見出し画像

【エビ】映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングルの魅力を語る【ピラフ】

※この文章は2019年2月頃、鬱で文章が書けなくなった私がリハビリとして書いたものになります。余りに酷い誤字脱字以外は直していないので、拙いですがご容赦ください。
※「嵐を呼ぶジャングル」は頭を空っぽにして笑えるお下劣なネタやくだらないギャグが満載の「コメディ映画」です。が、それは他のクレしん映画も同じなのでここではあえてその要素については触れておりません。ご容赦ください。
※公開にあたりTwitter上でアンケートを実施したところ、ふざけて選択肢に入れた「エビピラフ」が一番得票数を集めてしまったため、映画とは全く関係ありませんが私がエビピラフを作る様子も並行して掲載します。ご容赦ください。


ふざけるのも大概にしよう(自戒)


君は、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』を知っているか?

私はこの映画が好きだ。
子供時代も含めると、少なくカウントしても10回は観ていると思う。

世間一般にクレしん映画といえば、なぜかみんな大好きな『オトナ帝国』や『戦国大合戦』、少し知ってる人で『ヘンダーランド』といったところだろうか。

それらに比べると確かに知名度では格段に劣るこの映画だが、実はこの作品、元々クレヨンしんちゃん映画の最後の作品になる予定だったこともあり思い切った展開や有名映画のオマージュなど、今見ても存分に楽しめる魅力が詰まっている。

豪華客船の中でアクション仮面映画の試写を観る、というどう考えてもコスパの悪いツアーにかすかべ防衛隊のメンバーと共に参加中、船に乗っていた大人達が全員シロテナガザルの大群に連れ去られる、と、なんともショッキングなストーリーに加え、最終的に巨大な小林幸子が登場し謎のパワーで全てを収める(?)というクレしん映画史上ダントツで訳の分からないラストを兼ね備えたシュールで最高の映画だ。(早口になるオタク)

喋りたいことは山ほどあるのだが、細部までネタバレすると逆に布教にならないので私の好きなポイントを大きく二つにわけて紹介していく。

「大人」とは何かを考えながら観る『嵐を呼ぶジャングル』

画像9


いきなりメインのテーマとは関係のない着眼点で申し訳ないのだが、私はこれに気がついてからこの映画のことを何倍も好きになったので是非皆さんにもこの構図を頭に入れて観てみてほしいので書く。

この作品の中には随所に「守るものがあると人間は強くなれる」という構図が現れていると思うのだ。

長いので、この文章の中では「守るものがある人間」を「大人」と表現する。


この構図は、幼児退行させられたひろしが家族の記憶を取り戻すことで「大人」に戻る様が描かれた「オトナ帝国」にも見ることができるが、あの映画はそもそも子供になってしまった理由が洗脳なので個人的には「ジャングル」の方が自然に感じて好きだ。

では、「ジャングル」で描かれる大人像とは具体的にはどんなものか。
先ほど書いた粗筋はやや粗すぎたので、もう少し詳しくストーリーを追いながら説明しよう。


本作の最初の舞台は豪華客船。かすかべ防衛隊のメンバーとその家族は船上で行われるアクション仮面の新作映画試写会に参加していた。

そんな中、突然現れた猿軍団により大人が全員誘拐されてしまう。

船内に取り残された子供たちは、自分を守ってくれる存在である大人(保護者)がいなくなったことを不安がり、途方にくれたり泣き出したりする。

が、主人公のしんのすけに限っては他の子供たちと異なる点があった。

画像10


それは、まだ赤ん坊である妹のひまわりと犬のシロも一緒に船の中に取り残されていた、という点だ。
守るべきものがあるしんのすけは、他の子供たちとは違い船内で唯一の「大人」と呼べる存在である。

