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CECIL Mc BEE閉店ニュースを通して考える日本ブランドのアイデンティティ

「ギャルブランド『CECIL Mc BEE』の店舗閉店が決定」

つい先日目にしたニュースだ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響をモロに受けてしまったとのことだった。

ニュースを受けてSNSには

「大好きだったセシルが…」「あのショッパーで学校行ってたなぁ…」

といった悲しみの声が次々に寄せられた。かく言うわたしも中高生の時よくお世話になったものだ。イケイケの音楽が大音量で流れる109の店舗。なんだかいい匂いのする、オシャレな店員さん。少し大人になった気分で買ったレースのワンピースのシルエットは今でも鮮明に思い出せる。

母の若い時からあったというCECIL Mc BEE。どの時代においても10代の少女を魅了し続けていたように見えるが、ここ数年はショッパーを待つ女子高生の姿は見ないし、店舗の広さを持て余した店員さんが床をモップで拭いている姿さえ見た。今回インターネットに寄せられた声たちの中にも過去を懐かしむものはあれど、現在進行形でCECILがなくなって悲しむ、困るというものは少ない。

CECIL Mc BEEの衰退は、本当にコロナウイルスが原因だろうか。インターネットでは「ギャル文化の衰退」などと囁かれたりもしていたが、ファストファッションの浸透に伴い、日本ブランドとしてのアイデンティティを維持できなかった結果、コロナウイルスにとどめを刺されたように見える。

わたしにとってのCECIL Mc BEEの魅力は中高生が出すには少し高いが、価格の割に品質が良く、少し大人な女性らしいデザインの服、そして子供同然の若者にも優しく接客し、コーディネート提案をしてくれる店員さんだった。だが、ここ数年のCECILは系列店「Ank Rouge」系のガーリーなリボンやフリルのついた服を置き始めたり、全体的な価格帯を下げ、その分品質が下がっていたりしていた。「背伸びしたい中高生の大人の入り口」「綺麗なお姉さんが着る大人のギャル服」ではなく、「どの系統も置く何でも屋さん」「身近なお値段」のファストファッション的ブランドになってしまっていたのだ。わたし自身、なんとなく買うのをやめてしまったのは年齢のせいだけではあるまい。かつてのブランドイメージが感じられなくなってしまったからだ。

「安くてかわいい」ファストファッションや韓国ファッションなどが浸透してきているこのご時世で日本ブランドの人気を維持するのは大変なことだろう。ファストファッションの良いところを取り入れるというのも必要な取り組みであろう。だが、今までにあったブランドとしてのイメージを失わないこと、日本ブランドだからこその強みを活かすことも忘れてはならないと思う。

CECILに限らず、「最近どこのブランドも同じようなものしか出していないな」「あっ、この服さっきのお店にもあった…仕入先が同じなんだなぁ」などと感じることが増えた。「ここのブランドらしいデザイン」と思えるものは減ったし、「ブランドに一目惚れ!出してるお洋服全部好き!」と思うこともなくなってしまいつつある。洋服、ファッションが大好きなわたしとしては寂しく、悲しい。もちろん、シンプルでトレンドライクな洋服も好きだ。だが、ユニクロやGUで買えるようなものを高値のブランドで買おうと思わない人は少なくないだろう。ブランドのタグがついているというだけのことに価値は見出せないのだ。

新型コロナウイルス感染症の影響で窮地に立たされるブランドは少なくはないだろうが、またいつか「大好きなブランド」に会える日を楽しみにしている。

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