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第10回 くらがく(玉野市から考える”郷土愛”と”地域”で暮らすということ)

地方で暮らす多くの若者が、一度は憧れたことのある都会での生活。
今回のくらがくでは、岡山県玉野市出身の大学生 黒川 彩芽(くろかわ あやめ)さんを講師として招待し、黒川さんの地元と都会での生き方を比較しながら、人口減少という社会問題から地域の生き方について参加者と一緒に考えてみました。

講師は岡山県玉野市出身の大学生

講師は、岡山県玉野市出身の岡山大学3回生の黒川 彩芽(くろかわ あやめ)さん。
グローバルディスカバリープログラムという、カリキュラムを履修しており、世界中から集まった留学生や帰国生と一緒に、学部や学科といった枠組み超えて学問に励んでいます。また、自らが課題を見つけ、フィールドワークを重視した学びを行なっています。興味関心のある分野は、地域や観光、キャリア教育だそうです。

人口減少によって生じる問題

人口減少が社会問題とされていますが、人口が減ると具体的にどのような問題が発生するのでしょうか?実は、岡山県内でも、半数を超える14市町村が「消滅可能性都市」(2010年から2040年にかけて、20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村)に該当しています。
黒川さんは地方の文化を例に挙げ、人口減少によって発生する課題について、参加者に共有してくれました。

岡山県でいえば地方文化は備中神楽や備前焼、備中和紙、大宮踊などが挙げられます。しかし、現代まで文化が存続しているのは、文化を継承した人がいたからです。では、人口が減少するとどうなるでしょうか。担い手の減少による文化の衰退化、消滅化に繋がるのではないでしょうか。岡山県内だけでなく、他県においても同様です。地方によっては、千年以上続いている文化も消滅する可能性があると予想されます。

若者が首都圏での生活を選ぶ理由

戦後から大都市(特に東京都)への人口集中が顕著に表れている日本。特に20代の若者が地方から都市部へ集まっています。その理由について、黒川さんは考えました。

●若者が都市部に集まる理由
1.自己目標の実現
2.キャリアアップ
3.幸せの追求(職業の種類、関係人口が多い)

黒川さんは、”幸せになるために人は生きている”という考えから、若者が抱く夢を実現するために都市部へ移動するという結論に至ったそうです。都市部では、大企業や東証一部上場企業が多く、キャリアの選択肢も地方より圧倒的にあります。また、エンターテイメントが都市部に集中しており、多様なエンターテイメントを楽しみながら充実した生活を送る場所として、地方よりも都市部を選んでいるとも考えています。
そのため、若者が都市部へ流出し、地方の過疎化が進行。その結果、担い手がいなくなった地方の文化が衰退、消滅するのです。

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玉野市の特徴と若者の心情

岡山県玉野市の人口は約5万7千人。財政状況が悪く、消滅の可能性がある街といわれています。主な産業は船舶業や金属業。コロナ禍により、船舶業の不調から玉野市全体の収入も減ってきています。

一方で、観光資源には恵まれています。瀬戸内海に面した街であるため、観光客を魅了する風光明媚な場所が多くあることは玉野市の特徴です。
また、珍しい施策も行なわれています。葬祭費を市が負担する制度や公共スペースである図書館をショッピングモール内へ移設するなど、市民が市外へ流出しない取組みを積極的に実施しているのです。

ただ、若者が玉野市に住み続けたいかという問いになると、「住み続けることは難しい」と黒川さんは考えています。その理由に、若者がキャリア形成を行なっていくうえで働く場所や、モデルとなるキャリア形成している大人の不足が挙げられます。黒川さん自身も「幸せになるための魅力的なキャリア形成」ができないため、今後どこで生活するかを悩んでいるそうです。

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参加者と一緒に考えた問い

今回のくらがくのグループワークの問いは3つ。

●くらがくグループワーク内容
1.担い手が不足していく地方(地域)文化が無くなっていくのは当然であり、仕方ないことなのか
2.地域(地方)の存続と若者の豊かなキャリアの共存
3.地元や自分が好きな地域にどう関わっていくのか

今回のグループワークで、特に面白く感じた話題は、「地域社会と若者のキャリアのは、共存できるか?」というもの。共存ができないという立場からの意見は、地方に重点をおいたキャリア形成は若者の可能性を阻害するので、地域だけに捉われずにキャリアを見据えたほうがよいという考えです。一方、キャリアの共存ができる意見の理由は、どこで暮らしていても地域社会との接点を持つことができるという考え。例えば、自分が応援したい地域に寄付できる「ふるさと納税」。報酬の一部を地域に還元しているところから、地域社会と若者のキャリアは共存しているといえます。また、移住者を「地域おこし協力隊員」として任命し、農業・漁業への従事、地域魅力PRなど地域定住・定着を図った取組みがあることから、自分のキャリアと地域を組み合わせることができます。

最後に

今回の参加者の多くは20代でした。また、20代にとって親世代にあたる50代の参加者もいました。普段、地方について考える機会が無いことから、両年代が一緒に考えたことで、お互いの意見を知る貴重な場になったようです。
50代の方からは、「若者が課題に挙げたものは、厳しいものであるが、これからの未来を考えていく中で若者の声は大事にしなければならない。若者の意見を知る良い機会になった」との感想をもらいました。
一方、20代の参加者からは「くらがくのような様々なテーマをまなぶことができる場所は、良いと思う。今回のようなテーマも多世代に広げてほしい。色々な考えが聞けて良かった。また参加したい。」との感想をもらいました。

くらがくは、身近なテーマから社会問題まで、その日集まった人と一緒にまなぶことができる、プラットフォームです。参加してくださった皆さま、ありがとうございました。


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