見出し画像

発熱残酷物語

コラム398:発熱残酷物語

 数週間前、コロナの第7波がちょうどはじまった頃、発熱をした。結論から言うと、古いタコス・ソースを食べすぎて胃腸炎を起こし、下痢と発熱を起こしただけだった、という間抜けな顛末なのだが、過程はものすごく険しいものだった。

 夜中に39度近くの、急な発熱に気づき、「コロナだ!」と、あわてて、横浜市の相談ダイヤルに電話をする。すると音声ガイドが流れ、「ホームページを見てください」という間抜けなことを言われる。要するに、病院のリストから、自分で選んで電話をかけまくり、診てくれるところを探せ、とのこと。近所の大きめな病院から、電話をかけた。当直の寝ぼけた人が「うちは診てないよ」、と言うところもあれば、朝に「予約のための電話をかけつづけろ」という指導のところあり、また、発熱外来の予約はしばらく埋まっている、と告げられることもあり。再び、病院から教わった横浜市の別のサポートダイヤルに電話すると、発熱外来が設けられている2件を紹介してくれた。そのうち、予約なしで診てもらえるところは1件しかないので、遠いが仕方なく行くことになった。(1週間後、友人が発熱したときには、朝8時に並んでも無理、と言われた)

 朝9時の診療開始よりも早く、8時半頃に、渋滞を抜けてようやく到着すると、発熱患者の番号札を渡され、一般とは別のところで待機、診察は病院外のプレハブで、医師とはタブレットで話すことになった。看護師さんは、遠隔とはいかないので、鼻の奥の検体を採取し、お会計と帰宅。看護師さんの命懸けの仕事に感謝する。その病院自体も、発熱患者を当日に予約なしで受け入れていることに感謝した。

 だが、明細書を見てはじめて気づくのだが、そこはPCR検査はしておらず、抗原検査であった。しかも、陰性の場合は電話連絡すらないので、夜7時くらいまでに連絡がなければ陰性、というあいまいな立場で過ごさねばならなかった。家で自己隔離をしつつ、不安な日を過ごした。結果は陰性で、電話はかかってこなかった。

 それでも不安だったので、以前に買ってあったPCR検査の郵送キットを使って、自費で検査(3000円くらい)、陰性で安心し、胃腸炎とたたかうだけ、となったのだ。

 このプロセスで、おかしいところ、理不尽なところ、問題のあるところといえば、1発熱患者の診察のハードルが異常に高いこと。2診察、検査の自己負担が3割で3000円程度(薬含まず)であること。3PCR検査を受ける機会がほとんどないこと、である。陽性の場合にはリストはもっと長くなる。

 発症して苦しい中で病院を探すだけでも数時間かかる。さらに、自家用車でもなければ、公共交通機関を使うか、タクシーで通院することになる。そのリスクとコストは非常に大きい。新型コロナの治療は無料のはずなのに、けっこう費用がかかることで、受診抑制が起きていることが考えられる。また、無料PCR検査所などは「症状のない方のみ」などと矛盾したことを言うので、PCRまでの道のりが遠すぎる。

 さらに言うならば、医療用の薬も不足しているという。コロナ薬だけではなく、咳止め、熱冷ましまでが不足している。医療崩壊である。私は基礎疾患のデパートなので、しばらく外出をすることは控えている。

 政府が「3年ぶりの行動制限のない夏」と言う度に、第6波を大きく超えているパンデミックの只中にありながら、「経済を回す」という名目で国民を見殺しにしていることに立腹する。国民が命をかけて回る「経済」があるのなら、なぜ賃金は増えない?なぜ景気が回復しない?

 行動制限はすべきだ。医療体制を充実させるべきだ。費用の問題も改善するべきだ。そうでなければ、さらに感染が拡がる。

 「無症状者の買い出し、外出を認める」という愚策にはあきれる。孤立した患者の支援もできず、検査もできない。非正規雇用が多く、ブラック企業も多いため、6割の陽性患者が罹患を企業に報告しない。つまり、自宅待機すべき時に、外で働いている。陽性者がすぐ近くにいるという前提で行動しなければならない。

 老人や基礎疾患のある人は外出できない。罹ったら、棄民として死ぬだけだ。恐ろしい思いをしながら、生活している。岸田の無策には鉄槌が必要だ。

以上

クララ

2022年8月29日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?