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パートの「年収の壁」のリアリティはどこにあるのか?

男女間の賃金格差の大きな要因として、女性の非正規社員の割合の多さがある。特に、結婚や出産によってキャリアが閉ざされた女性が、パートとして扶養家族に収まる範囲で年収を調整することが格差の要因として、政府の懸案事項となっている。非正規社員の所得が引くことから賃金格差が生まれるのを是正しようという試みは、ここ数年で様々な手段が講じられてきた。有期雇用の無期転換や同一労働同一賃金、最低賃金の引上げなど、非正規社員の所得向上を狙いとしている。施策の効果のほどは、賛否両論渦巻いているが、狙いだけはシンプルだ。そして、パートの年収の壁を是正するための取り組みにも着手を始めている。

内閣府の試算では、希望通りに働くことができていない人が約530万人いるという。そして、年収の壁を是正することで潜在的な労働力を掘り起こすことが狙いだ。加えて、「働きたい短時間社員」と「技能が足りない社員」をあてがうことで、人手不足の解消にも寄与したい考えだ。

しかし、年収の壁を是正するだけで、そう簡単にパートで年収制限をしていた人が変わるのかというと疑問もある。無期転換ルールのときも、同じような試算がなされた。しかし、雇い止めが社会問題となるなど、新たな問題も生み出してしまった。制度を逆手にとって、有期雇用の5年間を契約として、更新をせずに入れ替え続けることで人件費をおさえようとする組織も少なくない。

非正規社員を雇う組織の目線としては、人件費の問題がある。そう簡単に人件費を上げることができない事情もある。人件費を上げたとき、その上昇分は製品やサービスの価格上昇につながってしまう。
また、パートとしても中途半端に規制緩和されると、より少ない人員で現場を回すことが求められ、労働環境の悪化にも結び付きかねない。また、規制緩和の条件が複雑化すると、規制緩和しても運用されないリスクもある。現状でも、組合に応じてローカルルールが異なり、扶養条件の制度はかなり複雑だ。

パートの「年収の壁」を解決するために、課題の本質はどこにあるのか、リアリティをもった対策が必要だ。


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