見出し画像

くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第377回 「ギフテッドを育てるのはとても大変!?ギフテッド教育の落とし穴とは?」ってお話

登場人物

過去記事マガジンも作ってます

本文

[く] こんばんは。くらげです。

[寺] こんばんは。寺島です。

[く] 今月は体調がずっと悪くて、一日の中でも元気なときとそうでないときが交互に来るので大変難儀しています。

[寺] 私も体調はあんまり良くないですね。単純に寒いせいもありますが、気圧の乱高下がきつい…。

[く] なんか仕事先や友人たちも1月は体調があまり良くない人が多かったです。風邪とはまた違って熱は出ないけど、怠さや咳が酷い、というケースが多いのが謎です。そういうこともあって1月はいろんなところで仕事が停滞しておりました。

[寺] そうそう、連絡来ないなーと思ってると倒れてましたとか。コロナの後遺症かなというケースも結構ありましたよ。私も倒れるのが怖くて「疲れたら休む」を徹底していたら、漫画の仕事の進捗がヤバいことになって今週は自主缶詰状態です・・・。

[く] 漫画家ってなんでしょっちゅう缶詰になるんでしょうか?

[寺] 1週間で20ページとか描く設定だから、ちょっとしたアクシデントでスケジュールが焦げ付くということかな?まあ、私以外の漫画家のことはよく分かりませんけど。あと、実家の母が入院するということで大分に一週間ほど戻ることになりました。スケジュールあとで送りますね。

[く] うわ、ご実家も大変ですねぇ。そろそろウチの親も歳なので他人事ではないですよ。

[寺] 特に病状がというわけではないんですが、もう80歳を超えてますから、まあ念のための老い支度ですね・・・。仕事道具一式は持って帰るので仕事やnoteの影響は少ないと思うんですが、一応後でスケジュール送りますね。

[く] あまり無理をしないでくださいね。さて、前回、ちょっと絵を描くかという話をした覚えがあるんですが。

[寺] 「覚え」じゃなくてしましたよ?(笑)今回さら…発表という流れになっていたと思います。

[く] それで、ちょっとティッシュ箱を描いてみたんですが、全然箱に見えないですね。そもそも箱ってどんな形だっけ・・・。というところから悩んでいます。

[寺] おお、ちゃんと悩んでてえらーい!まぁ実際、線を引くのって意外と難しいんですよ。これは見ないで言いますけど、一気に線を引くのが怖くてちょこっとずつ線を引いて、結果ボソボソした線にすら見えないものになった、という状態なんじゃないでしょうか?

[く] よくわかりますね、まさにそんな状態です。

[寺] くらげさんに限らず初心者はだいたいそんなもんですよ。まずは怖がらずに線を引くところからですね。あと、輪郭を一発で決めるのは難しいので、影を描いて像を浮かび上がらせることを心がけると良いですよ。「デッサン」というのですが。

[く] デッサン…やはり来ましたね、面倒という印象しかないのですが…(笑)

[寺] なんだかんだで、やはり基本はデッサンなんですよ。この辺のnoteを読み返しつつ、頑張ってください(笑)

[く] しかし、なんかこうちゃんと「見てない」というか、見ても全然うまく出力できないところにかなりイライラしてしまいますね。

[寺] ADHDのいらちなところが出てる出てる(笑)まあ、試行錯誤することでちゃんと頭を働かすことが大事、というのは前から言ってますから、そこを敢えてやってみるということでなんらかの変化が出てくると思いますよ。自分が変化し始めると面白みも感じられるようになるのでは?

[く] がんばります・・・。ところで、前回の認知の話とも絡むんですが、息子さんがなにか大学院で発見したと聞きましたけど。

[寺] ああ、はいはい。まだ発表前なので詳しくは言えないのですけど、珍しい鳥を見つけまして、それで正月付近はちょっとバタバタしてました。

[く] それって、ASD由来の「細かな差違」を見分けることが出来るという能力があったからかなあと思いまして。どうなんですかね?

[寺] ASD由来かは定かではないですが、耳が良いのは確かですね。息子が鳥を探すときは、まず鳴き声を聞きつけて、それから姿を探すそうなので。うちの息子、小学生の頃「地獄耳のタケル」と呼ばれていて、床に落とした小銭の音を聞いて、合計いくらになるか計算するという芸をやってたくらいなんですよ。

[く] 野生の鳥の鳴き声を覚えているんですか!?

[寺] このへんは息子だけじゃなくて、鳥のフィールドワークをする人はマストですよ。先生や先輩から鳥の声を録音した膨大なデータをもらって「覚えて」って言われるんです。あとは、やはり姿と食性を頭に叩き込んでおいて、確実に実物を探すということですかね。この辺は息子の往来の記憶力の良さが活かせていると思います。

[く] 細かいところにこだわるということとは関係ないんですかね?

[寺] 関係ないとは言い切れないですけどね。観察力という意味では絶対使う能力ですし。そもそもそんな小さな違いを「面白い!」と思わなければ、種の同定とかやってないような気もしますしね。

[く] やはり「観る」という力は大事ですねぇ・・・。

[寺] でしょう?くらげさんは眼から情報を得るのが苦手と言いますが、そう思い込んでいるからで知らず知らずに損をしているかもしれませんよ?

