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悲壮感と使命感と危機感、リーダーの姿勢

リーダーが悲壮感を持って働いていると組織は崩壊してしまうんじゃないか。そんな話をしました。

悲壮感と使命感には付いていけない

ベンチャー企業を起業した社長なんかは、めちゃくちゃ働く。働き方改革なんて遥か宇宙の出来事のように一切関係がない。睡眠時間を削り、家族との時間も削り、一心不乱に働く。大変な出来事やトラブルに見舞われた自分を鼓舞しながら働いています。

もしくは、社会的な意義を掲げていたりして、社会を変えるために、世の中の誰かを助けるために、そんな風に使命感を持って仕事をするのは、本人にとっては非常に強い動機づけになるけれど、その使命感に支配されてしまって働くこともあります。

それは本人が良いのなら、その本人だけは良いんですが、もし悲壮感を漂わせて働いているとしたら、その様子を見ながら働く周りの人からすると、けっこう難儀なことです。

逆境の中で、辛いけれど頑張っている姿を見せられることで、最初のうちは自分も頑張ろうとは思うかもしれないけれど、限度を超えると付いていけないと思ってしまいます。

悲壮感は人を酔わせます。そんなにしてまで働く自分はかっこいいと思うようになってきます。そのうちに、そうして悲壮感を持って働くことを周りにも求めるようになりかねません。酔ってる本人は良くても、周りからするといい迷惑です。

使命感を持って働くリーダーの姿は一見かっこいいけれど、すべてを犠牲にして取り組む様子を見せられると、自分だったらそこまでは出来ないと思ってしまいます。

使命感を持って事業に取り組むこと、使命感が起業のきっかけとなるのは良いですが、他人に押し付けるのは無理があります。よく「ミッションの浸透」や「ミッションの共有」って言いますが、人の使命感というのは外発的に植え付けるものではないでしょう。

ワーカホリックなのは結構ですが、仕事が好きで楽しくてやっているのなら、楽しそうにしていて欲しいものです。

外部から与えられた危機感は危うい

また、危機感も外発的には与えられないものです。前回の記事で「あと10年はやく動くべきだった」と話していた40代の方も、もっと早くに危機感を持っていれば、若いうちからキャリアを考えたりすることもあったでしょう。

だからといって、その危機感は他人から与えられるものではありません。もし他人から危機感を与えてきたとしたら、あなたのことをコントロールしようとしているかもしれません。それが善意でならまだいいですが、悪意を持っていたら大変です。

「いま勉強しておかないと将来に苦労するよ」というのは善意からでしょう。しかし「いまのうちに、この投資をしておかないと大変ですよ」という危機感を煽って詐欺を働くこともあるかもしれない。利害のある見知らぬ人からの危機感の押しつけは気をつけたほうがいいでしょう。

外部から与えられるまでもなく、自分自身で将来や今のことを考えて危機感を持つことで、冷静に自分の頭で考えることが大事です。

尊敬する経営者の方たちを見ていると、外からはとても順調に見える会社でも、常に危機感を持ってらっしゃる方が多いです。危機感とはリスク管理能力のトリガーです。危機感だけで慌てずに、そのリスクをどう対処していくか考えているのです。

安心せずに危機感を持ちつつも、余裕を失わない。人生をかけるだけの使命感を持ちつつも、焦らない。そうありたいものです。

希望への共感こそがモチベーション

危機感や悲壮感で人をコントロールせずに、どうやって一緒に働く人をモチベートすればいいのでしょうか。

私が社外取締役をさせてもらっているクラシコムのビジョンは「自由」「平和」「希望」です。このビジョン、私も大好きです。

この中でも、特に重要なのが「希望」だと、社長の青木さんが何かの取材で答えておられました。

私も、人は希望がある状態だからこそ前向きに働けるし、生きていけるものだと考えています。生きていても、この先に何もないし、成長することもないとなったら、それは絶望です。絶望は人の歩みをとめます。

経営をしていく上で気をつけているのは、いつも働いている皆が希望がある、と感じてもらえるようにすること、とも仰ってました。私も同感です。希望が感じられることがもっとも、人をつなぎとめるものになると思います。

離職率を下げるために、なんでもかんでも働きやすさを重視するとか、高い報酬で働きがいを生み出そうとしても、そこに希望がなければ実りはないでしょう。

個人にとっての希望とは、なにも報酬だけではありません。むしろ報酬だけを指標だと考えると、すぐに限界がきます。報酬も大事ですが、それよりも個人としての成長の機会があるかどうか、ではないでしょうか。そのための仕組みを組織に組み込むことが大事です。(ソニックガーデンではYWTをしています。)

会社として新規事業に取り組むのも、きっかけは危機感からかもしれないけれど、それに取り組むことで、どんな未来があるのかということを語ることができるようになれば、それは希望になります。

希望を語るときに数字だけでは伝わりません。売上を今の10倍にする、というのはビジョンではありません。それでは希望は感じられません。最近の言葉で言うなら「ナラティブ」を語るしかないのです。

自分自身のナラティブを伝えて、共感してもらうことでしか、人の心は動かせません。そして、共感した本人も、自分自身のナラティブにすることで本当の内発的なモチベーションとなるでしょう。

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質問)「ザッソウ」という本を出した経緯を知りたい

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