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白山シャーオラーー登山

日本三霊山の一つ、白山に登りました。

2023年8月26日(土)から27日(日)、1泊2日登山の記録を長々と書きます。

山にイキタイ

過去に、石川県の西は加佐ノ岬、北は珠洲岬を旅しました。

あとは白山に登れば、「石川県全体を踏破」という実績を達成できます。

登りたいです。

石川県に2年以上住んでいる者として、白山に関心を持って、外に出ることを楽しむ良い機会です。
何から始めるか悩みます。登山?キャンプ?高山花見?食べることが好きなので地産地消の店巡り?

パラグライダー飛行が叶わなかった話 in白山市 獅子吼高原
https://note.com/kurachiweb/n/nd5ee2f2083fb

白山手取川ジオパークが世界に認められたことで、個人的に白山の自然を体感する機運は高まっています。

時は夏、私は若い、白山の近くに住んでいるのも今のうちかもしれない、となれば当然登るでしょう。

山小屋を予約

白山は標高2702m、多くの人は山小屋で1泊してから登る、そんな高い山です。
そのため山小屋を予約するのが一般的です。

山頂に近い「白山室堂」を予約します。

公式ホームページで、予約の埋まり具合を見ることができます。

8月20日(日)に見ると、26日夜は満室で、予約できませんでした。

しかし4日前の朝に、キャンセル空きが発生。
受付が始まった9時に電話を掛け、わずかな枠を勝ち取りました🎉

1日目:バスで移動

朝3時半に起きたので、眠いです。

松任駅を5時に出発する、白山登山用のバスに乗ります。
料金は片道2200円です。

このボケぶり、iPhoneのカメラも眠い?

大型バスですが、乗客は私ともう2人だけでした。

金沢駅発のバスとも迷っていましたが、松任駅発であれば確実に乗れるでしょう。
7時発の便であればもっと混むのかもしれません。

手取川ダム、貯水率38%

途中通ったのは、石川県民の水がめ、手取川ダムです。

大きさに見惚れながらも、水位の低下が目立っていました。
貯水率は、8月26日時点で38%という低さでした。

6時30分、中継地の市ノ瀬ビジターセンターに着きました。

登山口行きのマイクロバスに乗り換え、20分ほど移動します。
料金は片道800円です。

車内では、登山に関する注意事項がアナウンスされます。

高山植物が傷つくため、登山道は踏み外さない
動植物を採取しない
17時までに山小屋に着くこと

7時ちょうど、別当出合登山口に着きました。

登山口の撮影スポット、奥には鳥居

同じ市内なのに2時間近くも掛かるとは、白山市は広すぎます。

別当出合から登山開始

トイレを済ませ、十分に水を飲んでから歩き始めます。

山道はいきなり二手に分かれます。

登山口すぐの分かれ道

→右方向は砂防新道、初心者向けコースです。
←左方向は観光新道、少し急坂なコースです。

登山届に記した通り、左方向の観光新道を登っていきます。

登山道?

