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「8人分は(任せといて)!」〜署名のこと〜

「8人分は(任せといてっ)!」

〜署名のこと〜


「もしも嫌だったら、断って下さい。」

「はい、分かりました。
なんですか?」

署名の郵送期日まで

あまり時間がありませんでした。


8歳のAちゃんのママに電話をかけたのです。


「署名のお話しなんです…」
「もしも、署名の協力を
していただけるなら、
お願いしたいと思って、
それで、お電話したんです」



「そうだったんですか。署名?ですか?…何の署名?」


8歳になるAちゃんは、
小さな頃に高熱を出しました。
すぐに病院へ連れて行ったものの原因が分からず高熱が長い間続いてしまったのです。


今は一緒に座る練習をしています。
あぐらや正座、三角座り
いろいろ姿勢で練習です。
自分自身で身体をなんとか支えられるように
腕の力、足の力を鍛えます。
お腹の力、背筋を伸ばす力を
動きに合わせて効率よく使えるように
いろんな体の動かし方や動作を
経験してもらいたい。
一人ではできない部分を
お手伝いです。


うつ伏せで両手を踏ん張り
上半身を持ち上げて
頭をしっかりと上げると
じっとこちらを見つめます。
ニコッと笑ってくれるのです。
Aちゃんはママと一緒に
身体を動かす時間を
楽しみに待っていてくれる
ようでした。


Aちゃんのママに
電話越しに事情を説明をしていました。

「介護保険の改正のことなので…
医療保険で訪問させていただいている方とは
直接は関係ないのかと考えていました。」


「けれども…
制度が決まってしまうと
医療保険の方までもが
保険で算定ができないことに
なるようです」


十分な事情を説明するまでもなく
すぐに事情を飲み込んで
Aちゃんのママは、すぐに
答えを出してくれました。

「署名しますよ!」

「Aちゃんでしょ、お兄ちゃん2人でしょ、
夫、私、お姉ちゃん。
じいちゃん、ばあちゃんも…
合わせて、8人分!
みんな書いてくれますよ。」


私も感じた疑問や感情を
Aちゃんのママも
そのまま言葉にされました。


「え?看護師が16人?なんですか?それっ
おかしくないですかっ??」


「(リハビリ担当の療法士)
10人に対して、16人???

ずっと募集は続けています。

けれども今は看護師が2人がやっとです。

「6割?なぜ、比率で決めるんでしょう?
16人も、看護師さんっていりますか?
例えばそんなに増やしてね?
看護師さんの仕事は、あるんですか?
看護師さんは、リハビリはできませんよね?
いったい何の仕事をするんでしょうね?」


Aちゃんのママは、
電話でお話ししながら
頭の中を整理しているようでした。


「コロナの時期に看護師さんが足りないと
ニュースでも言ってます。そうですよね?」

「はい。
ニュースで、私も聞きました」


「それ、おかしい。
どう考えても変でしょう?」


私にどんどんと
不思議に思ったことを尋ねながら

Aちゃんのママは
考えて下さっていました。


私も、自分の感情を話しました。
理解してもらえる気がしました。
正直な気持ちをお話ししました。


「実は私も…
その話は本当なのかな?って
耳を疑いました。
おかしい話しだと私も思います。
意図が理解できないんです…
制度を変える方向性が
間違えているんではないか?
個人的には思っています。
私ももちろん、
署名はしたんです。」

「私もしました。…でも、
実際には
サービスを受けて下さっている
お客様の声が、国会へは
よく届くと聞いています。」



誰のための制度改正なんだろう?
なんのためにするんだろう
誰が得をするんだろう?
疑問ばかりが頭に浮かぶのです。
そんな私の頭の中の
モヤモヤした気持ちに
共感してもらえたことが
嬉しかったのです。


「本当に、ありがとうございます!!!
今から署名用紙届けていいですか?
本当に嬉しいです。
力をお借りします!」



「もう真っ暗ですよ、
家と反対方向でしょう?
遅くなるけどいいの?」

気遣って下さいます。


「はい、大丈夫です」


Aちゃんのママに
細々した説明はいりませんでした。
多くの言葉を言わずとも、信用して
力を貸して下さるようでした。

日が落ちて辺りは真っ暗でした。
気温が下がってきたのか
空気が冷たく肌寒さを感じました。

Aちゃんのママの元気な声で
私の心はあたたまりました。
よし、もうひと頑張りっ


そんな気力が出てきました。


真っ暗な冷たい空気の中
足に力を入れペダルを踏みました。
思ったよりも強く踏めます。

大事な署名用紙を届けるために
ゆっくり自転車を漕ぎ出しました。

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