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第9回 映画『アフターサン』を語る!!〜「好きな場所で好きなように生きなさい」もう会えないかもしれない父が娘に伝えた言葉にはどんな意味があったのか?永遠の別れとは存在するのか?観終わった後のこの言葉で表現できない巨大な余韻を少しでも解きほぐしていった先に何があるのかを考える!!

くに:観たあと2〜3日くらい頭から離れなかったアタシ。

たけ:感想を言葉で表現できないね。こんな映画初めて観たかも。。。
言葉で表現できないのに、観たあと語りたくなる映画はマチガイナイデス。

くに:ストーリーを簡単に言うと、お父さんと娘の夏休みの風景、その当時のビデオテープを大人になった娘が見返している。基本的にそれだけなんだよね、、。お父さんの名前はカルム、娘はソフィ、11歳。カルムは離婚していて離れて暮らしているんだけど、夏休みに二人でリゾート地に旅行しに行くんだよね。基本的に楽しそうなんだけど、ところどころで表現されるのが、カルムが精神的に病んでいるであろうことを示唆しているシーン。ソフィはそれにはっきりと気づいていて、でも大好きなお父さんとの旅行だから、それには触れようとせず、そっとしておきながらも楽しもうとしているよね。

たけ:で、その旅行も終わって、最後に空港でお別れして終わり、なんだよね。ソフィがその時の旅行のビデオテープを見ているシーンがあるんだけど、おそらくその時はカルムと同じくらいの年齢になっていて、同性パートナーと赤ちゃんと一緒に暮らしている、ってゆう設定だね。

くに:お父さんがその後どうなったのかとかは一切描かれないんだけど、大人になったソフィの表情からして、大人になった彼女なりの悩みがあるような印象で、もしかしたらあの時のカルムの悩みや焦燥が少し重なっているのかもしれない、というような感じだったね。

たけ:カルムが何に悩んでいるのかも具体的に全く描かれないんだけど、ところどころ出てくるシーンからして、こう、、、自ら命を絶ちたくなるような気持ちになっていたように見えたね。そういった時は、カルムの背中が印象的に写されていたね。

くに:この観終わった後残るデカイ余韻をなんとか言語化したいよな。感動でも興奮でもないんだよね、なんなんだろこの気持ち?(笑)

たけ:無理だわ〜それは(笑) いいんじゃない?言語化しなくて。人生まさにアンビバレントなものでしょ?

くに:オッケ(笑) たけはズバリコレが刺さった!というポイントある?

たけ:ん〜一つは、、、、、、「大切なことはほとんどの場合、過ぎ去った後に知ってしまう」っていうすごく残酷な人間の性、みたいなものを父と娘っていう関係性をフィルターにして思い知らされたよねえ。「あの時、それをわかっていたら」っていうの、たくさんあるよね。多分この後悔からは逃れられないんだと思う。自分たちが不完全な存在であることを受け入れる、というよりも、いつも忘れずにいれたら、些細なことで傷つけあうことも少しは減るんじゃない?っていうメッセージを感じました。例えば一人暮らしを初めてした時、実家のありがたさを知るように、今まで当たり前と思ってたものが、ある時点で当たり前じゃ無くなった時に生まれる感謝の気持ちだったり、その時はわからなかった気持ちが年月を経て、ある時わかるっていうように、その人と同じ立場や境遇に実際にならない限り、本当の痛みや理解はもたらされない、みたいな。だから、その長い時間軸があるから、見終わった感想をズバッとまとめて言語化できないんだと思う。言語化できない理由は言語化したけど、いかがでしょう?(笑)

くに:頑張った!(笑) 「大切なことはほとんどの場合、過ぎ去った後に知ってしまう」というのはホントそうだね。でもさ、今まで学校でも家庭でも大人からもこういったことを教わったことないよね?「いいかい?大切なことはほとんどの場合、過ぎ去った後に知ってしまうんだよ、だから、、、」っていう事を前もって理解していれば、色んな事に感謝できて、色んな人を大切にできるような気がするんだけど、どう思う?

たけ:多分、それは無理なんだと思う。なぜなら、言葉でわかっていても、すぐ忘れるよね多分。実際に経験しないと、その大切さって本当の意味で
理解できないと思わない?実家暮らししてた時に、「一人暮らししたら、家事を全部自分でやらないよいけないから大変だよ〜」って親から言われたけど、実家にいる間その大変さを身に染みて理解してた?? 学校で「命は大事です」といくら言葉だけで言われても、その大切さって理解してた?
大切なものを失った後でしか、悲しみや有難さといった感情はやってこないよね?

くに:そーだな。

たけ:だよね。 だから無理なんだと思う。実際に経験しないと、本当に大切なことってわからない。そしてそれは1回限りなことが多いよね。それこそ命に関係してくると。BLUE GIANTの回でも同じこと言ってたような気がするな。。価値観が本当に変わるのは、実際に経験することでしかないっていうことだよね。今回の場合だと、大人になって当時のカルムと同じくらいの年齢になったソフィは、当時の事を思い出して、当時のカルムの悩みや焦燥が少し理解していたのかもしれないね。

くに:真理だね。他にはある?

たけ:ん〜そことつなげていうと、、、、、例えばカルムのように、自分が父親で実際に娘がいて、大切だと心の底からわかっているとしても、あるきっかけがトリガーになって瞬間的に自ら消えてしまいたいと思ってしまうこともあるってことで。誰かと大ゲンカして、そいつを殺してしまいたいと思った10分後に、知らない誰かと笑顔で挨拶していることもあるよね。俺らの生活って、時に一瞬で落とし穴に落ちそうになったり、そういったグラデーションになっていて、アフターサンはその一部じゃなくて全部を描いてたところが刺さったんだと思う。そう言ったグラデーションの中で生きてる以上、俺のようになってしまうことがあるんだよっていうのをカルムは言いたかったのかもしれないけど、小さい娘には当然そんな複雑なことわからないから、直接は言わないわけで、その代わりにいう言葉が、「好きな場所で好きなように生きなさい」っていうセリフだね。「あなたがあなたらしくいられることだけをお父さんは望んでいるよ」ってことなんじゃないかな。泣けたね〜〜、、、コレはホントしんどかった、、、。さらに、ソフィがカルムに「離れていても見ているこの空をは一緒だからさみしくないよ」っていうじゃない。「好きな場所で好きなように生きなさい」っていうカルムの言葉に対するアンサーに聞こえて本当に泣けた、、、。「私の心の中にずっといるよ」みたいな感じだとストレート過ぎるじゃない?ソフィが心を病むカルムをそっと見ている時の絶妙な距離感とすごいリンクしてて、11歳のソフィにはカルムの気持ちは全てわからなかったかもしれないけど、カルムの伝えたいことはわかってたのかもしれないね。ダメだ泣けてくる。。。

くに:完全に「マイ エレメント」のラストとかぶるな。

たけ:最近の映画、色んなとこですげーリンクするよね。誰かが言ってたなあ、時代が悪くなる時に、良い映画が生まれるって。あと、エンディングで流れるOliver Coatesの”One Without”という曲、、、これが、、、 もう説明できないので観て欲しい!

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