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【活動録】第四回カムクワット読書会

導入

こんにちは。カムクワット読書会のTomsongです。
本日、宇佐見りんさんの『くるまの娘』を課題作品にした読書会を行いました。

はじめて満席の四人開催だったため緊張していたのか、写真を撮影し忘れていました。
会場の写真ではないですが、ご容赦ください。

会場にて

本日は横浜駅鶴屋町にある星乃珈琲店にて行いました。
先週の渋谷開催も星乃珈琲店では空いていたので、今回も開始時間の40分ほど前に到着して席を確保しようとしました。
しかし、驚くことに広い席は満席で、待ち状態になってしまいました。
幸い、開始時間の15分前には席が空いたので無事開催できましたが、会場を選ぶ際にもう少し気をつけなければと感じました。

開始前

星乃珈琲店では11時までモーニングサービスがあります。
読書会が始まる前にせっかくなのでミニパンケーキを注文し、美味しいものを食べながらゆっくりとお話をしました。

ミニパンケーキ

今回は第一回読書会(金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』)に参加してくださった方が、友人を連れて参加してくださったことも嬉しかったです。
また、もう一名は紹介形式の読書会に『くるまの娘』を持っていくほど好きな方でした。

自己紹介では「最近面白かった作品やはまっていること」を入れることで、そこから話しが膨らんでいったことも面白かったです。
街にこわさを感じるかという話題では、新宿や池袋のような繁華街のこわさがなくなったが、それ以外の町にこわい場所ができているのでは…という展開に現代社会の闇のようなものを感じました。

宇佐美りん『くるまの娘』

まずはじめに各々の感想を出し合いました。宇佐見りんさんの作品では母と娘の関係性が娘の視点から描かれてきました。
しかし、この作品では娘のかんこが中心的ではありますが、三人称視点で家族それぞれの気持ちが描かれています。そのため、それぞれの痛みが伝わり、誰か一人を絶対的な被害者の立ち位置に据えることが難しくなります。

例えば、弟が変声期にかんこに言われた言葉に傷ついたことは、そこまででかんこが被害者の立場にあると考えていた場合、視点が真逆に変わります。
父親が経験した様々な苦難、母親の前向性健忘、かんこのうつ病。この作品ではひとりひとりが傷つきながら、言葉や行為によって誰かを傷つけています。
それを「自立ができていない」、「互いに依存しあっている」などとしたり顔で言ってしまいたくなる気持ちもありますが、この作品は明らかにそれを拒絶します。

辛い気持ちを誰かのせいにしてしまうことは、実は自分への怒りなのだという話しになり、確かになと思いました。

過去を美化し、昨日まで現在という地獄を生きていることを忘れ、現在という地獄を生きること。辛くなったら逃げだしていいという考え方がある一方で、逃げ続けてしまうと行き詰ってしまいます。逃げてからどうするか。

兄は家族から逃げて結婚しましたが、かんこから「もし、奥さんが母親のようになったらどうするか」と刺されます。
かんこは「くるま」で生活することで、両親とそれまでとは違う形で関係を構築しました。
どちらも家からの逃避ではありますが、家の中で起きていた問題を切り捨てること、別の付き合い方をすることという違いがあるのではないでしょうか。

最後に、冒頭でかんこが屋上へ登るシーンを、わたしは「学校は家のことを、ドアが開かないことは家から出られないことを暗示しているのではないか」と話しました。
すると、窓をながめて見た「窓から落ちていった幻影の生徒たち」と最後の父親とのドライブで「交差点で心中しなかった人たち」が、死というモチーフで繋がっているのではないかという指摘があり、非常に面白く思いました。

ここには書ききれないほどの解釈があり、人が変われば見ているものも変わります。
ひとりで読んでいると「何だかこわいことが書かれている作品だな」と総括してしまいそうになりましたが、誰かと話すのだと思って読むことで「わたしの視点」が言語化され、誰かと意見を交換することで視野が広がります。
読書会をして本当に好きな作品になりました。

メモと万年筆と課題作品

自己紹介で登場した作品

・映画
《ミッドサマー》
《シン・ウルトラマン》
《流浪の月》
《ドラゴンボール超 スーパーヒーロー》
・小説
村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』
・趣味
油絵

最後に

本日はお暑い中ご参加いただき、本当にありがとうございました。
はじめての満席開催、直前まで席が確保できるかわからないなど慌てていた部分もありましたが、楽しんでいただけていれば幸いです。
わたしは非常に楽しかったです。

最近はばたばたしていたこともあり、今後の予定を発表できていませんでした。
今日中にオフライン、オンラインの予定を発表する予定です。

これまで参加してくださった方、この記事を読んで興味をもってくださった方、ぜひご参加いただけると嬉しいです。
それでは、本日はありがとうございました。よい週末を!

おまけ

ここ最近読んだ作品で、『くるまの娘』とテーマが近いように感じた作品のことを補遺として書きます。
ローラ・ラフォン『共犯者』
加害者と被害者の在り方、家族の在り方の描かれ方に近しい点があるように感じました。
一條次郎『チェレンコフの眠り』
宇佐見りん作品の冒頭の書き方が話題になった際に話した作品です。アザラシが歌手になる際に言われた「冒頭で惹きつけなければ誰も歌なんか聴かない」という身もふたもないですが、現代の作品にありがち(と考えられている)ことについて。
山本文緒『自転しながら公転する』
家族とは、幸せとは何かを描いた長編。正直な気持ちである自転と他者から影響される公転というイメージから、問題意識が通底しているように感じました。

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