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深夜1時、叩き起こされて

高校卒業以来会っていなかった高校時代の友人がフランクフルトの近くにあるマンハイムに住んでいると連絡をくれ、せっかくなら会おうということで1日マンハイムを楽しんだ、とある土曜日。帰宅して、心地よい疲れを感じながらベッドですやすや寝ていました。
そこに突然鳴り響いた火災報知器のサイレン。私は比較的眠りが深くて、一回寝るとなかなか覚醒しません。そして疲れていることもあってぐっと深く寝ていたと思うのですが、それを覆すほどの爆音。半分寝ぼけながら、夢であるのか現実なのかを彷徨い、楽器と家の鍵と携帯を持ってダウンコートを羽織って部屋を飛び出しました。(実は飛び出す直前に自分の部屋だけが鳴っているのではないかと疑ったり、自分が寝ぼけている可能性を考えて、家のドアのドアスコープで廊下の様子を見ていました、笑)どうやら騒がしい。まさか火事?日本人としての防災意識から、ちゃんと非常階段を降りて外に脱出し、わらわらと集まる住人たちに紛れて様子を見ていました。しかしながら、建物が燃えている様子はないし、煙も感じないし、サイレンが鳴っているのが2つの階だけ。加えて、現在のドイツは夜の気温はグッと氷点下まで冷え込みます。パジャマ(なんとかボアスウェットにズボンだけ履き替えた)にダウンコートでは寒く、一旦戻ることに。しかし、耳を塞ぎたくなるほどのけたたましいサイレンの音に耳が耐えられず、階段で楽器を抱えながら他の住人たちと途方に暮れました。

さらに重なってしまった、土曜日の夜から日曜日というタイミング。ドイツは日曜日はお店が閉まり、サービス関連もきっちりお休みとなります。いわゆる安息日というもの。管理人に電話をかけても、カスタマーサポートセンターに電話をかけても全く連絡がつかない、というまさに「詰んだ…」という状況。誰かが万が一の可能性と、火災報知器を止められる知識を持っているのではないかと考えて消防に連絡をし、完全防護服の消防士さんが4人えっちらおっちら階段を登ってきてくれました。しかし、火の元は見つからない上にどこの火災報知器が引き金となって全体に異常をもたらしているのかはわからない〜と言って、しばらくすると帰ってしまいました。なおも鳴り響くサイレンに辟易しながら、同じ建物内に友人がいる人は枕を持って避難、ツワモノはAir Pods ProにSONYのヘッドホンをつけて寝るわと部屋に戻った人も。しかしながら30分ほどすると再びエレベーターホールに戻ってくる人が大多数でした。私は最初からほぼ諦め、自分の耳のためにも良くないので階段に座りながら楽器を抱えてひたすら待つことに。朝9時から学校の練習室で練習と10時からリハーサルの予定があったのでできる限り体力を温存しておこうと思い、うつらうつらとしながらも待つことに徹しました。
そこに仲良くさせてもらっているお隣さんが私のことを見つけてくれ、おしゃべりの相手になってくれたり、ドイツ語での情報を英語に翻訳してくれたり、はたまた私の純粋なドイツ語の疑問に答えてくれたり、気を紛らわすのに付き合ってもらいました。

サイレンが鳴り始めて2時間近く経ち、部屋に戻っても特に問題はなさそうということから、赤と白のワインとグラスを持ち寄ってその場にいた住人たちと深夜のワインパーティーがエレベーターホールで開催されました。
立地故に学生が多く私以外の学生はほぼ、とある大学の学生ということで聞きなれない分野の話をたくさん聞かせてもらい、逆に音楽大学の学生である私はいろんな疑問に答えたり、この前記事に書いたように「部屋で練習しているのだけど音は大丈夫?」ということを聞いてみたり。比較的防音がしっかりしているのか、うるさいと思ったことはないし、むしろ音楽家が住んでいるとは思わなかった!という意見が多かったです。また、話を聞いている限り真面目な学生さんが多いのか朝から晩まで授業と図書館で勉強をしているから昼間に音を出していたとしても、そもそも家にいないのかなあいうような雰囲気でした。音楽、楽器に対して好意的な人が多くてほっとしました。

4時、5時と過ぎ、ついに6時。ワインパーティーをして、話をしていたのですがそろそろなんとかしないとということで、日曜日でも空いているパン屋さんへこのまま皆んなで行こうという話にまとまり、なおも止まらぬサイレンに耳を塞ぎながら部屋に戻り準備をしてから冷え込む朝の外へ繰り出しました。パン屋さんで思いつく限りの場所に電話をしたのですが、一向に解決策は出ず、再び途方に暮れる始末。テストが迫ってきているとのことで住人の学生は勉強がしたい…そしてとにかく寒いからどこかに避難しよう…ということで、住人が多く通う大学に音大生の私も入れさせてもらうことに。広々とした校舎と音楽大学にはない設備にわあわあと驚きながら(完徹のテンション&目はガン開き)滅多に機会がなければ入れない海外の他大学に潜入しました。私もかなりリハーサルの予定が詰まっており、勉強の量も多いので、iPadを広げさせてもらってリハーサルの準備や各所への連絡をテストに追われている学生たちに混ざって朝活というか徹夜明けの勉強をさせてもらいました。
私は9時から自分の大学に行く用事があったので、サイレンについては後の人たちにお任せすることにして、学校へ向かうことに。予期せぬ形での徹夜。リハーサルに響かないか不安でした。体力には問題がない私ですが、流石にごりごりと精神を削られていたこともあり、リハーサルを終えた後は他のメンバーに少し心配されるくらい顔色が悪くなっていました…とほほ…

リハーサルもなんとか乗り切り、12時間くらい経ってるしもう流石に大丈夫だろうと思ったものの、未だ響き渡るサイレンの音を聞きギョッとしました。うん、ドイツ。見事に日曜日はどこも空いていないから何も対応できないのね…と遠い目。何人かの住人と寝不足の顔を突き合わせながら、どうしようね…と話していたところに、再び他大学の学生さんが図書館に誘ってくれ、再び外へ。
みんなで黙々と勉強をしていると、住人の1人から「サイレン止まった!」との連絡が。
やったあああ、と喜び合い半日以上鳴り続けたサイレン事件は幕を下ろしました。

予期せぬ徹夜は思ったよりも身体に響きました。その日は泥のように眠ったものの、次の日やその次の日までなんとなく身体が重たい状態が続き、体調管理の重要性や睡眠の大切さをしみじみと実感しました。
寝ているけれども、頭がすっきりとしなくていつもなら聞こえるはずのドイツ語や英語が聞き取れなくて悶々としたり、なんだか生活で空回りしていたり。1週間かけてようやくリセットされたような気がします。

それでも徹夜と引き換えにたくさんの住人の人たちと夜通し話せたり、真新しい分野の話を聞いたり、楽器のことを話せたりできたのはこのサイレンのおかげなのかなあと、私にとってはこの徹夜すらも良い思い出です。
さあ、次はどんなことが起こるかしら!笑

Ciao!

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