そんな「大人」であるしんのすけの提案により、かすかべ防衛隊の5人はジェットスキーで親達が連れていかれた島へ捜索に向かう。

(ちなみにこの時、かすかべ防衛隊のメンバーは初めは危険だと反対するのだが、その後1番最初にしんのすけについて行くと言い出したのは元々保護者が乗船していなかったボーちゃんである)


島に到着してからの彼らは「誰が隊長か揉めて結局みんな隊長になる」くだりにも現れている通り、誰かが特出して「大人」「子供」になることもなくふつうの対等な仲間として行動する。言い換えれば、全員が全員を守ろうと思っているという風にも受け取れる。

画像11

さて、しんのすけ達を見送り、今度は自らが犬のシロを守る「大人」になった赤ん坊ひまわりは、結局なかなか戻らないしんのすけたちを追って島へと向かう決心をする。

(船にはひまわりより年長の子供たちが何人もいるわけだが、彼らはひまわりとは特に面識もなく「守る義務」がないので、ひまわりにとっての「大人」とは呼べないのだ)

赤ん坊ながら海も山も勇敢に乗り越えてきたひまわりだったが、いざ島でしんのすけ達の元に辿り着くと、プツリと糸が切れたように大泣きしだす。
ここでまた、「大人」のしんのすけと「子供」のひまわりという構図が戻ってくる。


その後、かすかべ防衛隊の一行は親たちをさらった猿の大群に襲われさらわれてしまうのだが、ひまわりの親として振舞っていたしんのすけだけが見逃される。

このシーン、猿は言葉を話さないので解釈が難しいが、
実は黒幕に操られ本人たちには守るもののない猿たちが本能的に守るものがある、大人であるしんのすけを「自分たちより格上の存在」と判断し、襲うべきではないと判断した結果の行動ではないだろうか。

画像11

一方その頃、島で猿達の指示のもと強制労働させられていたひろしやみさえは、船内にいた時と比べて感情表現がかなり激しくなっているように感じる。

怒ったり、泣いたり、子供が近くにいたら情けなくてできないような振る舞いをするのだ。

もちろん極限状態で働かされているというのも気性が荒くなる原因の一つだとは思うが、彼らを助けに来たしんのすけとひまわりの姿を確認してからはかなり正気に戻った感じがするので、
やはり身近に"守るもの"が無くなったことにより精神年齢が低下していたのではないかと考える。

遂に合流した野原一家は、サルたちを倒し黒幕の元へと向かうのだが、ここから先の話はこの映画のもう一つの魅力ポイントを語ってからしたいと思う。

ヒーロー映画としての『嵐を呼ぶジャングル』

画像11

前述の通り、この映画はしんのすけが愛してやまない特撮ヒーロー「アクション仮面」がキッカケとなり展開していく物語で、当然だが彼もこの映画でメイン級の活躍を見せることになる。


まず第一に、これを言っては仕方がないのだが「アクション仮面」およびその中の人「郷剛太郎」はクレヨンしんちゃんに登場する中でもかなり私が贔屓にしているキャラクターの一人だ。

アニメオリジナルの話で、みさえが友人の同人誌制作のアシスタントに呼ばれ、
完成した本を持ってコミケに行き売り子を務めている間にしんのすけがゲストで来ていたアクション仮面に偶然遭遇するという回(何それ?)があるのだが、
私はその回が収録されたDVDまで所持しているレベルのファンだ。

その際、アクション仮面(郷剛太郎)は以前ヒーローショーで一度会っただけのしんのすけを一目見るなり「おや、しんのすけくんじゃないか」とすぐに声をかける。この神対応にオタクはイチコロである。

いや、実際しんのすけが一度会った人にすぐ覚えられるのは割とよくある話なのだが(変な子供なので)、
大抵の大人が彼を見て発する声は『ゲッ』とか『出たな』とか、到底5歳児に向けるには相応しくないものが多い。

