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台風が残した傷跡

 行動規制のない久々の大型連休のシルバーウィークも、スタート直後と終盤にかけて台風が2つも襲来し、台風14号では大雨と強風によって、台風15号は大雨によって、特に九州地方や静岡県では大きな被害が出てしまいましたね•••
 被害に遭われた方々には謹んでお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧をお祈り申し上げます。

 一般社団法人バリュー・リノベーションズ・さの(VRS)が活動する、大阪府南部の泉佐野市でもちょうど4年前となる平成30年9月4日に、約60年ぶりとなる台風21号が直撃しました。
 この台風の勢力の強さを全国に伝えたのは、この映像です。
 まだ記憶に残っておられる方も多いかと思います。

 関西国際空港と泉佐野市とつなぐ、空港連絡橋に台風で高波にさらわれたタンカーが衝突し、連絡橋を損傷させたあの事故です。
 当時は台風の復旧作業で駆り出され、この映像は後で見たのですが、これを見てお分かりのように、かなりの重量のあるタンカーですら自然の力にはひざまづいてしまうほどの勢力でした。
 もちろん、台風21号の被害は、関西国際空港と泉佐野市を結ぶ空港連絡橋だけではなく、VRSが活動する泉佐野市内全域にも大きな被害を与え、電柱はぎ倒され、そのことで停電を引き起こし、電気は5日以上使えないエリアもあり、そのエリアにある高層マンションではエレベーターが使えず、高層階に住む住民は階段で登るしか手段はないだけでなく、電気が使えないことでトイレも使えないといった副次的な被害も出てきました。
 さの町場では江戸時代から残るまちの面影も、瓦や外壁は飛ばされるなどの被害受けました。
 この台風21号が襲来したことで起こっている状況を今回のnoteでお伝えします。

▼町並みが取り壊されていく

 平成30年9月に発生した台風21号(以下「台風21号」といいます。)は、第二室戸台風以来60年近く泉佐野市を含む泉州地域では直撃する台風の被害が無かったわけですが、「和泉山脈があるため泉州地方には台風は来ない」と科学的根拠に基づかない地域の思い込みを植え付けてしまいました。
 確かに直撃した台風はこの60年近くの間でもありましたが、すぐに勢力を弱め熱帯低気圧に変わったりしたため、余計にそういうふうに思い込ませたのだと思います。
 「今回も」と誰もがそう信じていたのだと思います。
 しかし、結果的には大きな被害を受けることになりました。市役所の職員は総動員で深夜問わず災害復旧に徹し、災害の一時的な対応が終わると、次は災害瓦礫の問題が発生し、これ見よがしに自宅にある、いらない粗大ゴミなどを平気で捨てにくる人がいたり風紀が乱れそうになりました。
 こうした時期も過ぎると、次の問題が発生しました。
 それが、被害家屋の復旧です。瓦を飛ばされた家屋の棟数が泉佐野市だけでなく、泉州地域全域に渡るため、瓦の補修が2年待ちという状況にまでなりました。
 その結果、ブルーシートで覆うしかなく、しかもブルーシートはこの近隣では品薄になっており、とても全部の家屋に対応できなかったり、また高齢者が暮らす家屋ではブルーシートも覆えなかったり、やむを得ず、そのままにした家屋も多く、シロアリなどで柱は腐り、取り壊す以外に手立てはない物件も多くありました。
 そして、歴史的な価値のある物件が次々と壊され、江戸時代から伝わる町並みも所々新しい物件が建築されたり、更地のまま放置されたりしました。

さの町場の風景(被害のあった場所ではありません

▼リノベーションまちづくりプロジェクトをする理由

 この台風21号の約1年後から、VRSは活動を始めたわけですが、最初はなかなか活動成果も挙げられず、行政のトップから結果が出ないと予算を打ち切るまで言われてしまい、それに奮起して今では評価していただいているわけですが、それでもまだまだ残したい価値ある物件を活用できずに取り壊されつつあります。
 その要因として、
 ①そこに住んでいないため、隣近所に自然災害などあった場合に迷惑がかかる
 ②とは言うものの、知らない人に貸すとトラブルの元になるので貸したくない
 ③空き物件の管理に訪れるのは時間も必要になるし、面倒くさい
このほかにも色々とありますが、要は適切に管理してくれる信用のおける人がいればいいのだと、今まで貸してもらえない理由を確認するとそう感じました。

 ただ、いまだに平成初期に訪れた「バブル経済」の面影を追う不動産オーナーも少なからずおり、特に泉佐野市界隈でも関西国際空港関連のインフラ整備もあったことから特に土地の値上がりはすごく、どんな土地でも億近くの需要があったそうですが、それを令和の時代になっても頭に思い描く人もいます。
 そうなると、全く使われておらず、固定資産税だけを支払い続け、何も収益を産まない「負」の資産になるわけです。
 「いつか借り手がつけば安い値段で貸さなくてもすぐに元は取れる」と思い込み、10年以上使われていない物件も相当数あります。
 そういう不動産オーナーの人たちに損益計算を示した上で、未来永劫その値段で貸してくれと言うのではなく、お互いが妥協できる点で提案したりします。
 そのことを理解し、自分のことだけではなく、まちのためにと思って、格安な家賃で貸してもらえるのであれば、事業として成り立つわけですし、加えて軌道に乗るのも早くできるわけです。軌道に乗っていけば段階的に家賃を上げることができ、お互いにとって負担のないものにすることができます。
 人口減少に歯止めがかからない今となっては、働く場や交流の場としての関係人口を増やして、いわゆる昼間人口を増やし、衰退したまちの息吹を与えていくことが地域経済にとっても重要なこととなります。
 地域経済にとっても、町並みの保存の観点からも、リノベーションまちづくりプロジェクトは必要なものと考えています。

