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【アーカイブ】レビュー:『魔女卵』と渡辺祐子

2017年、CS・東映チャンネルの和泉聖治監督特集で、ジャッキー・チェン(成龍)主演『成龍拳』(77年)の封切時同時上映作だった『魔女卵』(84年)がOAされてたので、録画して見てみました。
当時田舎の東映系封切館で鑑賞するも、詳細の記憶は全くないですし、そもそも今回も映像資料目的で録画したんですが、いざ見たら物凄く真っ当な青春映画で、それはウレシい誤算でしたね。まぁ大傑作とスタオベするほどのシロモノではないですけど。
”不良”をテーマにした東映のプログラム・ピクチャーとはいえ、一連の「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズが出てくる前の作品です。なので前年にヒットした『BLOW THE NIGHT 夜をぶっとばせ』(83年)の流れを継いでおり、実在した大阪のライヴハウスやへヴィメタバンドが大挙登場するあたりは確かにセミドキュメントっぽいのですが、本編の物語自体は前述の通り完全なフィクションです。
ただ時代感覚がビミョーにズレている当時の邦画(しかも東映w)ですから、ロックだの和製シド&ナンシーを気取っていても主人公の青春模様がどうみても「神田川」チックだったり、バンドメンバーとの恋に破れたヒロインが大阪へ還る場面のBGMが女性ヴォーカルの「大阪で生まれた女」というベタ過ぎる演出には苦笑しきり。"映画で見せる(当時)最新のロック・シーン"では全然なかったです。
主演ヒロインの渡辺祐子は、チャーミングで魅力的でしたね。彼女は当時18歳、相手役だった我王銀次同様、本作がデビュー作でした。基本シリアスで硬質なストーリーですが、このふたりの初々しさ、背伸びさ加減が、青春映画としての愛らしさを表出させてもいて、彼らをキャスティングしたことは成功だったと思います。
そして渡辺祐子は、本作公開直後、TV「ザ・ハングマン4」の紅一点メンバーとしてレギュラー出演を果たします。過去作の夏樹陽子や早乙女愛に比べれば容姿も色気も地味なことこの上なかったのですが、若い彼女を売出そうとスタッフも相当腐心したようで、相応に出番は多かったです。ただ残念ながらその後が続かず、ドラマのゲストや映画の端役をこなしながらミレニアム前後まで女優業を踏張ってたようですが、既に引退しているようです。
世間的に見れば限りなく"一発屋"っぽく見えるかもしれませんが、添物とはいえいきなり35mmの映画で主演デビューを果たし、片や若手、片や旬を過ぎていたとはいえ、連ドラで佐藤浩市や植木等と共演したというのは、立派に誇れるキャリアではないでしょうか。
久々に見た『魔女卵』、未だにDVD&BD化がされていない作品ですが、埋もれさすには惜しい1本だったので、いつか再び陽の目を見ることを心から願ってしまいました。

※本稿は、SNS「Facebook」ホームへ2017年6月寄稿した内容を加筆・修正したものです。

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