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高級セダン、もはや伝説?

メインストリームから消える「高級セダン」


昨年末に、ホンダのフラッグシップである「レジェンド」が国内生産および販売を終了した。

ホンダレジェンド(2021年型)

表向きは、国内生産体制の見直しとしているが、日本の高級車市場の変化についていけなかったということが、その本当の理由である。

セダンという絶滅危惧種


そもそも、セダン型の国産車は、2022年5月時点で、以下のラインナップが残るだけとなった。

  • トヨタ クラウン

  • トヨタ カムリ

  • レクサス LS

  • レクサス IS

  • トヨタ カローラ

  • ホンダ アコード

  • マツダ 6(旧称アテンザ)

  • マツダ 3(旧称アクセラ)

  • 日産 シーマ、フーガ(兄弟車)

  • 日産 スカイライン

  • スバル インプレッサ

  • スバル WRX

と、おおよそ10数車種ほど。
しかも、日産がシーマ・フーガを生産終了する旨表明しているので、まさに絶滅危惧種である。

現行日産フーガ

高級車の利用シーン


国内の高級車の使われ方は、2つに分かれる。

  • ショーファードリブン型

  • ドライバーズ型

    ショーファードリブン型とは、企業の重役や政府の要人といった人物を乗せ、専門の運転手が運転するような高級車である。
    一方、ドライバーズ型とは、オーナーが自ら運転して、週末の近距離旅行やゴルフなどのレジャーに使う高級車である。

前者は、クラウンやセドリック(のちのフーガ)が、後者は、スカイラインやマークⅡがその座を長く務めていた。

<ショーファー型高級車の象徴>
8代目クラウン(1987〜1991年)
<ドライバーズセダンの代表格1>
5代目トヨタ・マークⅡ(1984〜1988年)
<ドライバーズセダンの代表格2>
6代目 日産スカイライン(1981〜1985年)


ビジネスマンの移動時間の使い方の変化

かつて、移動時間は車窓を眺めたり、音楽を聴いたり、せいぜいテレビでニュースを見る、業務の電話する、ぐらいであった。

自動車電話(イメージ)

しかしながら、IT技術の進化とともに、OA作業全般はもちろん、ZOOMでのリモート会議など、移動中でもほぼ執務室と同じ業務ができるようになってきたこともあり、ショーファードリブン型のメインは、アルファードのような、ワンボックス型高級車にシフトしてきた。

トヨタアルファードVIP仕様(カタログモデル)
トヨタ アルファード(現行型)

ドライバーズカー市場に革命児あらわる


時代の流れで、ショーファードリブン型のニーズに適さなくなった、旧来のセダン型高級車はどうするか?

元来ドイツ車が国内でも大きなシェアを得て、先行者利益が大きく、後発には不利なレッドオーシャンである「ドライバーズ型の高級車市場」に進出せざるを得ない状況に追い込まれた。

しかも、そこには今までなかった、新しい2つ種類の強烈な革命児が現れて、高級車市場のブルーオーシャンを開拓し始めた。

革命児の一つは、SUV乗用車。
トヨタ・ハリアーのような、乗用車ベースのオフロードカーっぽいボディーを纏った都会派SUV系や、ステーションワゴンをリフトアップしたスバル・アウトバックなどのクロスオーバーSUV系が、新しい乗り物として、若い経営者のドライバーズカーとして、もてはやされることになる。

<都市型SUVの先駆け>
トヨタ ハリアー(初代/1997年〜)
<クロスオーバーSUVの先駆け>
スバルアウトバック初代(1998年/邦名レガシィ・ランカスター)

そして、もう一つはここでも、ワンボックス高級車である。
ゴルフに行くにも、4人分のバックを積んで、みんなで出かけることができるのも魅力的だったし、アルファードのような乗用車ベースのハイトワゴン車は、乗り心地もセダンと遜色なく、この分野でもセダン型から大きくシェアを奪うことになる。
それは、日産がエルグランドを出し、トヨタが慌ててグランビアを出した頃に遡る。

(初代/1997年〜)日産エルグランド

スポーツセダンという選択肢は?


それでも、まだ硬派に、「運転を楽しみたい」と思うドライバーが選ぶのは、スポーツセダン。

本来その立場だった、スカイラインはもはや普通のセダンに成り下がってしまい、残念ながら国内に残っているのは、マツダ6、スバルWRXぐらいだろうか?

しかも、ドイツのメルセデスベンツ・BMW・アウディの3巨頭とガチで戦わないといけないのである。

現行スバルWRX
現行マツダ6

ホンダレジェンドは、どこへ向かおうとしたのか?

NSXを作るぐらいの会社なのだから、スポーツセダンに特化することにハードルは高くなさそうにも思えるし、初代から2代目ぐらいまではまさに、そのあたりのニーズをがっちり掴んでいたように思う。

しかしながら、バブル崩壊後の高級車市場の厳しさがそうさせたのか、はたまた、アキュラブランドが主軸とするアメリカの高級車路線(フリーウェーを快適に走るためのクルマ)が、アメリカ国内で評価されたことが逆に、欧州や日本ではさっぱりの状況が数モデル続いた。

この迷走ぶりこそ、まさにここ20年ぐらいのホンダの低迷と歩調を合わせているように感じる。

トヨタなら、クラウンが20世紀ほどには売れなくとも、アルファードが売れて、ハリアーが売れれば、トータルでより多くのユーザー支持を得ることができているので、問題はない。
しかし、ホンダは国内市場ではオデッセイも廃盤し、CR-VよりもアッパーなSUVも投入できていないので、レジェンドの販売終了は、ホンダの高級車市場からの完全撤退である。


初代レジェンド(1986年デビュー)

ホンダの最先端技術は、このレジェンドから採用するのが、ホンダのしきたり。まさにフラッグシップたる所以。

日本で最初にエアバックを搭載したのも、レジェンドだった。
直近でも、国内の基準で自動運転レベル3を獲得したのも、最終系レジェンドだったし、未だ他に認証を受けている車はない。
だが、販売は必ずしも好評ではなく、レベル3を獲得してから、わずか数ヶ月後には、生産を終了してしまった。

そして、国産初や世界初の技術を盛り込んだ”LEGEND”は、歴史の1ページを飾る、過去の「伝説」のクルマになってしまった。

まさに、名は体を表す?

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