初めの整備された道は壁に当たり、右手から水が流れてきています。
と思ったら、実はこれが登山道なのです。

イメージと異なる光景のため、いきなり登山地図を見つめました。

「ああこれなんだ。。。」

土ではなく、水の流れに足を踏み入れます。
濡れた石の表面は滑りやすく、トレッキングシューズでも油断できません。

滑りやすい

時々、倒れた木を跨いだり、くぐったりします。

骨だけの手のような倒木

既に倒れている木は、もう倒れることがないので安心できます。

立っている木も、寿命が尽きれば枯れて倒れてしまうので、「歩いている時に倒れてきたらどうしよう」と心配になってしまいます。

歩き始めて1時間、1.4km進んだ先の休憩ポイントで休みます。

観光新道の喜市郎坂ポイント

まだ1.4km、山小屋まで4.6km、いつになく疲れていますが、追加で3倍の距離を登る必要があります。

そして喜市郎坂を登るのですが、その区間が一番キツかった所です。

喜市郎坂

「ハーー」「シャーオラー」「シャーーオラーー」

一歩足踏むごとに、キャラにない言葉を吐いていました。

巨人向けの階段に上り坂を足したような急登が続き、体が疲れていきます。
また後から登ってきたスイスイ健脚さんに追い越され、心も参ってしまいます。

喜市郎坂を登り切り、別当坂分岐

喜市郎坂を500m進むのに、40分も掛かりました。
平地なら6分で進める距離ですので、7分の1ほどのペースだったのは想定外です。。。

その後は尾根を通る、歩きやすい道が続きます。

別当坂分岐の後、ずっとこんな道だったら楽なのに

高度があがったこともあり、眺めはとても良いです。

ところがこの道、岩と土の間に穴があります。

洞窟かもしれないので、トレッキングポールや足が入ってしまわないように、下も見ながら歩く必要があります。

余裕が出てくると、道端の花にも気づきます。

癒しのリンドウ

しかし花を見たところで、険しい"登り"坂は楽しくならない。。。

手を添えて登らないと危ない箇所、下りはさらに大変そう

10時50分、建物の屋根が見えてきました。
「殿ヶ池避難小屋(とのがいけ)」です。

屋根が見えてから着くまでは、時間が長く感じる
避難小屋の入り口

避難というだけあって、結構頑丈そうです。
冬の大雪にも耐えられる造りでしょう。

3時間半も登り続けたので、腰を休ませます。
電車やバスでは座らない私ですが、今は座らないと足がもたないです。

標高2050mの高所にあるので、気温は地上よりも12℃ほど下がります。

金沢市の天気は32℃表記でしたので、ここは20℃と推定されます。
涼しい気候とはいえ、運動しているので汗は出続けます。

トンボが多く飛んでいて、全然逃げない

10分休憩する予定でしたが、20分もいました。
勿論予定は遅れています。

11時10分、避難小屋を出発しました。

ここからは高山植物が多いエリアです。
靴裏の土には下界の植物の種が含まれているかもしれないため、硬いマットに靴底を擦り付けて落とします。

高山植物を守るため、靴についた土を落とすマットがある
観光新道の蛇塚

フォトジェニックな石の山は、蛇塚(じゃづか)と呼びます。
標高2240mの所にあります。

伝説によると、1000匹もの蛇がこの石に封印されたとも🐍

おそらくナナカマド

「鳥さん、私を食べてください!」
と言わんばかりに、小さく赤い実が集まっています。

Google画像検索で調べると、高山植物ナナカマドのようです。

12時40分、観光新道と砂防新道の合流地点で休憩します。
目の前に、黒くて大きな岩があります。

黒ボコ岩

「黒ボコ岩」と呼ばれる火山弾です。
かつて白山が噴火した時に、山頂辺りから転がってきました。

ゴツゴツとして不安定な見た目ですが、この上で立って撮影する人もいるようです。

私は、、、ビビって立てる気がしないです。

黒ボコ岩を過ぎると、木の板による道が整備されています。

急に予算UPな登山道

もう拍子抜けするほど楽です。

展望歩道と植物

この展望歩道の周囲には、草などの高山植物が低く広がっています。
木が無いため、開けていてとても良い景色です。

通行ルートを明確にすることで、植生保護区域に足を踏み入れてしまうことを防ぐ役割もあります。

砂防新道では利用度が特に高いため,登山道周辺の登山者の踏込と融雪期の流水および雨水による表土の流出,浸食によって著しく荒廃が進んでいた。
このため,昭和54・55年に黒ボコ岩から五葉坂にいたるまでの約400mの登山道整備が 行われた。この結果砂防新道周辺の表土の流出,浸食は止り,荒廃地の拡大は防がれている。

八神徳彦・野崎英吉:白山弥陀ヶ原における登山道の荒廃状況, 白山自然保護センター研究報告, No.13, pp.1-4 (1986)
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hakusan/publish/report/documents/report13-10.pdf

