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【#一日一題 木曜更新】 彼とわたしの胃の関係

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

わたしがあと10歳若かったら。

むすこを産んだのは35歳になる春だった。臨月に入ってすぐ、わかりやすい陣痛と共にすぽんと子は生まれた。お産終了があと20分早かったら夜間料金を取られなくて済んだのに。ち。なんてアレコレ思う余裕があるほど、あっという間に生まれた。

むすこは病院で母乳もお白湯も飲んだ。入院中、わたしが助産師さんにおっぱいマッサージしてもらっている間にむすこがぎゃんぎゃん泣くもんだから、看護師さんが「はいはい、ちょっと待ってね〜」と言いながら白湯の入った哺乳瓶を咥えさせた。むすこはなんでもええわいと言わんばかりに白湯をガフガフ飲んだ。

彼の食欲は産院ですでに始まっていたのである。

半年ほどが過ぎ、むすこの体重の増えが少し悪くなった。夜も少し前よりよく泣くような気がした。育児中の母は、赤ちゃんの体重に神経質なのである。わたしはスーパーの子ども服売り場にて月イチで開催される育児相談会で「体重の増えが悪くてぇ」と、今思えば小さめではあるがむちむちしたむすこを助産師に差し出して訴えた。自分の子しか見えてない母親って滑稽。「んー。元気よすごく。心配ならミルク足したら」とあしらわれて、そうかミルクねとその夜から寝る前にミルクをあげた。

むすこ、すんげぇミルク飲んだ。

母乳も飲んだし50ccでいいか?と哺乳瓶をくわえさせたら秒で吸い尽くされた。うっそ。えっとじゃあもう50…とそれも一気飲み。直後に盛大に脱糞して彼は満足げだった。その飲みっぷりは、母乳が足りなかったせいなのかミルクの味が好みだったのかはよくわからない。彼も記憶にないという(たりめぇだ)。

母乳もミルクもガブガブ飲み、離乳食をあげた記憶がないくらいごはんももりもり食べるようになった。けど体は小さめのまま、彼は3歳から保育園に通うようになった。

彼の「給食人生」の始まりである。

保育士の先生に小学校中学校の担任に、「小柄ながらクラスでいちばん食べます!」と言われ続けた10数年だった。しかし小学四年生まで小柄だった体は、鶏のからあげと牛丼に目覚めてから次第にもっちりどっしりした。中学生になってからはもっちりが上背に変わっていった。

小学生のうちはわりと給食に委ねてきた食事が、中学生になるとそうはいかなくなった。給食で2回3回おかわりしようが、放課後の部活動で何もかもがリセットされる。運動部なもので生意気にもむすこの口から「体づくりが…」なんていう単語も出てくるようになった。

栄養のあるもの、味の濃いもの、ボリュームのあるもの。
ああ、私があと10歳若ければ、揚げ物でも丼でも毎日出してあげられるのに。

悲しいことに、むすこが望む献立とわたしが食べたいものが最近リンクしなくなってきた。そりゃそうだ、アラフィフの胃とティーンの胃が合うわけがない。

7月も下旬。
悩ましい胃の問題を抱えたまま、わたしたちは来週から夏休みを迎える。恐怖。





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