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挫折本レビュー「カズオ・イシグロ/遠い山なみの光」

世の中には、挫折したときにこそ読む本というべきものがあるだろう。
もしかしたら、タイトルを読んでそのような思いでこの記事を訪れた方もいるかもしれない。
そういう方には期待外れになってしまうが、そうではない。

ここでは読むのを挫折した本=挫折本という定義にしたい。
本当は読了してからレビューを書くべきだと思うが、途中でお別れしてしまった本もそれはそれで「出会い」には変わりないので、足跡を残しておきたい。

この本を読もうと思ったのは、生物学者の福岡伸一さんがおすすめしていたから、それだけの理由に尽きる。
福岡さんのお話を聞いていると、思考が整理されていて話が滔々と流れ、かつ傲慢な感じが全くないので、聞いていて飽きない。
全くの専門知識がない人にとっても聞けてしまう、そんなミラクルで聡明な方だ。

そういう人に少しでもあやかりたいと思い、おすすめ本を読んでみたところだがやはり私にはハードルが高かった。
まず、どこが面白いのか分からない。我慢してこの先面白くなるかと思っていたのだが、その兆しがない(自分が見いだせていないだけだと思うが)。
そのうち、煩悶して「苦行と思って最後まで読むべき」「今の自分には読めない、辞めるべき」の相克する雑念の間をしばらく逡巡していた。
睡魔も襲ってくる。
これは駄目な受験生パターンだ、このままいくと苅野勉三さんのように何浪もしてしまう。
そう思い、第5章に入ったくらいのところで挫折。

遠い山並みだけは感じ、光は見えぬまま本を閉じた。


他の方の感想が気になり、ネットで徘徊していたところ感心した。
やはり読者によっては作者の意図を汲んでいると思えるものや、読みやすくて一気に読み終えたという人もいる。
私が「この雑談の場面は必要なの?」と思った記述も、「この場面があるから良い」というような感想があって、感度の違いをまざまざと感じた。
と同時に、私と同じような感想の人もいたりして、納得というか変なところで共感もしてしまった。




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