見出し画像

【活動録】第14回カムクワット読書会

こんにちは。本日、横浜駅から徒歩5分ほどの場所にあるレンタルスペースにて、読書会を開催しました。

午前の部にはリピーター2名、新規の参加者が1名。1名は読書会デビュー。カムクワット読書会でデビューしてくださるのは、主催者としては非常に嬉しいものがあります。

午後の部は、午前から引き続き2名、以前も読書会(今村夏子さんの『とんこつQ&A』)に参加してくださった方、散歩会に参加してくださった方の合計4名。

午前の部

午前の部はわたしを含めて4名だったため、ひとり1~2冊の小説を紹介。

おすすめの本たち

市川沙央「ハンチバック」

わたしが紹介した1作目は文學界で新人賞を受賞した作品。身体障碍をもつ著者が書いた障碍をもつ女性のストーリー。ある種の当事者文学でありながら、主人公がライター仕事でさまざまな人物になりきっているように、最終節で女子大生が文章を書いている場面が挿入される。
それによって、ただの当事者性だけではなく、胡蝶の夢ではありませんが、二重の視点を獲得しているように感じました。
ぜひとも、みなさまに読んでいただき、感想をいただきたい作品です。

ポール・オースター『サンセット・パーク』

柴田元幸さんが翻訳した作品。良い子だった主人公がレールをはずれ(黒い羊になり)、廃屋でさまざまな人物と共同生活を送る物語。
個人的にはオースター作品は積読しているため、どんどん読みたい作品が積みあがります。
4月23日がサンジョルディの日という「本を贈りあう」日らしく、コロナ前に友人にプレゼントされたというお話が印象的。

『ちくま日本文学012 中島敦』

池澤夏樹さん好きな方が紹介してくださった一冊。解説が池澤さん。YouTubeで中田敦彦さんがおすすめしていたらしく、「山月記」以外の作品、「李陵」と「カメレオン日記」が一推し。著者が高学歴であり、女子高で人気の教員だったという話に意外性があり面白かったです。

佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』

深夜ラジオを通じて交流する若者たちの物語。アルコアンドピースのオールナイトニッポンが好きな紹介者の方が、「好きを言語化」することの難しさは、推し活の難しさと通奏低音。芸人ラジオ好きな人は、ぜひ一読すべき一冊と感じました。

佐原ひかり『人間みたいに生きている』

個人的にはサイン会にも参加して、応援している作家さんのひとり。食べることが苦手な自分自身と、主人公を重ね合わせて読みました。さまざまな理由で「残さず食べること」を理想化されますが、年森瑛さんの『N/A』のように、同様にさまざまな理由から食べることを拒むことも否定されるべきではないと感じます。
佐原さんの作品は若者向けのデザインですが、「普通」に異を唱える面があるので、大人の方でも十分に楽しめると思います。

星野智幸『呪文』

寂れた商店街でカリスマ性を発揮する人物を中心に、地域振興活動が信仰のように変化していく、狂っていくさまを描いている。東山彰良さんの『罪の終わり』と比較すると面白いかも、という意見も出ました。

川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

こちらは初参加の方が持ってきてくださったノンフィクション作品。目の見えない白鳥さんに、目の前にある作品を説明する。美術作品の言語化は人によって違いがある。
違いがあることで多角的な視点を獲得し、より豊かな「鑑賞」が実現するかもしれません。想像力とそれを現実に落とし込むことの難しさ。

午後の部

導入

カムクワット読書会は自己紹介から入るのですが、午前中と内容が被ってしまうため、好きなアニメ《PSYCHO-PASS》の話をしました。来月、新作映画が上映されるので、最近は作業や出かける準備時間に流しています。
今日も15話を流していて「紙の本を読みなよ」という名言を聴いてから出かけたこともあり(以下略)。
なんと、他の参加者も知っていて驚きました。本好きのみなさん、ぜひ観てください!!
閑話休題。

川上未映子『黄色い家』

600ページほどある大作。生きづらさを抱える少女たちが、黄美子さんのもとで集団生活を送る。しかし、お金を稼ぐために犯罪の片棒を担ぐようになり……。
わたしになかった感想としては、花が病んでいく物語として読んだ場合、彼女が「回復」していく描写が最後の50ページほどしかないことが気にかかるという意見でした。
社会風刺的エンタメ小説として楽しんでいたため、わたしからは「幸せとは
思考停止か?」や「お金とは何のためにあるのか?」という漠然とした問いと、ありきたりな連想しかできなかったため、「なぜ、れもんを再建しなかったか」や「子供に好かれるタイプの大人」など、話題が展開していくさまが面白かったです。
読んで気持ちよくなるタイプの作品ではありませんが、想像力を拡張してくれる優れた小説だと思います。ぜひ、みなさんもお手に取ってみてください。

今後の予定

5月7日(日) 村上春樹読書会

午前の部は村上春樹さんの小説、エッセイ、翻訳作品。なんでもありで、おすすめの本を紹介(残6席)。
午後の部は村上春樹さんの最新作『街とその不確かな壁』を課題本にした読書会を行います(残3席)。
詳細は下記の記事をご参照ください。

今後行ってみたいこと

一度、読書会のペースと開催形式などを調整します。そのため、5月後半から6月に空白期間が生まれてしまいます。そこで、カムクワット読書会という団体を使って、普段とは異なる活動を行えればと考えております。
例えば、レーベル限定読書会。平凡社ライブラリーや講談社現代文庫、岩波文庫の赤緑帯、小学館P&DBOOKSのおすすめ作品を持ち寄る読書会。
例えば、美術館に集合して、各々で鑑賞した後でカフェなどで感想戦。神保町に集合して、本屋巡り。文学フリマに行く……。
ぜひ、やってみたいイベントがあれば、TwitterのDMやリプライ、このnoteへのコメントなどで教えていただけると嬉しいです。また、課題本にしたい(他の人の感想を聞いてみたい)カムクワットな本(近刊小説)があれば、こちらも教えていただけると嬉しいです。
それでは、本日は本当にありがとうございました!

上島珈琲店で二次会
時間つぶし用に持ってきました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?