則転向とは、小動物が未知の状況を察知し、予想外の行動を自律的に発現することです。脳を持たない小動物に現前する心の存在です2)。

擬人的に言えば、それまでのやり方では解決困難な状況に直面して「あがく」ということです。

第3の芽もおそらく有効ではありませんが、引き続きこの蔓植物を通じて「あがく」ことの意味を見つめ続けたいと思います。


2)森山 徹・著:ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学. PHPサイエンスワールド新書, PHP研究所, 2011. P63-160


追記3

蔓植物の近況です。

IMG_9195のコピー2

元の2本の芽も、第3の芽も大きな変化は無く、成長を止めているようです。

元の2本に芽に近づいて詳しく観察しました。

IMG_9191のコピー

元の2本の芽は、先端が枯れていました!これって、戦略でいうところの、「撤退戦」ではないでしょうか?

消耗戦に巻き込まれて致命傷を受ける前に、手際のいい撤退戦を素早くやらなければ本体がダメになります。撤退戦が負けだと思っているリーダーがいますが、撤退戦は決して負けではなく、どうやって次の勝ちにつなげていくかの、組織の再構築です。リーダーで一番難しい仕事が撤退戦です。3)

蔓植物は自らの体力を見極めて、戦う位置を下げて防衛戦を築いている。縮小ではなくて、戦線を固める時期だと判断している。擬人化して、そんな妄想をしてしまいました。

引き続きフォローを続けます。

3)半藤一利, 江坂 彰・著:撤退戦の研究. 青春新書PI-460, 青春出版社, 2015. P103-146


追記4

蔓植物は、塀の持ち主によって、主となる2本の蔓を刈り取られてしまいました。残った蔓も、夏の日差しによる乾燥と、病害虫にさらされています。植物はどうにもならない状況に、ひたすら耐えています。

画像6
(2021年8月7日)

これって、「今すぐに解決できなくても、なんとか持ちこたえて行く能力」すなわち、ネガティブ・ケイパビリティ4)ではないでしょうか。

その後、植物は成長を止めてしまいました。しかし、状態は維持しています。雨が降ると、傷ついた葉はみずみずしさを取り戻します。

画像7
(2021年9月18日)

ネガティブ・ケイパビリティは、すぐに結果が出ない長期的な教育や研究を支える能力であり、不登校や引きこもりといった解決困難な社会問題に対処する視点です。それは、この植物のように、もともと生き物に備わっている生命力のようです。

引き続き、フォローします。

4)帚木蓬生・著:ネガティブ・ケイパビリティ 答えのない事態に耐える力. 朝日選書958, 朝日新聞出版, 2017. P185-201


追記5

その後の蔓植物です。葉が枯れて、早々と冬支度です。

画像8
(2021年10月2日)

植物には、こころや意志はありませんが、それは、いさぎよい、すなわち、未練無くさっぱりとした決断に思えます。

この植物が発しているメッセージは何か? 結論は急がずに、また来春の再会を待ちます。


追記6
新年が明けました。植物は、じっと耐え続けていました。

(2022年1月3日)


追記7
盛春になって、蔓植物は本格的に成長を再開しました。今度は、上方でも下方でもない、今までになかった方向へチャレンジしています。蔓植物は、与えられた運命の中で、盲目的にひたすら愚直に生きるのではなくて、全力を尽くして、さまざまな可能性を試して、生きているように見えます。

(2022年4月23日)

追記8
蔓植物は、夏を迎えて、下に上に活発に成長していました。葉も濃い緑色になっています。

(2022年7月23日)

追記9
蔓植物は、今年の猛暑の日差しに葉を焼かれながら耐えていました。

(2022年8月14日)

岡山県津山市の老舗洋和菓子店「ナポレオン」です。旧・出雲街道沿いで風雪に耐えて、存続しています。

ポートアート&デザイン津山で開催された、川埜龍三 モノラルユートピア展の帰路途上にて
(2022年8月11日)


追記10
今年は、春になっても、夏が来ても、蔓植物は、芽を出しません。

蔓植物の近況(2023年8月10日 山の日)

もう、死んでしまったのでしょうか? それとも、今年の異常気象を察知して、眠ってやり過ごしているのでしょうか?

観察をつづけます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?