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ダンスが日常にあるシーン(映画感想文のようなもの)

外出しない一日。プライムビデオの新着映画にTOVE(トーベ)があったのを思い出し、昼過ぎから鑑賞。ムーミンが妖精だと知ったときのなんとも言えない気持ち。こどもの頃テレビアニメが放映されていた気がする。いつものようにさほど憶えていないため、知らないまま再生ボタンを押した。

なんとなくだけどトーベが自由な女性で、同性愛者であることは知っていた。物語は戦火で壊れた広めのアトリエを訪れる場面から始まる。父親は名のしれた彫刻家でトーベは未だ売れない画家。戦時中から静かに落ち着けるモロッコに芸術村を作る計画をしていたが恋人が地元のストライキ支援に貯金を充ててしまい頓挫する。お金がない中で、市長の誕生パーティーのイラストの依頼を受ける。依頼者は市長の娘、ヴィヴィカ。背が高くいかにもハイクラスな出で立ちの彼女に惹かれるトーベ。パーティー当日、二人は再会し互いの気持ちを確かめ合うように重なる。トーベは絵画を描くのとは別に自分を投影したイラストを描いていた。それがムーミントロール。部屋でそれを見つけたヴィヴィカは、いち早く彼女の才能に気付きそれとなく本格的に描くのを勧めるが、トーベは拒否するのだった。

厳格で才能ある父親のもとから離れ、アトリエでカンバスに向かうが思うような作品は描けなかったのかもしれない。創作物は作家のものだけど、評価するのはいつだって他者だ。舞台演出をしていたヴィヴィカはムーミンを舞台化しないかと持ちかけ、トーベは脚本と舞台美術を担当した。舞台稽古のとき、役者からなぜムーミンは優しくて怒らないのかと聞かれる。

『ムーミンは臆病なの』

ひとことトーベはそう言った。

恋人には妻が居て、愛するヴィヴィカにはいつも新しい彼女がそばに居た。

舞台は成功し、トーベは大手新聞社にコミックとしてムーミンの連載を打診される。初めての契約にサインをし、忙しい日々をおくった。

彼が妻と別れてトーベの前に現れたとき、トーベはヴィヴィカに絶望していた。思わずプロポーズをしてとせがむ。受け入れて楽しい一夜を過ごすふたり。でも幸せは続かない。心をヴィヴィカに残したままの彼女の態度に、僕はそんなに鈍感になれないとベッドを離れバルコニーへ。そこへブランケットを巻きつけたトーベがゆっくりと近づき体を寄せ合う。

この映画は想像以上に愛し合うシーンがある。
作家と作品は別物だけど繋がっている。
あらゆる場面でレコードに針を落としダンスをする。
トーベの感情がダンスになる。
わたしはそのダンスが好きだった。
日本では日常の中で踊るシーンは少ない。
もし踊っているならうらやましい。
海外作品では自然とリズムをとったりスイングしたりダンスをする。それは鼻歌をうたうくらいのカジュアルさだ。これは何が違うのだろう。私たちももっと気軽にダンスをしたらいいのかもしれない。発散する手段としてのダンス。喜びのだんす。慰めのダンス。そこには音楽があって好きなひとがいて家族がいて友だちがいる。平和の象徴かもしれない。

ラストシーンはトーベ本人がダンスしている映像が流れる。

大切なのは、
自分のしたいことがなにかを、
わかってるってことだよ。
スナフキン

『TOVE』はプライムビデオで配信中です。

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