リノベーションまちづくりプロジェクトの骨格(©︎VRS)

▼浜街道リノベーション実践塾

 ここ最近、浜街道リノベーション実践塾の開催を告知していますが、この「浜街道」は、和歌山まで結ぶ江戸時代の街道で、大阪と和歌山の県境の孝子峠きょうしとうげを通り、和歌山まで結ぶ街道だったことから「孝子越きょうしごえ街道」とも呼ばれ、大阪・堺から、廻船業などで繁栄した食野家や唐金家の豪商たちの拠点を通リ、紀州・和歌山までつながっていただけでなく、船場のある佐野浦さのうらの港から全国に送り出していた街道でもあることから、江戸時代の経済発展を支えていた重要な役割を担う街道でした。

当時の街道のイメージ

 今回のリノベ ー ション実践塾は、その当時の面影が残る物件を2つ用意して、その物件に新たな息吹を与える、もしくはその雰囲気を踏襲した事業を展開してくれる人や、その実現をサポートする応援団的な存在の方を募集しています。

 まず一つ目の物件ですが、今まさしく泉佐野市の事務所としてリノベーション工事をしている前の物件をお借りした、江戸時代の面影が漂うこの物件。

浜街道リノベーション実践塾の対象物件No. 1
※画像をクリックしていただくと紹介文(FB)に移動します!

 もう一つの物件は、今までリノベーションスクールでもしたことがないと思いますが、VRSとコラボで物件を活用する予定の物件です。こちらはイメージイラストでご紹介します。

浜街道リノベーション実践塾の対象物件No. 2
※画像をクリックしていただくと紹介文(FB)に移動します!

 そして講師の方は、中根利枝さん(合同会社Lights wagamama代表)と、寺脇加恵さん(株式会社Nurse &Co代表取締役)のお二人に、弊社代表理事の嶋田洋平さんです。

講師のプロフィールとスケジュール
※画像をクリックしていただくと事前申込サイトに移動します。

 今回は前回の商店街の物件につながる街道沿いにある物件2つを題材に開催します。
 その位置関係を申しますと、こんな感じです!全て駅からなんとっ!5分圏内なんですよ!

浜海道リノベーション実践塾ポテンシャルマップ

 これだけでは参加のメリットが分かりづらいと言う方向けに、浜街道リノベーション実践塾の番宣(番組ではありませんけどw)をどこかで行いたいと企画中ですのでご視聴お願いしま〜す!

▼お知らせ

 浜街道リノベーション実践塾以外の告知をさせていただきます。

◎なりわいテーブル講演会「まちのこともわたしごと」
 (内容)コミュニティを通じて、みんなで子育てしながら自分ごととして関われるまちへつなげ、そのことでまちへの愛着を深めていく「シェアアトリエつなぐば」などのお話をしていただきます。
 講師:松村 美乃里まつむら みのりさん(つなぐば家守舎取締役)
 日時:10月1日(土)15:30〜17:00
 場所:オンライン(ZOOM)
 募集人数:30人
 参加料:無料
 ※松村さんと調整し、後日配信も受け付けるようになりましたので、事前登録をお願いします。

なりわいテーブル講演会「まちのこともわたしごと」
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◎ミライ・カガヤク・ワークショップ
 (内容)6回のカリキュラムを通じ、自分自身の可能性を広げ、お金のためだけに働くのではなく、人生の価値を上げていくために働くことへとつなげていくワークショップ
 日時:11月5日(土)、11月9日(木)、11月18日(金)、12月1日(木)、
    12月10日(土)、12月17日(土) いずれも13:00〜14:30
 場所:SHARE BASE つむぎや(泉佐野市栄町5番1号)
 募集人数:10人
 参加料:5,000円

ミライ・カガヤク・ワークショップ#3のチラシ
※画像をクリックしていただくと申込サイトに移動します。

▼最後に

 リノベーションまちづくりプロジェクトは、エリアの可能性を広げ、資産価値を上げていくことですが、今回は台風で被害に遭ったことで価値ある物件が使われずに次々に取り壊されていく現状を教訓に、少しでも後世に残し伝えていきたい歴史や文化、そして町並みを現在には必要ないの一言で片付けられないようにしていくことなのです。

 VRS代表理事の嶋田さんが最初に泉佐野市で講演した時の言葉です。

嶋田さんが最初に泉佐野市で講演した時の言葉

 台風などの自然災害が発生してからでは、まちの財産は守れません。
 適切に維持管理してこそ、財産は守れるのです。
 それが我々VRSが活動を続ける理由です。

リノベーションまちづくりは資産価値だけでなく、いろんな効果が期待できます。


サポートしていただけると、モチベーションをもってnoteに取り組めます!(笑)