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第6話:どうやって読者に届けるか

冒頭に書いたとおり、私は、倉貫さんのように著者になったことも、出版事業に関わったことも一切ない。
さらに、本も読まなかったので、Amazonや書店で必要な本を買う以外の購買ルートを知らなかった。Amazonは知人から紹介されたリンクをクリックするだけ、本屋の滞在時間も最低限で、人はどうやって本を知り、どのように購買意欲が発生するかも全くわからなかった。

どうしたものか、と思っていた時、お世話になっている方々が御代田町で立ち上げた「暮らしの中で本を楽しむ」を実践するプロジェクト「みよたBOOKS」で、「本屋という仕事」という課題図書の読書会が開催されるお知らせが届いたので、さっそく参加してみることにした。

読み進めると、独立書店、大型書店、取次、出版社といった業界にまつわる方々が紹介されていて、持ち歩き用にデータに書き起こすほど夢中になった。
恥ずかしながら、読み始めてから気付いたのだが、編者は、梅田蔦屋書店の現役書店員の方だった(当時)。
そこから、書店やブックマーケットを巡ることにハマり、業界の方ともお話する機会が増え、全く名前も知らずにお話していた方や、紹介いただいた方が有名な方だった、といった奇跡が何回も続いていくのだが、長くなるので割愛する。
共通して言えるのは、業界に危機感を感じておられる方が多いのか、ベテランほど、惜しむことなくお力添えいただけること。名乗っていないのに、「新しいことをしようとしている人を応援したい」と、実際に動いていただいた時は本当に驚いた。業界としては厳しい環境なのに、小さな書店や出版社を始める若い人が増えているのは、こういう空気も後押ししているのかもしれない。

こうして、私は、一変して、本をたくさん読む人になり、積読で溢れる家で暮らすようになったのである。

並行して、一般的な書籍の販促の基本も学んだ。
ちょうど、倉貫さんが既存の出版社から出す本「人が増えても速くならない」が発売になったのだ。技術評論社さんは、お忙しいのに、私のような素性の知れない素人が急に他所から入ってきて的外れな質問をしても、親切かつ即レスで教えてくださった。感謝の気持ちでいっぱいなので、技術評論社さんの新刊も貼っておく。

倉貫さんと私が共通してお世話になった翔泳社Biz/Zineの編集長にも、たくさんのことを教えてもらった。なんと、Biz/Zine担当になる前は、書籍営業をされていたらしい。さっそく、「人が増えても速くならない」についての対談記事も企画いただいた。

また、「人が増えても速くならない」の読書会も開催いただき、著者である倉貫さんも呼んでいただく企画もあったので、いくつか同行した。そのうちの一つの主催者の方が、なんと、かつて翔泳社の出版事業の責任者だったことが発覚し、経営視点も含め、広く教わることができた。

ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)読書会

出版社が企画する新刊イベントに参加するだけでなく、自分でも開催してみた。
ご協力いただいたのは、以前からお世話になっている仲山さん、TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISE、スタートアップカフェ関西、関西大学、梅田 蔦屋書店の皆様。
試行錯誤する経験を積めたことはもちろん、私が本を読むきっかけになった「本屋という仕事」の編者である三砂さん、同著でも紹介されている梅田蔦屋書店店長で、出版社もされている北田さんとお話する機会を頂けたのである。

TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISE 関西大学梅田キャンパスにて

あまりにも立て続けに、嬉しい偶然が続くので、この頃には、すっかり、「そんなことあります!?」が口癖になってしまった。
ISBNの申請と同じくらいのタイミングで、師匠から「本気度を見えるようにする意味でも自社サイトは早く作っておいた方がいい」と言われ、サイトは世に出していたのだが、少し冷静になった今では、たくさんの方の協力が得られたのは、これも大きかったのではないか、と感じている。

こうして出会った方々にご相談できたことで、「出版社として、私たちはどうありたいか」がより具体化した。

そして、ついに、私たちは、初めからトランスビュー方式を取らず、自社サイトと応援してくださる書店様での直取引だけで販売を始める腹を括ったのである。
それだったらISBN出版者記号を振らなくてはいいのではないか、という議論も何度かあったのだが、次の段階でAmazonのe託を導入、トランスビュー方式での流通、さらにその先、と考えると、「尖っているのにオフィシャル」が私たちらしい、と決めた。

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