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ピアノの調律

3年ぶりにピアノの調律をしました。子どもが家を出てからは、弾くこともなくなり、ほったらかしにしていました。しかし子どもが帰省するごとにいつ調律するのかと言うので、やっとお願いしました。

ウチのピアノは、もう30年になりますが、まったく古くさくはないです。アコースティック楽器の良さは時とともに味が出ると言うところでしょうか。あの時、電子ピアノにしなくて良かったなぁと思います。電子ピアノだったら陳腐化していることでしょう。

そもそも当時私は電子ピアノの設計をしていました。既に次のモデルの開発をしていて新商品を知っていたので、現行商品を買う気にはなれませんでした。だから奮発してアコースティックピアノを買いました。

会社には調律師の学校がありました。電子ピアノの設計にあたり、私は調律師の学校で調律の体験をすることになりました。

ピアノの弦は1音あたり、2本から3本あります(低音部は1本)。チューニングハンマーと呼ばれるピアノの弦を締めたり緩めたりするための専用の工具を使って、音程を合わせていきます。

最初に真ん中のラの音を、音叉を使って合わせます。3本の弦のうち2本にフェルトを挟んで音が出ないようにして、1本の弦を音叉に合わせます。チューニングハンマーをチューニングピンに差し込んで準備をし、音叉を叩いて鳴らし、チューニングハンマーを少しずつ動かしながら音叉の音に合わせます。ポイントはビート(うなり)を無くすようにチューニングハンマーを動かすのです。

調律はピアノ専用のチューニングメーターで合わせることもできるのですが、調律の先生からはビートで合わせるのが良いと教えられました。

ビート(うなり)とはWikipediaにはこう書かれています。

物理学におけるうなり(英語: beat)とは、振動数(または周波数)がわずかに異なる2つの波が干渉して、振幅がゆっくり周期的に変わる合成波を生ずる現象を言う。

Wikipedia

1本の弦が合ったら、ラの音の別の弦を止めていたフェルトを外し、音叉に合わせた弦の音に合わせていきます。うなりが無くなるように、ゆっくりゆっくりチューニングハンマーを動かします。最後に3番目の弦のフェルトを外し同じようにうなりが無くなるように合わせていきます。これでやっと1音の調律ができました。次はオクターブ違うラの音をオクターブを弾きながら合わせていきます。他の音は4度や5度で合わせていったと思います。これを88鍵行います。

調律で難しいのはチューニングピンがなかなかしっかり止められないということです。チューニングハンマーを動かして音程が合っても、弾いているとすぐに弦が緩んで音程がずれてしまうのです。調律の先生が調律すると、弦はしっかり止まっていて音程はずれません。経験がものを言います。

ウチのピアノは2年前までは毎年年1回調律をしてきましたので、計算すると既に45万円ぐらいかかっています。電子ピアノは調律がいらないので維持費がかからなくて良いという人もいますが、維持費がかかるけれどアコースティックピアノは資産ですね。

調律は音程を合わせるだけでなく、整調と言って、アクションの動きを調整したり、整音と言って音色を整えたりもします。弱音ペダルのフェルトを交換したり、弦のサビを落としたり、細かいメンテナンスをしてくれます。2時間かけて調律してくれましたが、15,000円は安すぎると思いました。


調律師の映画があります。宮下奈都さんの原作の『羊と鋼の森』です。これはなかなか良い映画です。調律師役が山﨑賢人さん、ふたごの姉妹役が、上白石萌音さん、上白石萌歌さん。山﨑さんが味のある芝居をしています。調律師って一見地味な仕事ですが、とても感性豊かな仕事だと感じました。タイトルの羊はピアノの弦を叩くハンマーのフェルト、鋼はピアノの弦です。ピアノの中は羊と鋼の森なのです。


さて、ウチに来た調律師さんのお父さんは、70代になってからピアノを初めたそうです。5年も続けていて今も楽しんでいます。ボケ防止にも効いていると言います。

調律師さんが帰ってから、私も調律が終わったピアノを久しぶりに弾いてみました。指がもつれてなかなか弾けなかったけれど、やっぱり楽しいですね。またピアノやってみようかな。

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