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フロリダでぼったくられた

1993年のアメリカ、フロリダのオーランドにあるディズニーワールドに友人と行った。長いアメリカ旅行のひと幕だったが、今でも忘れられない想い出がある。

ぼったくりに遭遇した。

空港で声をかけてきた青年

日本でいうところの白タク(だったと思う)を空港から利用したのだけど、これが若い青年で調子が良い。30代前半だったろうか。

当時としては珍しく片言の日本語を話せていた。えらくニコニコと愛想を振りまくヤツだった。

当然ながらタクシーを利用するつもりでいた。タクシー乗り場に向かう途中に、今でいうミニバンみたいな車から降りた兄ちゃんだった。

少し怖い気もしたが、ホテルまで利用してみることにした。今みたいにライドシェアやUberはない時代だから興味が沸いたのもある。

車中で日本から来たこと、日本語はいくつか知っていること、最近は日本人のお客相手に商売していることなどを話した。
おしゃべりが好きな青年らしい。何も質問もしていないけどずっとしゃべっていた。

ホテルに着くと、ぜひ翌日も頼んでくれと名刺を渡された。取りあえず明日は何時に来れば良い?と営業してくる。

まあ、嫌な感じはなかったから断る理由もない。こちらもどうせ誰かに頼まないとならない。ホテルのフロントで訊くつもりだったが手間が省けると思った。

OK。少し早いが7時に頼んだ。

遅刻

翌朝、手荷物だけ持ちホテルの玄関先で待つ。しかし、約束の時間を過ぎても兄ちゃんは来ない。

他のお客には同じような白タクやタクシーが順番に来ている。ディズニーワールドに程近いコンドミニアムだから、ほとんどのお客は同じ目的で、時間も一緒になる。

待てど暮らせどやって来ず、約束した時間の40分後にやっと来た。盛大に遅刻しやがった。

しかも、悪びれることもない。相変わらず笑顔は素敵だ。

往復で頼んでいるため、帰りも指定した時間で来る手筈だった。意外にも帰りはそれほど遅れることもない。

ホテルに向かう帰りの道中「また明日は何時に行けばいい?」ときた。

遅刻するから嫌だと言ったら、言い訳を並べて遅刻はしないから信じてくれという。

もうこの時点で騙されている。

悩んだ末にもう1回だけチャンスをやった。

2回目の送迎

翌朝、今度は10分遅れ。40分よりマシとはいえ遅刻だ。日本人が時間にうるさいだけなのは承知していても、なにか釈然としない。

10分なら許容範囲で、遅刻とはいえないということにした。

問題はその日の帰り。タクシー同様、行きも帰りも到着してから料金を払う。

同じ場所(ディスニー)へ同じ道なのに、なぜか昨日と料金が違う!

おいおい、昨日と料金違うけどなんで?って訊くと。

いや、昨日も同じだと言い張る。料金を忘れたのか、とまで言われた。

一瞬、間違えたのかと自分を疑ってしまう。いや、僅かに違う。

どうやら昨日が安い理由は、遅刻したから割り引いたのだと主張する。確かにまあ辻褄は合う。

え?
今日も遅刻はしているじゃないか!?

確かに10分は誤差にしてあげないと可哀想だから遅刻にしないと話した。日本人が几帳面過ぎるだけでもある。

仕方なく僅かに前回より高い料金を支払った。


当時のパレードはアラジンだった

3回目の料金

そして3回目の送迎の朝がきた。

フロリダには約1週間の滞在で、ディズニーへは5日間通った。だからまた同じ行程になる。

今朝は、どうせ遅刻するのだから、最初から遅刻するであろう時間を頼んでいた。
7時ではなく8時にしたわけだ。
こちらも3回目のディズニーなので、それほど早く行く必要もなくなったのもある。

すると、8時5分くらいにやってきた。

おっ、できるじゃないか兄ちゃん。ほぼ時間通りだよ。
日本人的には遅刻だけどね。

この日の帰りは、なんと兄ちゃんが先に待っていた。前日までの遅刻を見越して我々が遅れたということもあるが事前に待っているとは思わなかった。

そのため、ホテルに着いたらなんて言うのだろうかと密かに楽しみにしていた。料金は安くなったりするのか。

はい、きました。
2日目よりも高い料金の請求ですか!?

