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【活動録】第11回カムクワット読書会

本日ははじめてレンタルスペースを借りて、読書会を行いました。

会場は歴史を感じさせられる趣のある建物で、廊下から昭和のホテルを想起しました。しかし内装はきれいでした。

会場となったビル



廊下はレトロなホテル風

会場のそばに線路があるため、音がすこし気になりましたが、それはそれで雰囲気があるかなと感じました。

電車

午前の部:小説限定自由紹介形式

堀江敏幸『熊の敷石』

わたしが紹介した作品。先週参加させていただいた読書会アサッテさんの課題本。以前に読んでいたものの、記憶が曖昧だったため、読書会を機に改めておもしろいなと感じて紹介しました。

芥川賞の選評では「物語性が弱い」と叩かれていましたが、だからこそ読者は小説の語りに対して自分自身として向き合わなければならない。そのような強さを感じる作品です。

美文なのですらすら読めるのですが、考えなければならない点が非常に多いと感じました。おすすめです。

石田衣良『美丘』

記憶を失いゆく女性と恋人の物語。発表者の方の「記憶を失った身体は「わたし」ではないのだろうか」という問いかけが印象的でした。

また、記憶を失う前の「記憶をなくしたら殺して」という願いと、記憶をなくした彼女が「見知らぬ誰かに殺される」ことの問題を、考えることなく受動的に行為におよぶ男性をどう感じるか。

平野啓一郎『ある男』

昨年末の読書会に参加してくださった方の紹介本。昨年映画が公開されたこともあり、発表者以外にも知っている方がいらっしゃいました(わたしは積読していましたが、紹介を聞いて読みたくなりました)。

事故死した旦那が、実は戸籍とは異なる人物だった。妻の視点では「愛した人は何者か? その愛は本物か?」という問題があります。

この問題で話がもりあがり、それまでの過程は本物でも、嘘による傷は避け難い……。

辻村深月『嘘つきジェンガ』

町田で読書会を主催している方の紹介本。辻村深月作品に詳しく、さまざまな作品名が飛び出してくるので驚きました。

この作品は、嘘つきとその嘘の崩壊にまつわる3つの作品の中で、中学受験詐欺を扱った作品が話題になりました。

これは親が子供の能力を信用していないことであり、社会的な嘘だけではなく、子供に対しても嘘をついているのだと感じました。受験をテーマにした作品では、東野圭吾『レイクサイド』が話題になりました。

ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

初参加の方の紹介本。昨年、日本で映画化された作品です。

寒いから「夏」の作品を読もうと思ったら「コールドスリープ」だった、という語り出しが非常に面白かったです。

猫の描写に著者のこだわりが強く反映しているらしく、鳴き声も「にゃー」だけではないらしく、気になります。

描かれている未来像も現実感があり、SF初心者でも取っつきやすそうな印象を受けました。

午前の部まとめ

なぜ本を読むのかという話題に脱線したり、紹介している作品から別の作品に飛んでいったり……。また話題になった浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』も面白そう。

たくさんの小説を読む人が集まると、「このテーマならあの作品も……」と無限に読んでみたい作品が増殖します。それが恐ろしくも楽しいです。

紹介本

午後の部:千葉雅也「エレクトリック」

今回は1名の方が参加してくださいました。

はじめに『デッドライン』から続く作品について語りました。それらの作品では主人公がゲイであることが前提でしたが、本作ではアイデンティティが揺らいでいるように感じました。

地方都市を舞台に、黎明期のインターネットによって「当たり前な現実」では見えない世界へ入り込む。それは「ハッテン場」を記した「地図」であり、配線によって「音」がかわるアンプである。

わたしはインターネットと距離をおいて過ごしていましたが、参加者の方がチャットやスカイプ通話に詳しく、ディープなお話が聞けました。

わたしはインターネットからプログラミングを想像し、変数やインスタンス的視点を読解に援用してみました。

同じ作品でも、視点を変えることで別の作品のように読むことができるので、やはり課題作品読書会は続けていきたいと思います。

話は続き……

おわりに

はじめて午前・午後で開催しました。この形式や従来のカフェでの読書会、散歩して朗読する会などを計画中です。

ぜひ、ご参加いただけるとうれしいです。

プレゼントをいただきました!






























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