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そこにしかない自然と【増田さん、山崎さん・麒麟山酒造】

1. ジブリの世界

私はその日、初めて津川を訪れた。新潟駅から電車で1時間半ほどの場所にあり、トンネルを抜けるとそこは、大げさではなくジブリの世界だった。私のおばあちゃんちよりも田舎で、どっしりとした山に囲まれていて、昭和にタイムスリップしたかのような気持ちになるとともに、自然というものの尊さをしみじみと感じた。人は、心を奪われるほどの光景を目にしたとき、写真を撮ろうとはしないのだと気が付いた。思い出として写真に残しておこうという理性的な思考が、感動によって埋没させられるのだ。これまで大自然を目にしたことのなかった私にとって、それはまさに圧巻だった。

麒麟山と月(写真提供・山崎さん)

2. ここにしかない。ここでしかできない。

私が取材させていただいたのは、奥阿賀にて1843年創業、新潟を代表する淡麗辛口の蔵元である麒麟山酒造 に勤める増田さんと山崎さん。(写真左が増田さん、右が山崎さん)

初めに、日本酒メーカーでの就職を希望した理由を伺うと、お二人ともというもの自体に惹かれて、この企業を希望したとのことである。しかし、ただお酒が好きなだけではなく、増田さんの実家が酒屋さんであったり、被災時に麒麟山酒造から支援を受けた経験であったり、様々な場面での「酒」との縁によって、この麒麟山酒造という企業を選択したのだ。

また、山崎さんは「ここ麒麟山酒造では、全商品地元のものだけを使って作られている。これは、他にはない大きな魅力と強みです。」として、麒麟山酒造で作られるお酒はここ津川でしか作れないし、ここにしかない雄大な自然を十二分に生かしたものなのだと話してくれた。そのうえで増田さんは、「ここで暮らして、自然の豊かさと狭いコミュニティだからこその人の輪の良さを知った」という。私は、麒麟山酒造があるからここに住み、次にその地域の魅力を知るという筋道なのだと気付いた。

たしかにここはすごく自然が豊かで独特な魅力のある地域だと思った。しかし、やはりどうしても聞きたかったことがある。それは「田舎での暮らしは、不便ですか?」である。すると、お二人とも「すごく不便!」と答えた。しかし、「不便だけど、不便に勝るものがある。空気もきれいだし、人の温かみも感じられる。」とも話した。
 

3. 自分の暮らしは自分で決める

就職するにあたって、東京や横浜のような大都会での暮らしを夢見る人はすごく多いと思う。実際に私も、都会でバリバリ働くキャリアウーマンはすごくかっこよくて憧れていた。しかし、このインタビューを通して、どちらで働いても一長一短で、最終的には、自分にどのような暮らしが合うのかをよく考えなければならないのだと感じた。

私たちがどのように仕事を選んでいけばいいのかと聞くと、「給料や立地よりも、好きや興味で決めたほうがいいと思うよ。」と山崎さん。ただ、好きだからと言ってプライベートと仕事の境目が曖昧になるのは良くないとして、「やりたいことを見つけてどんどんチャレンジすることで仕事以外の時間を使い、メリハリのある生活をつくることが大事だ」と優しい笑顔で付け加えた。自分の暮らしや生きる軸が整っていると、充足感のある日々を送れるのだなと強く感じ、自分の暮らしは自分で決める、自分で整えるということがどれだけ大切なのかを知った。

そして、そこにあるものを大切にする考え方も日々を生活する上で重要なカギになるのだと学んだ。生活の中で、「もっともっと!」と貪欲になったり、過去に後ろ髪を引かれてマイナスな気持ちになったり、心のベクトルがマイナスに向くこともある。しかし、今自分の持っているもので十分幸せだと思えるような心の余裕を、お二人の話す言葉だけでなく雰囲気や表情からも強く感じられた。「これからの自分はどうしたいのか」を考えることは言うまでもなく大切なことであるが、生き急がずにゆったりと“生活”を捉えることも大切なのだ。

4. 最後に

私は今、大学1年生で、何になりたいか、何をしたいのかが、自分でもよくわからない。でも、それでもいっか、と思えるようになった。私はこれまで、できる限り早くに目標を決めて、それに向かっていないと他の人より劣ってしまう、と思い、常に「自分にとって今1番すべきことは何だろう。」と気短に考えて生きてきた。しかし、自分が好きなことやしたいことは、日々の生活の中で焦らずに見つけていこうと思えるようになった。給料や勤務地にこだわって仕事を決めてもいいし、仕事が合わなくて苦しくなったら辞めてもいいし、とにかく自分の選んだ道はすべて正解なんだと捉えるくらいの心持ちが、これからを生きていくうえで大切な考え方だなと思った。だらだらではなく、ゆったりと、自分のペースと軸を見つけることで、自分らしい道が開けるのかなと感じた。
また、「山崎さんたちのような心の余裕はどうしたら手に入れられるのか」。私は悩んだ。しかし、三者三様の解答を持つこの問いに対する自分の答えを見つけることは難しいが、悩むことで見つかる発見をこれからも大事にしていきたいなと思った。綺麗事のように聞こえるかもしれないが、悩みというものが新たな発見と成長へ導いてくれるのなら、悩めることも素敵な事なのかもしれない!

書いたひとプロフィール:2003年生まれの大学1年生。生まれも育ちも新潟市。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる精神で、興味があるものに対しては後先考えずに行動してしまう。その割にかなり飽き性で何事も長続きしない。自立した逞しい人間になりたい!

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