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「ボストン美術館所蔵 刀剣×浮世絵 THE HEROES」兵庫県立美術館

9月10日より始まった本展覧会。早速初日に観て参りました。

兵庫県立美術館

タイトル通り古代から戦国時代にかけてに描かれた武勇伝説や軍記物語に登場する英雄達の浮世絵、刀剣、鐔(つば)にスポットライトを当てた展覧会。

私が専門とする浮世絵を中心に、振り返らせて頂きます。作品は浮世絵の開祖とされる菱川師宣(もろのぶ)から、最後の浮世絵絵師と称された月岡芳年、そして芳年と同時代に活躍したライバルとも言うべき豊原国周(くにちか)までバランス良く展示されていました。

浮世絵の開祖 菱川師宣

まず上記に上げた菱川師宣の作品は、個人的に大好きな物語の酒呑童子退治に関するもので、錦絵が誕生する以前の墨一色の版画。シンプルでのびのびと描かれていて、初期の浮世絵の魅力を伝えるにうってつけでした。

菱川師宣「大江山酒呑童子 首斬り」

武者絵とは

伝説や軍記物に登場する英雄達を描いた浮世絵は武者絵と呼ばれ、浮世絵の三大テーマとなる風景画、美人画、役者絵についで重要なジャンルとなります。その武者絵を描かせたらNO.1人気と実力を持っているのが歌川国芳。いちジャンルとして確立させたのは国芳ですが、ここでは国芳作品に触れるのをあとにして、それ以外を観ていきます。

幻の武者絵師 勝川春亭

武者絵を描いた浮世絵師は、勿論国芳以外にも沢山いますが、その国芳以前に数多くの武者絵を描いたのが、勝川春亭(かつかわしゅんてい)と言う絵師で、画号からわかるように勝川春章の弟子に当たる人物です。彼の作品は歌川国芳に多大な影響を与えたと言われており、今回春亭作品をたくさん観ることが出来ました。

勝川春亭「藤原秀郷の百足退治」

様々な流派の作品

今回の展覧会の特徴は、勝川派、北尾派、葛飾派、そして歌川派とバランス良く展示されていた点だと思います。このような催しがあると、作品数が多く人気も高い歌川派に偏る事が、どうしても多くなりがちですが、今回は日頃あまり注目される事が少ない北尾派や葛飾派の作品を沢山観れて良かったです。

北尾政美「一の谷合戦」

江戸っ子人気No.1歌川国貞

歌川派の作品では、国芳は別格なので、国芳を除くと、意外と多く展示されていたのが、国芳の兄弟子で最大のライバルとも言うべき歌川国貞(三代目 歌川豊国)でした。当時江戸っ子に最も支持された人気No.1は、北斎や広重、国芳でもなく国貞だったのです。国貞の青年期である五渡亭時代の役者絵は、国貞の若さもあってか粗削りながらも、力強い筆裁きが印象的でした。

歌川国貞「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」

私の一押し 豊原国周

その国貞の一番弟子で、私が個人的に一番好きな絵師と公言している豊原国周の武者絵は、とても貴重でした。キャリアの殆どが役者絵だった国周の珍しい武者絵。私も思わず頷きながら鑑賞しました。なかでも国周「相馬良門古寺之図」は、通称“かしゃどくろ”として知られる歌川国芳の代表作「相馬之古内裏」と同じ一コマを描いたもので、とても印象に残りました。因みに豊原国周に関して、以前noteにて書かせてもらいましたので、ご興味あれば下記リンクにアクセスしてお読み頂ければ幸いです。


豊原国周「相馬良門古寺之図」

真打ち 歌川国芳

そして真打ち、国芳登場。圧巻とも言うべき作品の数々は、本当に観る側を惹き付けて止みません。躍動感溢れる作風は、まるで絵が動き出して、紙面から飛び出しそうでした。どの作品を観てもカッコ良いですね。さすがです。また弟子の芳艶や芳虎の作品も良かったです。

歌川国芳「西塔鬼若丸」
歌川芳艶「頼光足柄山ニ怪童丸抱図(部分)」

最後の浮世絵 月岡芳年

最後は、その国芳の一番弟子の月岡芳年。今や師匠国芳に負けず劣らずの存在になった芳年の作品は、国芳の作品の進化形と言うべき内容です。芳年ならではの、気品と美しさに溢れた「藤原保昌月下弄笛図」は、吸い込まれてしまいそうになります。以前、テレビ番組NHK教育「日曜美術館」内で月岡芳年の特集がされていた時に、月岡芳年のコレクターとして知られる日本画家 西井正氣氏も絶賛されていました。

月岡芳年「藤原保昌月下弄笛図」

と言う事で、続きは会場に足を運んでお楽しみ下さい。

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