見出し画像

【米大統領選挙】アイオワ・コーカスの持つ意味

米大統領選挙を追う者にとっては、アイオワ・コーカスは避けて通れない。

アイオワ州はノーマンロックウェルの描く古き良きアメリカを想起させる、農業、酪農、畜産が盛んで教会を中心にコミュニティが出来上がった人口約320万人の州だ。白人が87%を占め、福音派(Evangelical)の政治勢力が強い。

アイオワコーカスで勢いをつけたオバマ大統領選出の頃までは、赤(共和党)と青(民主党)の双方が混じるパープルな接戦州だったが、昨今は州議会、州知事、連邦上院議員も共和党で真っ赤だ。

予備選挙の皮切りとなるコーカスは、真冬の平日の夜に行われ、参加率は登録党員の2割程度だ。コーカスに参加する人たちの多くはすでに複数回各大統領候補と会って話している程にコーカスという民主主義制度に熱心だ。1候補と5回会って握手してからではないと支持を決めないという有権者もいる。

各大統領候補は、コーカスの日程目掛けて前年からアイオワ詣をする。州のステートフェア等の大きなお祭り、町のスポーツバーやカフェなど十数人との交流まで幅広くアイオワに通い詰める。コーカスの直前には全米、全世界からメディアが押し寄せて、アイオワ州各地は政治の祭典となる。その経済的効果はコンベンションだけでも6億円相当(420万ドル)だという。

アイオワコーカスの仕組みを理解するのは、政治に熱心なアイオワ州民と国内政治研究者や一部政治記者に限られる。州都デモインのドレーク大学で全米の新人政治記者のためのアイオワコーカス講座が開かれるほどだ。

デモインのドレーク大学のゴールドフォード政治学部教授が言うには、アイオワコーカスとはその時の選挙戦の温度感を測る瞬間温度計である。コーカスで事前の期待を上回る、ということがその後のニューハンプシャーやサウスキャロライナの予備選挙の勢いに繋がる。
コーカスは大統領選挙の行方を占うものではなくて、多数の候補をふるいにかける役割を持つ。3人に絞り込まれるThree tickets とも言う。

コーカスとは「寄り合い」と訳しても良いだろう。各町区内会ごとに公民館や学校、または誰かの家に行って合議して各党の登録党員が候補者を選ぶのである。

共和党のコーカスでは参加者は紙に支持者を書いて提出する。その結果を州共和党委員会が集計するので比較的シンプルだ。
民主党は支持者ごとに部屋の片隅に集まるという形で上位候補者を決める。参加者の15%以上の支持人数が集まらない候補はその区では脱落となる。全ての候補者が15%以上となるまで続けられるため、候補の脱落が決まった後は、15%以上の候補の誰かに支持を移してそのグループと共に部屋の隅に立つ。
民主党のこの複雑で時間がかかる候補者選びは2020年にデジタル化の導入がうまくいかず集計に大混乱を来たし、今回は民主党はコーカスを実施しなかった。

コーカス史上最も寒い日となった今共和党コーカスではトランプ候補が51%で2位のデサンティスと3位のヘイリーを大きく引き離した。
AP調べによるとコーカス参加者は110,298人(2016年には186,000人)。
州内登録有権者数は2,083,979人、内共和党718,901人(34.50%)、民主党631,689人 (30.31%)。(https://independentvoterproject.org/voter-stats/ia)

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?