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飼い主の健康とペットの寿命

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お互いの幸せのために
 T夫妻は庭の犬小屋で飼っている雑種の愛犬ジローが老いて散歩にも行けなくなり、もう犬を飼うまいと決めました。二人とも七十代半ばを超え、次の元気な犬を飼っても世話ができないからです。若いときならともかく、こうなると笑い事では済まない。それに自分たちより犬が長生きしても困るだろうと考えました。

それに先の心配より今のジローの問題です。三年前に車を手放したのでジローの具合が悪くなると、隣町に住む娘に動物病院への送迎を頼むことになります。これが度重なると娘もいい顔をしません。老犬介護で自分たちがのんびりする暇もないと近所の人に話しています。

 時代の流れなのか、一般社団法人ペットフード協会によると、二〇一五年の犬の飼育頭数は二〇一二年より減少傾向にあるそうです。また犬種も小型化し社団法人ジャパンケンネルクラブの登録数をみると1位はプードル、2位チワワ、3位ダックスフンド、次にポメラニアン、ヨークシャー・テリア、柴と続きます。

 小型犬なら問題ないかというと、次のような例もあります。
 一戸建ての家で五匹の小型犬を飼っていたひとり暮らしの八十代の女性Wさんの場合は、体調を崩し、犬の世話ができなくなりました。介護保険で犬の世話はしてもらえません。というより、犬が走り回り、糞の始末もまともにしないので家の中はひどい状態で悪臭がします。

Wさんは慣れて平気ですが近所からは苦情も出ています。訪れたヘルパーはいくら仕事でもこのにおいに耐えられないと帰ってしまいます。何人もが仕事を辞退し、仕方なくケアマネージャーが訪れ、犬を手放すことを提案します。Wさんは自分の子どものようなものなのに、どこかにやるなんてとんでもないと怒鳴ります。それでは、このような衛生状態では犬にもWさんにもよくないから、掃除の業者を頼んで一度きれいにしませんかと提案しても、そのあいだにこの子たちには行くところがないと突っぱねます。

 夏になりひどくなる悪臭に困り果てた隣人が、動物虐待ではないかと市役所に相談したことがきっかけで、事態は急転しました。

 遠方に住む息子が現れてWさんを病院に入院させ、犬を車に乗せて連れて行きました。家も間もなく取り壊され、空き地になりました。

 ぬいぐるみや犬のロボットなら餌も要らず手がかかりませんが、生き物は世話が必要です。それが生きがいにもなりますが、逆に負担になることもあります。T夫妻のように先のことを考えておくことがペットのためにも必要かもしれません。

『転ばぬ先の「老前整理」』2016年 東京新聞より 

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