歩道を抜けた後は上り坂、室堂へ向かうのみです。

室堂まであと300m

6kmの道のりも、残り300mになりました。

尖った石は少ない

勾配は急すぎず、石が丸まっているので安心感があります。

気楽ですが常に上り坂で、後ろから人が多く来るので休憩し辛いです。
思ったよりペースが落ち、体感600mくらいの道のりになりました。

室堂に到着

13時25分、ようやく室堂に到着しました。
体力の割に重い荷物だったこともあり、別当出合登山口から6時間掛かりました。

室堂ビジターセンター入口

始めに入る2階建ての建物がビジターセンターです。

入口前の、わずか8段の階段を上がるのに、20秒も掛かかってしまうほど疲れていました。

放心状態のまま、受付で宿泊のための書類を書きます。
そして宿泊費8200円+夕食・朝食代の、合計1万1300円を支払います。

手続きを済ませるとともに、食事券を受け取ります。

食事券、小さいので失くさないように要注意

私が寝泊まりする、くろゆり荘という建物に移動します。

宿泊施設「くろゆり荘」

移動して見ると、木造でありながら支え柱が多く、下手な鉄筋よりも強そうです。
2002年にリニューアルされたので、もう築21年です。

中は20~30人も入る相部屋がいくつかあります。
どの部屋も、寝床は2段ベットのようになっていて、一人当たりのスペースは1メートル未満です。

5kg以上あるリュックを漸く下ろすと、重心が変わって前に倒れそうになりました。

休憩が必要です。
昼食として、松任駅近くのコンビニで買ったおにぎりを"頂き"ます。

美味しいおにぎり、食物繊維は合わせて9gも

コンビニおにぎりは1年ぶりに食べましたが、やっぱり最高に美味しいです。

食物繊維やMCTオイルなど、栄養を重視した商品も増えてきていると感じました。

食べ終わった後の包装プラスチックは、持参したゴミ袋に入れます。
登山中に出たゴミは持ち帰る決まりであるためか、山小屋には捨てるところが無いようです。

ペットボトルが3本も空になりましたので、水場で補充します。
こちらは無料で利用できます。

白山室堂の水場、山のきれいな水

飲んでみると、ビックリするほど美味しいです!
冷たくて、喉を抵抗なく通っていく感じが堪りません。

普段もペットボトルの水を飲みますが、違いは何なのでしょうか。

と思っていると、急に雨が降り出しました。

水にも好き嫌いはあります。

山頂近くであり、風が吹き続けていて雲の移り変わりが早いです。
天気予報を見る限り、下り坂のようでした。

この日はずっと、ビジターセンターの中で休みました。

夕食

17時20分から40分まで、夕食の時間です。
時間帯は人によって異なります。

同じ時間に食べる人が他にも数十人やってきて、食堂前に列を作ります。
早く並んだ人から順に、料理をトレイに乗せて着席するシステムとなっています。

早めに並ぶことができましたが、夕食券を忘れてしまいました。。。

宿泊部屋まで走って、もう一度並びますが当然最後尾です。
着席できたのは33分、猶予は7分しか無いので急いで食べます。

白山室堂の夕食(肉バージョン)

メインの食材は肉と魚を選べます。
今回は肉にしました。
普段よりも早めに寝るので、胃の負担を考え米は少なめにしました。

ハンバーグや米は冷えていました。
大皿の奥にある、肉あんかけを練り物で包んだような品は美味しかったです。

食べ終わった後は、スマホの充電をしました。
ビジターセンター内に充電コーナーがあり、十数台のスマホやカメラバッテリーを同時に充電できます。

一回30分100円で、21%→39%に増やせました。

18時30分、用を済ませて宿泊棟に行こうとしましたが、外は激しい雷雨になってしまいました。

8月末の白山室堂、午後の天気は荒れやすい模様

この電気は心の底から嫌いです⚡️
5〜10秒おきに一度光り、1秒以内に音が聞こえることもありました。

木造のこの室堂に直撃しないこと、また停電にならないことを祈るのみです。
施設内の本を読みながら待機しました。

50分経って雨が弱ったので、宿泊棟に向かって走りました。

2日目:ご来光は近場から

8月27日、山頂の日の出は5時10分です。
しかし起きたのは4時50分でした。

山頂でその時を迎えたかったのですが、登っても間に合いません。

室堂から山頂方面、日の出の時

ただ山頂には霧が立ち込めていて、ご来光を見られる状況ではなかったです。

250m低い位置の室堂は晴れていて、近くの展望台から絶景を見ることができました。
朝焼けのグラデーションと適度な雲により、景色は透明感に溢れています!

室堂展望台、輝く朝のパノラマ

6時ちょうど、朝食の時間です。
夕食と違って時間は区切られていませんが、多くの人は山頂から戻ってきていないので、食堂は空いています。

肉か魚かを選べます。
昨晩は肉でしたので、魚にしました。

汁には薄揚げと大根が入っていて、嬉しいことに温かいです。
副菜の味付けは濃いめです。

朝食(魚バージョン)

御前峰へ

6時50分、山頂へ向かいます。
白山連峰の中で最も高い御前峰(ごぜんがみね)を目指して、30〜40分歩きます。

山頂周辺の地図

道中には、噴火して出たであろうカラフルな石が多くあります。
石マニアの方なら種類が分かるのでしょうか。

山頂付近の石

人が登るルートは幅広く整備され、すれ違いも難なくできます。

山頂までの登山道

多くの人が朝食を食べ始めているのか、下りてくる人はいませんでした。
日の出前なら多くの人で混雑するはずなので、ギャップで寂しいです。

御前峰まであと少しのところに、小さな社殿があります。
「白山奥宮」です。

白山奥宮

白山は古くから信仰の山であり、修行のために山に登る修行者はここを目指しました。

私が目指したのは、どこよりも高い頂きです。
7時30分、御前峰に着きました!