私が思うに、クレしん世界で『おや』と穏やかに声をかけてくる大人はアクション仮面か園長先生くらいな気がする。知らんけど。

画像11

話を映画に戻そう。

本作では、そんなアクション仮面が物語の鍵を握る。
しんのすけ達かすかべ防衛隊とその家族と同じく、
彼もまた舞台挨拶などイベントに出席するため豪華客船に乗り合わせていたのだ。

映画の上映前にもまた、声を掛けにきたしんのすけに「やあ、しんのすけくん、しばらく。」と爽やかに応じる。
主演なのに、劇場前方の通路側という変な席に座っているのも良い。

原作ファンなので全く気にならなかったが、最近一緒に観た友人はアクション仮面がしんのすけと当たり前のように知り合いなことに首をかしげていた。それくらい彼の対応は自然なのだ。


そんな彼がこの映画でどのような活躍をするか、簡単に説明する。

実は「アクション仮面」自体は劇場版第1作の「ハイグレ魔王」にも4作目の「ヘンダーランド」にも、13作目「3分ポッキリ」にも出演している。

しかし、これらの作品におけるアクション仮面はいずれも本当にスーパーパワーが使える本物のアクション仮面として描かれている(これが結構難しい)。


一方「嵐を呼ぶジャングル」に登場するアクション仮面は、前述のコミケにいたアクション仮面と同じで、いち俳優が演じるただのキャラクターにすぎない。アクション仮面ではなく、郷剛太郎として出演しているのだ。

そんなただの特撮俳優である郷剛太郎が、自分とともに攫われた野原一家をはじめとする乗船者達を命がけで「お助け」することによって『本物のヒーロー』になるまでを描いた、めちゃくちゃアツい「ヒーロー誕生譚」なのである。


つまり、この映画はタイトルこそ『嵐を呼ぶジャングル』だが、実質の内容は『郷剛太郎VSパラダイスキング』といても過言ではない。

画像11


そうそう。本作のヴィランであるパラダイスキングも、子供向け映画の敵役としてかなり良いキャラクターだと思う。

私が「映画クレヨンしんちゃん」シリーズを好きな理由のひとつに、
「シンプルな敵」というのがある。

クレしん映画に出てくる「人間のヴィラン」はやってる事のスケールに比べて動機が小さい事が多い。
もちろん全ての映画に当てはまる訳では無いが、「風呂が嫌いすぎて」とか「妻子にぞんざいに扱われたショックで」みたいな理由で人類の存続が危ぶまれたりするので、映画の終盤で「そんな事だったんかい…」と拍子抜けする事が結構ある。

しかし、これは『自分にとっては大したことなくても、相手にとっては大事かもしれない』という教訓もはらんでおり子供向けの作品として素晴らしいし、味方側も反省するところは反省して終わるので後味も良い。


パラダイスキングも、派手な見た目に反して「人間の奴隷が欲しくなったから」という動機で人々をさらい、アクション仮面を狙う理由も「子供達のヒーローを倒すことで自分の強さを印象づけるため」と非常にシンプルだ。

シンプルだが、その理不尽で身勝手な行動そのものがこの男の狂気を物語っていると言えよう。

画像12

個人的に魅力的だと感じる悪役像が2種類ある。

1つ目は、あくまでその人なりの正義を突き詰めた結果たまたま倫理的に「悪」とみなされる側になってしまった、という生い立ちの敵。

病名にもなった「ダーティーハリー」のハリーや、「タクシードライバー」のトラビス、私が大好きなアメコミ「ウォッチメン」におけるオジマンディアスもそのパターンだと思う。

これらの悪役は、彼らの信じる「正義」がきちんと描かれるために「悪」になった経緯が分かりやすく、共感を得やすい。

二つ目は、全く根拠もなければ生い立ちも何もかもよく分からない、怪物に近い存在の悪。
「ダークナイト」のジョーカーが正にそれ(というかダークナイト以外の映画でこの手のキャラクターが出てくるのはホラーばかりなので割愛)で、「何を考えているかわからない」点に恐怖を感じるのだ。

