完成!リバーシブルの桜染の御朱印帳。魅力と製作過程を語りつくしました。
古くから日本で愛される「桜」。
私たち蔵前天文堂の拠点地、台東区の木です。
神社や寺院へおまいりをすると凛とした気持ちになります。桜の花言葉に「精神の美」があり、通ずるものを感じます。また神社仏閣へ合格祈願に訪れる人も多く「サクラサク」の知らせを待ち望みますよね。桜は御朱印帳のモチーフにもちいるのにぴったりだと気がつきました。
桜の御朱印帳をつくりたい。
このひらめきから生まれた、桜染の御朱印帳 「桜のハーモニー」が発売になりました 。
ふたつのピンクは桜の草木染めで彩られています。
私たちの御朱印帳にぴったりの「桜」を考えた時、手間暇を惜しまない製法と昔からあるものをスタイリッシュに表現できる草木染めの魅力にたどり着きました。
化学染料を使わず、本物の桜を使って可憐なピンクに染め上げられています。蔵前天文堂だけの桜色です。
どちらのピンクも主役級の可愛らしさなので、両方とも表紙にした御朱印帳を作りました。お好きな方から使えるリバーシブル!この仕様、なかなか無いのではないでしょうか? 横から見ても可愛いです。
もちろん、本文用紙はこだわりぬいたオリジナル越前和紙「墨麗」。機能的でスタイリッシュな「ジュエルカット」も施しています。
草木染め(桜染)によるふたつのピンク
桜染を手がけたのは私たちと同じ蔵前にある「Maito Design Works」※さん。
マイトデザインワークスさんのこのコンセプトに共感しつつ、アトリエを訪れました。
「ほんとうの桜色」に染めあげる
桜の天然染料はベージュやオレンジの要素が多く含まれていて、私たちが想像する「桜色」に染め上げるには、ピンク色だけを取り出す技術が注がれています。人の目と手、そして時間をかけて生まれた「ほんとうの桜色」は、美と技の共演で生まれる色なのです!
桜の花びらを集めて染色するのを想像していましたが、主に枝から抽出するのだそう。お花見で愛でられるのは花や蕾ですが、その土台となる枝や幹が美しい色を蓄えているのですね。
桜を使ったサンプル作成を依頼した際には、4色に染め分けてくださいました。濃淡だけでなく、色の変化までつけることができるのかと驚きました。天然染料について常に探求を続けているからこそできる技術!
マイトデザインワークスさんは化学染料を使わない、自然にもヒトにも優しい草木染めを手がけています。手作業での染色は化学染料を使用したものにくらべ、何倍もの時間や工程数をかけ染め上げられています。
小室代表にインタビューしてみました。
Q. 桜の種類
A. 染井吉野や山桜を主に使用します。
今回は2月に剪定した山桜を使用して染めています。
Q. 桜の使用量(10m染め上げるのに必要な量)
A. 毎年、色素の量が異なりますので必要な量が変わります。
10mですと約3-4kg分は必要になります。
Q. 必要な工程
A. 花の咲く前の蕾がついた小枝を用いて染めます。
細かく切った後によく洗い、水にこだわって2-3週間ほどかけて色をとりだします。とりだした染液を熟成することで赤みが強くなります。
染めでは生地をよくした処理をし、アルミで媒染して染めます。
毎回色合いの異なる桜染なので一枚ずつ色を確認しながら染め上げます。
Q. 色の濃淡のつけ方
(染料の量や付け置く時間で変わるのですか?)
A. 染料の濃さや回数によって染め分けました。
勝手のわからない私たちに、朗らかに草木染めについてお話してくださいました。おなじ蔵前の街で第一線でものづくりをしている人たち。とても刺激になりました。
※<Maito Design Works>
自身も職人である小室 真以人氏が代表をつとめる、天然染色(草木染め)製品・ニット製品の企画販売を手がける工房。2010年にカチクラの中心地でもある2k540に直営店をオープン。福岡・大阪に工場、蔵前にアトリエショップがあります。化学染料を使わずに染めあげた自社ブランド商品の他に、多数ブランドとのコラボレーションを手がけながら、ワークショップで草木染め教室を開催し、蔵前の街でものづくり体験の扉を開いています。
撫でたくなる手触り綿100%
織り柄にそって染まり方に陰影がつき、さりげないアクセントとなっています。布のサンプルをたくさん集め、企画部みんなで撫でて手触りを確かめたり、表紙に仕立ててみてスタイリッシュさを見比べてみたり。そして一番最初にいいね〜!と満場一致したこの布が最後まで残り、今回の表紙に選ばれたのでした。
趣の異なる二つの箔押し
そして表紙のデザインですが、表にも裏にも箔押しをあしらいました。
濃い色のデザインは、桜の華やかさや可愛らしさをイメージ。満開の桜の、晴れ晴れとした様子が思い浮かびます。ツヤの無いマットな金箔押しなので、ラグジュアリーできらびやかでありつつ、派手すぎません。
淡い色のデザインは、ひらひらと可憐に舞う、儚げな美しさをイメージしています。ハートになった花びらが隠れポイント!同じツヤの無いマットな箔押しですが、こちらは銀箔です。上品でさりげない輝きになりました。
桜染の生地の良さを引き立てつつ、素敵なデザインにしたくて線画にしました。桜の繊細さが表現できたかな…と思います。葉っぱなどのベタ(塗りつぶし)の部分と、線の部分のバランスで、箔押しのキラキラとした輝きが活きるデザインになっています。
「桜のハーモニー」誕生
全てが完成し、最後に商品名の会議を行いました。「名は体を表す」という通り、商品名は商品の顔でもあるので、熟考を重ねます。
例えば「桜」「さくら」「サクラ」と、漢字・平仮名・カタカナでも印象が違いますよね。ああでも無いこうでも無い、やっぱりこっちが良いかな…と検討する日々。候補に出た数、実に約100案!
その中から、伝わりやすい「桜」と思いを込めた「ハーモニー」を組み合わせ「桜のハーモニー」と名付けました。
「ハーモニー」は調和、諧調。いくつかの組み合わせなどから生じる、気持の良い調べを意味します。
二つの桜色のハーモニー、二つのデザインのハーモニー、私たちとマイトデザインワークスさんのハーモニー…。
今年剪定した桜の枝ということもあり、一期一会の「桜色」です。すべての巡り合わせが、素敵なハーモニーを作り出しました。
最後に
蔵前天文堂は伝統的な手作業の品にスタイリッシュなデザインをほどこし、暮らしを彩るものづくりをめざしています。今回の「桜のハーモニー」も、草木染め、製本ともにたくさんの技術とこだわりがつまった逸品となりました。是非お手にとっていただけたら幸いです。
みなさんのお願い事が花開きますように。おまいりが晴々としたものとなりますように。
思わず熱く語ってしまった製作秘話。
長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。
蔵前天文堂(スタッフA・スタッフB)
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