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Bookレビュー「深澤直人/デザインの輪郭」


こういう本に出会いたかった。
こういう人に出会いたかった。
こういう見方に出会いたかった。

社会人になって数年目のころ、プロダクトデザインに興味を持ち、それ系の雑誌やムックを読んだり見たりしていた時期があった。
そのときもそうだし、この本を読んでも思うのは
「美的センスを持っている人や芸術系の人はすごい」
ということだ。

何がすごいかって、

・視点が面白くて、斬新なこと
・多くの人が気づかないところに気づくこと(当たり前を疑うこと)
・具体と抽象の行き来できる思考を持っていること
・デザインすること
・自分にはない言葉を持っていること
・生み出していること

などなど、ここでは書き尽くせないが、瞬時に思いつくだけでもこれだけある。

本書を読んでいても、それらと同じような感触を得た。

深澤さんは工業デザイナーとしても有名な方。
書いてある文章はとても平易にシンプルに書かれているのだけれど、感覚や概念のことについて私には理解できないこともあった。
それは残念ながら私が体得していないもので、習得できるかさえわからないことだからだと思う。
それが神秘的にも感じるし、羨ましくもある。

世界がどんなふうに見えているのか。
どんな美しさが秘められているのか。
大人になっても、純粋な心の目があるということなのだろう。
子供が純粋な目を持つのは当たり前だが、
年を重ね、知識と経験を積んだ大人が、世界をフラットに見るということはどういうことなのだろうか。
どうしてそれができるのだろうか。それが不思議でしょうがない。

ただ、読んでいるとその空気感は伝わってくる。
森の奥にひっそりと存在する泉のように、水は湧き出て常に澄んでいて、誰にも侵されていない感じ。洗練されていて、静かな時を育む。
そういう心の置き方をしている。
自分でも書いていて何だか分からなくなってきたけれど、そんな感じがしている。

何の変哲のない風景の中にも、何かこう、輪郭があるとか。
ものがあって、人が動いた跡があるとか。
見えないけど、たぶん僕らにはシェアしている何かがきっとある。
(中略)
例えば石ころが置いてあっても、それはそこに何かの力が存在しているということを、人間は、特に日本人はみているのかなって。
わからないということを目的にしたい。
わかったような気になるのだけれど、
結局よくわからないという、ぼあっとした感じがこの本で出ればいい。

デザインの輪郭/深澤直人



ちょっと方向性は違うし脱線するけれど、共通点がある人といえば岡本太郎だ。
彼の著作物や文章=血と肉であり、動的なパワーが感じられる一方で、とことん冴えている明晰な頭脳の持ち主、という感じがする。
クールな頭脳と熱いハート。…これ、学生時代に先生たちからよく言われてたなあ。
自分はそんなカッコいい大人にはなれなかったけれど、でも自分が思う「カッコいい人」の基準はブレていない。
私が最近ハマっている米津さんにも同じようなことを感じている。
だから強烈に惹かれるんだろうな。

またこれについては別のレビューで記したい。




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