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緑色の島風〜沖縄ライフありんくりん〜 vol.09|『気軽に「おばぁ」と呼んではいけない 』(2022年10月号)

「オキナワをもうちょっと知りたくなるマガジン『ハイサイ!ウチナータイム!』」に寄稿している原稿を転載しています。最新版はコチラからご覧ください。

「私はあなたのおばぁではない!」

祖母が60代、私が小学校低学年くらいの時だったと思います。
那覇の国際通りに買い物に出掛けバスに乗ろうとした時、運転手さんが祖母に「おばぁ」と呼びかけた事に端を発し、彼女が言い放ったセリフです。

沖縄通の方、そしてウチナーンチュは既にお気づきでしょう。
そうです、親しくはない女性に対して「おばぁ」と声を掛けるのは時にタブーなのです。
私調べにおいては「おばぁ」と言う方・言われる方ともにウチナーンチュ同士であっても、この不文律は絶対。
ましてや「大先輩」のご高齢者が沢山いらっしゃいますから、アクティブな60代の女性に言うのはもってのほかです。

沖縄のおばぁちゃんが「おばぁ」と呼ばれることが全国的に広まったのは、2001年の朝ドラ「ちゅらさん」の平良トミさんがきっかけだったでしょう。
トミさん演じる優しくて可愛らしいおばぁちゃんが、「おばぁ」のイメージそのものを作りました。
でも沖縄のおばぁは優しいだけではありません。
今年の「ちむどんどん」に登場したおばぁ(吉田妙子さん)には息子や孫、男性陣の言い分を一蹴する力強さがあり、家族内でのおばぁの位置付け高いことが存分に伝わってきました。

我が家もご多聞に漏れず、祖母の力は絶大でした。
「母ちゃん(祖母)大好き」な父は長男であるにも関わらず、祖母が亡くなった時はいち早く具合が悪くなり、葬儀の手配が手に付かないほどでした。
叔母の夫である義叔父も「玉城家ではばぁちゃんが一番怖い」と常々。
家長として日頃強く振る舞っていた祖父に至っては、祖母が一喝するとタジタジ。「おばぁが一番怖いさ」と言っていました。

『オバァは善なる者であり、神に近いものであり、沖縄のシンボルである』と書いた本(※)もあるほどに敬われているのが、沖縄のおばぁです。

ですから関係性や年齢などを十分に考慮し尊敬を込めて「おばぁ」と呼ぶのが正しい使い方ということになります。
そう親しいわけでもない、それなりのお歳の女性に声を掛けたい場合は「お姉さん」と呼ぶことにしましょう。

最後に余談です。

三世代同居の家庭に育ったウチナーンチュは、滑らないテッパンのおばぁネタを持っています。
(大阪でいうところの “おかんネタ” のような感じでしょうか)
沖縄県外出身の方にこの記事を呼んでいただけているならば、ウチナーンチュと話す機会があれば、ぜひ「おばぁネタを聞きたい」と話を振ってみてください。
リアルな沖縄ライフを垣間見られることと思います。

(※)『沖縄いろいろ事典』(新潮社/ナイチャーズ 垂水健吾他)


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