白山御前峰⛰️

いつの間にか晴れていました。
圧倒的スケール、本当に高い所にいる感じがします。

御前峰180度パノラマ

北からは霧が迫っていますが、何故か尾根のところで消えてしまうのです。
私は海割り伝説モーセのように、霧を分かつ存在なのかもしれません?

温泉の湧き出るところにありそうな赤い石や、

登山者によって文字が彫られた岩、

意外にも植物の生えた岩がありました。

山頂にいると時間の経過が早すぎませんか?
10分だけのつもりが、30分も経っていました。

室堂まで降りる途中にも、花が生えていました。

白山の標高2500mほどで見かけた花、ミヤマゼンゴ?

この2日間、写真で撮った以外にも数種類の花を見つけましたが、初めて見る種ばかりでした。
花の知識があれば、もっと白山登山を楽しめそうです。

下山

山頂から室堂に戻ってきた

室堂で、もう一度スマホを充電しつつ、トイレ休憩、ペットボトルへの水補充、靴紐の結び直しなど準備を整えます。

そして10時ちょうどに出発し、砂防新道で下山します。

黒ボコ岩の分岐、砂防新道へ進む

黒ボコ岩を抜けた後、砂防新道の「十二曲(じゅうにまがり)」に差し掛かります。

砂防新道の十二曲

1箇所ごとに大きく曲がっているので、坂は緩やかになっています。
観光新道の「喜市郎坂」もこれくらい曲げてほしかったです。

十二曲を過ぎると、「延命水」があります。

砂防新道の延命水

ひと口飲むと3年長生きすると伝えられる命の水。
石川県で一番標高の高い名水といわれています。

砂防新道の延命水|【公式】白山市観光・旅行情報サイト|うらら白山人
https://www.urara-hakusanbito.com/spot/detail_1160.html

飲みたいのに、水不足のためか一滴も出ませんでした。。。

連日の猛暑で水不足に見舞われている白山、ダムの延命が優先なようです。

砂防新道は、全体的に難易度が低い登山道です。
多くの区間は緩やかで、幅が広いためすれ違いやすく、所々石畳や木板で整備されていて歩きやすいです。

歩きやすい砂防新道

また、砂防ダムを観察することもできます。

砂防新道から見える砂防ダム
砂防ダムの解説パネル

あまり足を止めることなく下りて、登山も残り1kmを切りました。

砂防新道には、上りと下りが別の道を通る区間があります。
下りだけが迂回路を通る仕組みのようです。

上りの道は急登で、下りの迂回道はすれ違いできない狭さであるため、一方通行と決められています。

最後は立派な吊り橋を渡ります。
「別当出合吊橋」です。

別当出合吊橋

長さは117mもあります。

マラソン大会や駅伝のゴール直前には、たいてい数百mの直線があるのですが、まさにそれのようだと思いました。

歩くと揺れますが、登山した後なら怖くないどころか、両手をガッツポーズする余裕すらありました。

別当出合登山口

14時30分、遂に別当出合登山口に戻りました。

喜びも束の間、別当出合と市ノ瀬ビジターセンターを往復するバスに乗るため、今日一のダッシュを見せました。

登山はゆっくりなのに、平地ではよく急ぐ私です。

終わりに

「そこに白山があるから、当然登るでしょう。」
と強気で計画し始めて、
「シャーオラー」
と強気な言葉で登り、
ガッツポーズで締める。

最後まで一貫して強い気持ちでいられたことで、自己肯定感が上がりました。

驚きだったのは、翌日に写真を振り返った時、知らない人のブログを見ているかのように錯覚したことです。

普段の私は、アパートと職場とスーパーマーケットを往復する、刺激の少ない日々を過ごしています。

それと比べると登山は大それた行動で、成し遂げたことが頭の中で信じられないのです。

でも本当のことで、翌日からの5日間、ふくらはぎの筋肉痛が強く現れました。
普通に歩こうとしても、足がプルプル震えてしまうのです。

心にとっても体にとっても、刺激たっぷりでした。

来年もどこかの山に登れたらと思います。

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