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毎日同じような物を食べているフィンランドの食事

フィンランドへ初めて行ったとき、ホテルの部屋に置いてあった新聞を手に取りました。もちろん私はフィンランド語が解らないので、読むことはできないのですが、英語と少しのドイツ語がわかるので、その二つの言語から推測できる単語をいくつ見つけることができるかという好奇心から新聞を開いたのでした。

結果は、一つも見つけることができませんでした。それくらい、これから勉強の為に住もうとしている国は、私の日常からは遠く離れた国という事です。

食事の習慣も日本とは随分と違っていました。
フィンランドの人たちは、語弊を恐れずに言わせてもらうならば、大体毎日同じような献立の食事をしています。
朝食は、温かいオートミールにバターを落として、そこに好みでハチミツを加えたり、ブルーベリーなどをトッピングしたりします。
または、ライ麦パンの上にチーズ、ハム、レタスなどの好みの野菜を乗せて食べます。そして飲み物にコーヒーか紅茶か牛乳。

昼食が一日の食事の中で重きを置いている人が多く、色々な調理法で料理されたジャガイモとライ麦パン、メインに肉か魚料理、野菜料理など。

そして、夕食は朝食のメニューとあまり変わらず、パンとチーズ、ハム、ピクルス類などで簡単に済ませます。

外食は日常的ではなく、誕生日などの記念日や家族のお祝いなど特別な日に行きます。

日本の家庭の食卓には、日本食の他にも様々な国の料理が日本風にアレンジされて並びますが、フィンランドでは来る日も、来る日もスタンダードな食卓です。それにみんな不満もなく、当たり前に食べています。

日本を離れてみて初めて、日本の食卓が華やか過ぎに思えてきました。
ハレの日とケの日の食事が日本にもあったと思いますが、いつの頃からかそれがハレの日ばかりに傾いているのかもしれません。
シンプルな食事を毎日いかに美味しく食べるかということをフィンランドにいる間よく思いました。

しかし、フィンランド人の名誉の為にも、季節の料理というものがあります。その季節がやってくると、必ず食べる伝統の料理やお菓子があります。

年が明けて、2月になると学校は1週間のスキー休みがあります。その2月にはラスキアイネンの日というのがあって、その日はソリの日と呼ばれています。子供たちはソリ遊びを楽しみます。

そして、その日に食べるお菓子がラスキアスプッラです。このお菓子はブリオッシュのような生地の中にアーモンドで作ったマジパンが入っていて、その上に生クリームが乗っています。2月に入ると町のお菓子屋さんや、喫茶店で出されるようになりますし、スーパーでも買うことができます。

大抵は自分のお気に入りの店があり、この時期はどこのラスキアイスプッラがいかに美味しいかという話題に華が咲きます。
私はイルマヨキのネルマルッカという喫茶店のラスキアイスプッラが大好きでした。残念なことに、現在はお店は閉めていて、リサイクルショップに変わっています。

それからセイナヨキにある、ピックパウシという喫茶店です。ここは今も健在でセイナヨキっ子から愛されているお店です。ケーキ類もランチも美味しいです!

そして、同じくこの日にはヘルネケイットと呼ばれる豆のスープを食べます。
乾燥したえんどう豆を使います。このスープは季節を問わずに、木曜日に食べる習慣もあります。その昔、金曜日から断食が行われるのにあわせて、木曜日は栄養価の高いこのえんどう豆のスープを食したという古い習慣が残っています。

フィンランドではサーモンスープ、トナカイスープ、ソーセージスープに並んで、とてもポピュラーなスープです。スーパーには缶入りのヘルネケイットが売っていて、家でお鍋に移してすぐに食べられます。

でもやはり家で作ったヘルネケイットが一番おいしいと思います。それぞれの家庭の味というものがあり、豚肉を入れるところもあれば、入れないところもあります。そして、このスープにはシナッピと呼ばれるマスタードを食卓で自分の好みの量をスープがよそられたお皿の中に落として食べます。

最初にこの食し方を見た時、スープにマスタードを入れるの?とびっくりしましたが、だまされたと思ってやってみると、味が引き締まるのと、スープの粘度が増してよりトロトロとします。

フィンランドのマスタードは殆ど刺激的な辛味を感じさせず、どちらかというと、酸味とはちみつのような甘みの方が舌に残るやさしい味です。


この2月のラスキアイネンの日に食べるヘルネケイットやラスキアイスプッラの他にも、1年の内の様々な行事に即した料理があるのです。その時期にしか登場しない食べ物には、食べる楽しみが湧きますし、季節を感じることができます。

(この文章は京都の豆とスパイスのお店をしている楽天堂さんから発行されている楽天通信に寄稿した文章に加筆しています。)


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