ホラー映画でも、お化けのルックスや能力、思想、どこから出てくるか…などがわからない方が不安だし怖いと思う。

画像11

パラダイスキングは、前者の無邪気に自分の正義を追い求めるヴィラン、というものにも当てはまるし、後者の素性のわからない怖さも兼ね備えている(現に88分あるこの映画で、黒幕である彼の正体が明かされるのは映画開始から50分ほど経過してからである)。

「強さこそ正義」という彼の信念を極めた結果、と言わんばかりの小細工なしのわかりやすい"悪"。それがまた人間臭くて良い。

また、クレしん映画はゲスト声優を出す兼ね合いや味方になるキャラクターとの人数合わせで敵が大人数で一人一人キャラが立った組織であることが多い。
これはこれで楽しいのだが、作品によっては散らかって感じてしまう。


その点、パラダイスキングは無人島に猿の王として君臨する「単体」の敵。
武器もジャングルで鍛えた肉体とダイナマイトのみ。
この潔さこそが、アクション仮面との格闘のかっこよさを引き立てるのである。

画像5

そんなパラダイスキングといよいよ戦うことになったアクション仮面。

戦う直前までアクション仮面は実在しない、自分はただの「俳優」であるとを主張していた郷剛太郎だったが、人質に取られたかすかべ防衛隊の子供たちを目にし戦う決意を決める。


第一ラウンドは小細工なしのゴリゴリの肉弾戦なのだが、このシーンの作画が本当に最高なので要チェックだ。

パラダイスキングの奔放な戦い方に圧倒され、一時は崩れたアクション仮面。

もうダメかと思われた彼を支えたのは、他でもない観客からの声援であった。
猿を倒し集まった大人たちが、自分の子供が観ている『特撮ヒーロー』のアクション仮面に向かって全力で声援を投げかける姿は胸を打つものがある。

ここは、観客の応援によって強くなるという「子供向け特撮映画あるある」を逆手に取ったメタ的な面白さと、そんなフィクションのあるあるを現実にすることによってアクション仮面が『本物のヒーロー』に昇華する、というカタルシスが共存するまさに名シーンだ。

大人たちの『声』が力となり、真の意味で「大人の代表(=守る側、ヒーロー)」になったアクション仮面。

そんな彼との戦いに一時は敗れたと思われたパラダイスキングだったが、彼はまた凶悪さを増してしんのすけ達の元に帰ってくるのだった。。。

と、唐突だがここでこの映画の紹介は以上とする。

ステージを格闘場から空中に移しての最終決戦は、画のかっこよさやコミカルな面白さ、映画のオマージュに伏線回収もありとても見応えがあるのでここから先は是非自分の目で確かめてほしい。

画像6

ここから蛇足。(2020年4月追記)

上の方で今作を『ヒーロー誕生譚』と表現したが、クレしん映画にはそのように、大人になってから見るとこんな深い描き方をされていたのか、というものが結構ある。


そんな中からぜひ見て欲しいおすすめをふたつ。

本作で初登場となる妹のひまわりと共に苦難を乗り越え、一人っ子だったしんのすけが「兄」になる様を描いた『暗黒タマタマ大追跡』

クレしんアニメ史上初めて明確な「死」が描かれ、父であり夫であるひろしの姿を色濃く描いた『ロボとーちゃん』

この二本だ。

なかなか外に出られない日も続くが、クレしん作品は全作Amazon prime videoにあるし何作目から見ても特に問題はない(初見に優しいのがクレしんの特徴でもある)ので、ぜひ家で見て、笑って、免疫をつけて欲しい。

また劇場でクレヨンしんちゃんが観れるその日まで、
ユルリユルユルお元気で。

画像10

エビピラフの感想

材料を全く量らず勘で作ったらパラパラ感が出なかった。
料理はレシピを見て作ろう。



文、料理:倉持リネン

オラに現金を分けてくれ〜!