[く] そういう「損」って自分で気づかないから厄介なんですよねぇ。寺島さんのお子さんの話を聞いていると『ギフテッド』という言葉が思い浮かぶんですが、寺島さんは『ギフテッド』ではない、とよくいいますよね。

[寺] 『ギフテッド』ではないですね。敢えて言うなら2Eだと思います。このことについてはこれまでこのnoteでも何度か触れていますが、息子は飛び抜けた早熟な才能があるわけではないんですよ。普通レベルの優秀さで障害があるという状態です。

[く] 普通レベルの優秀さなんだけど、障害があるので、優秀な部分が目立ってしまうというかんじなんでしょうか。普通とはなんぞやという話にもなりますが(笑)

[寺] そのへんは一般的に使われている言葉に沿った解釈で(笑)私が言う「普通」は偏差で飛び抜けてない、90%に収まる程度ということです。ラマヌジャンとか、ガウスとか、どう考えても人類の90%範疇に入ってないじゃん?ああいう才能を「ギフト」って言うんですよ。

[く] とはいえ、昨今はかなり広い意味では使うようにもなってきてるみたいです。発達障害のあるお子さんの親御さんなどがよく「うちの子ギフテッド」ってSNSで言っていますよね。

[寺] 障害も才能も「ギフト」という捉え方をする、広義のギフテッドということですかね。私はなんとなくしっくりこないですが(笑)まあ、言葉って変化するものですからね…。

[く] 年頭に「ギフテッド教育に失敗して方向転換した施設」というのが話題になったんですよね。今は無料では全文が読めなくなっているんですが、要約するとギフテッド教育として知能が高い子どもたちを選抜して教育をしたけど、思ったように成長しなかった、細かいところの知識はあってもネットを検索すればわかることばかりで体系的な知識を学んだわけではなかった、みたいな話でしたね。

[寺] ああー、理科科目に強い関心を持った発達障害のある子どもたちを集めた英才教育を行うところっていくつかあったけどわりとどこも頓挫している印象があります。

[く] 東大がやっていたRocket Projectもなんかもともとの目的であった異彩発掘とは別な方向に進んだとかで中止したと聞きました。今では「自分で考える力」とかを育てるプロジェクトになったそうですね。ナイフ一本でキャンプしたり(笑)

[寺] 中邑先生の先端研での話ですね。実は、うちの子どもたちも「パル」(様々な学習プログラムや講座を受けることができ、プログラムに応募できる。プログラムに選抜されるとスカラーと呼ばれる)には参加してたので、少しは経緯がわかりますよ。

[く] 参加していたんですか。どんなプロジェクトをやってたんですか?

[寺] 神経発達や福祉、環境についてのオンライン講座や講演会を、親も子どももタダで見ることができました。私たち家族が恩恵を受けたのはそこが1番大きいかな。時々プログラムと呼ばれるフィールドワークや合宿形式の実験的な企画が立ち上がるんですが、うちは選抜に応募してないですね。大体泊まりがけになるので、うちの子どもたちにはちょっと難しかった。

[く] そのへんの学習支援というか、障害のある子どものフォロー体制はどうなっていたんですかね?

[寺] 東大先端研の求める「異能」は飛び抜けた才能や興味のことで、障害のあるなしは関係ないんで、特に障害に対するフォロー体制とかは基本的にありません。障害があるスカラーが参加する時は、現場でできることはやる、難しい時は親が付き添うという感じだったみたいですね。実際スカラーに選ばれたのは、障害のない子どもが多かったと思いますよ。

[く] そうなんですか…なんだかかなり印象と違う話ですね。

[寺] プロジェクトが頓挫した理由も、単純に「出来のいい普通の、障害とかない子」が「スカラーに選ばれるような対策をして」集まるようになってしまって、当初想定した研究対象から外れてしまったということが理由として大きいと聞いています。東大ブランドが悪いほうに働いてしまったのかな、と思います。

[く] いわゆるアスペルガーやギフテッドを対象にしていたわけじゃなかったんですね。

[寺] たしか「異能?才能!」って言ってました。「ギフテッド」とは募集の時は言ってなかったと思います。

[く] どこでそういう勘違いが発生してしまったんでしょうね?過去、先端研の研究に参加した人の中に障害があって異能を発揮したお子さんがいたとか…?

[寺] 広告塔みたいなってこと?どうだったかな…覚えがないですね。障害があってもフラットに才能が審査されるということで、「ここに入ればワンチャン!?」と勝手に発達障害者の親が集まっちゃった感じなんじゃないかなあ。まあ、私もそのうちの1人なわけですが。

[く] それだけ当時は障害があると才能を発揮するチャンスがなかった、少なくとも障害のある子の親御さんにはそう思われていたということでもありますよね。

[寺] 前にも話しましたけど、『ギフテッド』というのは欧米・・・特にキリスト教から来ている概念なんですね。ここで言う「ギフト」というのは「神から与えられた能力」で「哀れな羊であるただの人たちに神から遣わされたおみやげを持った特別な人たち」という意識があるから成り立つんですよ。

ここから先は

1,845字 / 1画像

¥ 200

妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。