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【佐藤亮子さんに聞きました②】絵本を読むときに親が意識したいポイントとは?

豊かな教育実践で注目される「佐藤ママ」こと佐藤亮子さんが、これからの子どもたちに一番大切な力だという「読解力」。

2021年3月には、「読解力」を育む育児、幼児教育とは……という視点で、子どもたちへの働きかけや学習を振り返り、その実践方法を、子育て中の保護者の方々へのエールとして盛り込んだ『我が家はこうして読解力をつけました』を執筆されました。そんな佐藤さんにさまざまな観点でお話をうかがいます。

第1回では、「読解力とは?」や「絵本や童謡と読解力の関係性」について佐藤さんの経験も交えてお話をうかがいました。今回は、絵本を読むときに親が意識したいポイントについてお聞かせください。

佐藤:
私は絵本や童謡に登場したものは、できるだけリアルなものを子どもに見せるよう意識していました。案外、子どもは実物を知らないものです。クマさん、キツネさん、ライオンさん、ゾウさん…などは絵本や童謡の世界に頻繁に登場するので、本物を見せてあげたいと思い、動物園には子どもを連れてよく足を運びました。

子どもたちは本物の動物を見て、「えー!?なんか臭いね」とか「ゾウって本当に大きいね!」と口にしていました。その様子を見たときに、本物を見せるということはとても大切だなと感じました。

他にも絵本にニンジンさん、ダイコンさんなどが出てきたら、本物の人参、大根を見せました。「絵本はかわいいけど、本物はそうでもないね」と子どもが言うこともありました。

まさに、百聞は一見にしかず。本物の力というのは偉大です。現実的にはすべてを見せるわけにはいかないですが、例えば、季節のものや動物、他にも絵本や童謡の中に出てくるものは、できるだけ本物を見せてあげると、実は子どもの心の中にちゃんと残っています。それがのちに小学校や中学校、高校で遭遇する難解な文章を読解する際に、しっかりと役立っていくのです。

たとえば、小説で「悲しくて、悲しくて本当に我慢して、その悲しみが溢れ出たときに“一気にコップの水から溢れ出るように”」という表現があったときには、私はこれを子どもたちに見せようと思い、実験したこともありました。
実際にコップと水を用意し、少しずつ、少しずつコップに水を入れていったのです。そうすると、表面張力で水面が盛り上がり、あと一滴、ぽとんとしたら、本当にぶわーっと水がこぼれ落ちる―。子どもたちはそれを目の前にして「おー」と盛り上がり、目を丸くして感動していました。

ぜひ絵本や童謡を通して、幼い頃からお子さんにたくさんの感動を与えられるような子育てをしていただきたいと思います。

―読解力が身についているときに、子どもにはどんなことが起きているのでしょうか。

佐藤:
いわゆる文章というのは、「2D」と表現できます。つまり、“ぺったんこ”な状態です。しかし、文章を読むことによって、主人公が頭の中で映像化され、動き出します。そのとき、3Dに立ち上がったことになるのです。
文章を映像化、つまり3D化させることによって、子どもはどんどん想像力を働かせ、文章中の内容を読み取ることができるのです。読解力が身についている状態というのは、2Dの文章を3Dに立ち上げることなのです

―子どもが文章を3D化してとらえられるようになるためには、どのようなアプローチをすればいいでしょうか。

お父さんやお母さんが子どもに絵本を読んであげますよね。例えば、クマさんとキツネさんが出てきたら、クマさんはちょっと怖い声で、キツネさんはずるい感じの声で読んでいくと、子どもは感情移入していきます。クマさんがキツネさんをいじめたりすると、キツネさん頑張れとなるのです。

字を読んでいるだけなのに、子どもは映像や映画の世界に入った感覚になるのです。特に絵本は文字だけではなく、絵が描かれているので、非常にその世界に入り込みやすい傾向にあります。2Dから3Dに立ち上げる作業が基本ですが、月齢が小さいときには、なかなか文字だけでは難しいのが実状です。

「文章を読んで理解する」ことも大事ですが、「絵を見ながら、その絵が動いているように見える」ということが、小さな子どもが身につける読解力、つまり2Dから3Dに立ち上げることにつながります。

絵本を見て、その絵が思わず動いて見えるという読み方をすると、より子どもたちが楽しめます。「物語の中で、主人公になれる」という経験を何度も味わうと、たとえ小学校1年生でも、絵がない文章だけの本でも主人公になれるのです。

6歳頃に絵本を見ながら、2Dから3Dに立ち上げ、主人公になりきったり、登場人物の感情をよく理解できる楽しい時間を味わったりすると、7歳からちゃんとした読解力が身についていきます。そういった意味でも絵本や童謡は大切です。

―絵本が3D化というのに役立つことはイメージできましたが、童謡と読解力はどのように結びつくのでしょうか。

佐藤:
童謡の場合、メロディーがついているので耳に残ります。例えば、紅葉(もみじ)を見ると、「もみじ」のメロディーが耳に流れてくるように、こうした経験が心を豊かにしてくれます。

多くの童謡や絵本を通して、子どもはいろいろな言葉を知ることができ、言葉から想像することもできるようになります。そして、想像力をいかして思考力を鍛えます。
その結果、その後の小学校6年間で重要となる、「2Dから3Dに立ち上げる読解力」を養うことに大変役立つのです。

(本企画は佐藤ママスペシャルインタビュー動画をもとに再編集し、記事化したものです。)

佐藤亮子さん

大分県生まれ。大分県内の私立高校で英語教師として2年間教壇に立った後、結婚。その後は専業主婦として3男1女の子育てをし、お子さんたちが揃って東京大学理科三類に進学したことで、メディアを通じ「佐藤ママ」として注目を集める。その子育てにまつわる著作物の刊行や、中学受験を中心に子どもの勉強に悩むご両親を対象にした講演会に多数登壇している。くもん出版から『我が家はこうして読解力をつけました』を出版した。

『我が家はこうして読解力をつけました』詳細はこちら

第3回は、「幼児教育のポイント」についてお聞きしました。

(タイトル写真:pixta)