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「学習~子ども~」について、『人生100年時代の脳科学』著者・中村克樹先生に聞いてみました!

『人生100年時代の脳科学』著者・中村克樹先生に気になることを聞いてみました!(③学習~子ども~について)

2021年9月に『人生100年時代の脳科学』を刊行しました。人生100年に向けて健康でいつづける・やる気を持ち続けるためのヒントがたっぷり書かれています。

前回(②依存について)では、ゲームやインターネットなどの問題についてお聞きしました。今回は子どもの学習について聞いてみたいと思います。
(くもん出版Instagram「読書の秋!大人の学び応援キャンペーン」 インタビュアー マーケティング部 小宮)

中村克樹先生
1963年大阪府高槻市生まれ。京都大学理学部卒。京都大学霊長類研究所助教授、国立精神・神経センター神経研究所部長などを経て、2009年から京都大学霊長類研究所教授、2020年から副所長。共著に『教職に生かす教育心理学』(みらい)、監訳に『第4版カールソン神経科学テキスト 脳と行動』(丸善出版)など。

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▲施設の説明をしてくださる中村先生

【学習について 子どもの学習に焦ってしまうときは?】

小宮:本書にも「学習について簡単な方法があれば私が教えてほしい」と書いてありましたね。

中村先生:あったら誰にも言わずに自分だけのものにしますけどね(笑)。ポイントは、「特別な機械が必要なわけではない簡単な方法」なのですが、学習において大切な「何度もくり返す」ということは、そう簡単なことではないですね。くり返して徐々にレベルをあげていければいい、というのは、言うのは簡単ですけれども、やるのはすごく難しい。そういう意味で簡単な方法はなかなかなくて、もう行動しかない。

小宮:うーんなるほど。

中村先生:これは、公文式の学習の話につながります。「同じところを何度も復習するのは、なぜですか?」という声もある、と思いますが、逆上がりの練習も、一回できただけでやめたら、一週間後にはもうできなくなります。なんどもくり返すことが定着になります。
自転車に乗るのも一緒です。
補助輪なしでふらふらと15秒ほど乗れるようになった。だからといってそこでやめたらできなくなります。何度も何度も乗っているうちに、倒れなくなる。脳の中でその回路が定着することが大事です。それは、運動・技能でも、九九の計算でも、なんでも一緒です。

小宮:私を含めた親には、「できたら次!できたら次!」みたいな焦りがあります。先生のお話を聞いて、そうではなくて、できたものをくり返すとういことが大事だと強く思いました。
中村先生:多くの親は、他の子どもと比較します。けれどそのやり方は、うまくいかないことが多いですね。(②依存について)の話で、ゲームがうまくできているのは、昨日はレベル3だったのが、今日はレベル5になったという、昨日の自分と比較できる仕組みになっていることです。それが一番いいですね。昨日よりも良くなった、スポーツ選手ですと、昨日の記録よりも良くなるのを目指すわけですよ。
日本人で10秒を切ることができる人が何人もでるというのが、しばらく前からしたら夢のようですが、なんとか9秒台を目指していた時、世界レコードと比べたらやる気がなくなってしまいます。自分が昨日よりも一歩でも二歩でも進んだか? というところを意識させることが、能力の高い教育者なのだと思います。

たぶん、公文式の教材は、「自分の教材に集中できるということ」がいいのだろうなと思います。もちろん、ある段階では、自分が全体のどれくらいの位置にいるかというのも、必要になってきます。しかし、もし、「これができたら次、次」という親御さんがいるとしたら、「周りの子はそこまでいっている」あるいは「周りの子はまだここだから、自分の子は一歩でも二歩でも」と思っているという気がします。ちょっとできたらくり返しをせずやめてしまい、定着しないでまた後戻りしないとダメ、というサイクルになってしまうと思います。

小宮:いまのお話にも関連してくると思いますが、本書に書かれていた「」と「報酬」で子どものモチベーションを無理やり上げたり…というシーンもよく見られると思いますがいかがですか。

中村先生:100点とったらおこづかいあげるよ」といったやり取りがありますが、頑張って勉強している子どもにそれを言うと、せっかくその子が持っていた勉強に対するモチベーションを台無しにしてしまいます。
もしかしたらその子は、「昨日できなかったことが今日できた」ということで、勉強をすることに純粋な意欲を持っていたかもしれない。しかし、親がそのようなことを言うと、お金をもらうために勉強するようになってしまい、目的のレベルが下がってしまいます。だから、よっぽど子どもが勉強しないときは使う可能性がありますが、やはり自主的に学習してくれるように持っていくこと、色々なことがわかるとうれしいという経験をできるだけさせるということが大事です。

例えば、海外の人と話をして、「そこは意見が一緒だな」とか、「全然違うな」というやりとりができたらはすごい経験になると思います。今、小学生から英語を教えるという流れですが、子どもが「なんのために?」という状態だと意欲がわかないと思うので、それこそ、外国の子どもと話をする機会をつくって、「あっ、勉強しないと話ができないな」とか「勉強したら話ができた」という経験をさせるように持っていけたらいいと思います。「いろいろわかったら、こんなに面白い、楽しい」というところに、どれだけ持っていけるかが教育者や親の能力だと思います。

小宮:ありがとうございます。深く心にしみました。


つい、他の子と比べたり、我が子にこうあってほしいと願ってしまったりすると思います。しかし、あせらずていねいに、できることをくり返したり、子どもをしっかり見て、子どもが自発的なモチベーションをもてる環境を整えることが大切だと痛感しました。

今回で中村克樹先生の全3回のインタビュー記事はおしまいとなります。『人生100年時代の脳科学』でも、生活のヒントになる記述が満載です。ぜひお読みください!

『人生100年時代の脳科学』詳しくはこちら