おいおい、どうなっている?

この理由を問いただすと、この2日間は迷惑をかけたから本来の正規の料金はいただけなかった。今日は完璧でしょ、という理屈だった。

ほう、そうきたか。

確かに今朝は5分遅れだった。帰りも兄ちゃんが事前に待っていたのにちょっと感動もした。
少し甘いが、彼にしては完璧に近かった。

もしかして、ずっとわざと遅刻していたのか?

そして徐々に値段を吊り上げていくぼったくりなのか。もう訳が分からない。

毎日がこの交渉なので疲れてしまう。

行きの料金も乗る前に確認してから、いや交渉してからになっていた。

時間通りなのは当たり前でもあるので、とりあえず昨日と同じ料金しか払わないと強く言って支払う。

明日は他を頼むから来なくていいとも告げてホテルへ戻った。

結局、正規料金はいくらなの?

いい加減というか、計画的ぼったくりなのか、日本人が英語が下手だからって舐めるなよと友人と話していた。

付け加えておくと、チップは毎回渡していた。

そしてフロリダ4日目の朝、タクシーを頼もうとフロントにいた。タクシーもどうせいい加減なのだろうけど仕方ない。

フロントの割と綺麗なブロンド女性と話していると、突然グッモーニングと声をかけられた。

振り返ると、彼だった。

白タクの兄ちゃんがフロントに入ってきて、フロントデスク前に立つ我々二人の横に立っている。

思わず目が点になり、何をしているのかと頭が回らない。

彼は荷物を持つよと言ってくる。いや、荷物はあってもお前には預けるつもりもない。
そもそもリュックサックしかない。
それに昨日までだって荷物を運んでいないだろうに。

昨夜に断ったのがなかったことにされ、愛想笑いで声をかけてきたことにも驚いたが、今朝は遅刻どころかだいぶ早い。まだ7時過ぎだ。

「料金は正規の料金でいい」と真顔で言われた。

それは当たり前だと言いたかった。

なんだったら初日の金額でもいいと言われ、二人して思わず笑ってしまった。一体全体、正規の料金っていくらなんだよ!

友人と二人、はい、はい、分かりましたと降参する羽目になった。

フロントの女性に「彼を頼んでいたのを忘れていた」と伝え、別の業者を呼んでもらうのをキャンセルする。

彼はフロントの女性に俺の客だと言っていた。良く言うわ。

何事も無かったかのように笑顔で世間話など始まると、本当に逞しいなと思うほかない。

むしろ、歳を重ねた今では見習うべきだと痛感している。憎いのに憎めない人柄って本当に得で、めげない気持ちは本当に大事だ。

お抱えの運転手

実は、フロリダ滞在の7日間の移動は、すべてこの彼に頼む結末となった。

信頼したというより根負けした。

記憶では料金は同じでまともになっていたと思うが、相場が分からないからなんとも言えない。多分、ぼられていたと思う。

しかも、奥さんと生まれたばかりの女の子がいるとも言っていた。最早、それすらも真実かどうかも分からない。多分、嘘だろう。

最終日、空港まで送ってくれた彼と不覚にもハグまでしてしまった!

そして彼は再び名刺を渡しながらトドメにこう言った。

「フロリダに来たらサービスの良い俺を日本人に紹介してくれ。あなたなら保証できるでしょ?」

誰が保証するか。

あの彼、呑気に白タクをずっとやっていたのだろうか。意外と大物になっていたりしたら、オジサンはちょっと嬉しい。


※当時の料金は完全に忘れました。円高だったためそれほど高いとは感じませんでした。
ディズニーワードにはMGMスタジオ、エプコットセンター、プール?が併設しているので、1週間でも足りなかった想い出があります。近くのシーワールドにも行きました。良い想い出です。

アメリカ旅行はブログでも綴っています。どうぞお越しください。


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