期待を捨てることの重要性について

(架空の人物あての手紙形式)中村さん。先日は貴重なお時間をありがとうございました。さて、あなたと先日お話をしている際に気になった点がありましたので、今回筆を取らせていただきました。
 さて、私は思うのですが、あなたを含め、多くの人々はあまりにも多くのものやことを求めすぎているのではないでしょうか。知っての通り、我々人間が一生のうちに築くことのできる財産など、たかが知れています。あなたは、車は派手で高価なもの、食事は貴重で美味なもの、服は周囲から高いと思われるものを身につけたいと発言なさっていました。 
 しかし私は、それらすべてのものが生きる上では、必ずしも必要なものではないと考えます。みじめにも欲求に突き動かされ、懸命に富を築こうとあくせくする人がいます。一方では己の欲求を制御して、全てに満足している人がいます。果たして、どちらが棺桶に入るまでの間、豊かで幸福な人生を送るでしょうか。欲しがること、欲望を持つことは良いことでも悪いことでもありません。ですが、欲望に日々支配される人と欲望を日々支配する人のどちらが幸福なのかは明白なはずです。
 簡潔に申し上げますと、中村さん。あなたは自分への期待や他者への期待をちりかごへと捨てるべきです。満たされない不満や不安を生み出すのは常に期待です。こうあって欲しいという理想は、我々を鼓舞し、前へと進む性質を持ちますが、その理想がどこへ我々を導こうとしているのかを注視すべきです。そして、日々を生きる際に死を意識しましょう。それは忘れられている、最も重要な事実なのです。それではまた機会を共にできる日をお待ちしております。さようなら。


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