既存の一般的なやり方を踏襲するのであれば、第一ステージから、業界のレジェンド級の師匠たちに出会えたこともあり、容易く立ち上げられるように思えた。
この時点では、既に固まっている方針に基づき、とにかく事業を進めるという役割で呼ばれたと誤認していたので、実際に、私がこのプロジェクトに参加してから半年程度で、一冊目を発売するスケジュールも組んだ。
しかし、どこに行っても、「どうしたいか」が問われ、選択肢が多いことがわかると、本当にそれでいいのだろうか、という疑問が生まれた。
倉貫さんにも同じ感覚があったのだろう。
下記のとおり共有された。(原文ママ)
以降、業界についての理解が深まるたびに立ち止まり、「出版社として、私たちはどうありたいか」を考え、選択する手法を二転三転させることとなる。
私が事業を立ち上げる時はスピード勝負なことが多く、かつ1人で始めることがほとんどで、当初の方針は早々に決めてしまい、やってみてから固めていたので、時期を遅らせても、自分たちがやりたい方針を見つけていく経験は、固定観念を捨てる絶好の機会となった。
長年培ったブルドーザー的事業推進癖は、自分でコントロールできるものではなく、気を抜くとすぐに先へ進めてしまいたくなるので、私にとって、このプロジェクトは、強力な矯正機能を果たし、自身の思考・行動パータンを増やす機会にもなった。